54 / 59
五十三話 アニキ、エスカレーション
しおりを挟む
初撃を皮切りに拳を連打させる。
魔法少女でも肉弾戦が得意な子は珍しくない。それに倣い、相手をフルボッコにする!
「フエェェ!! フエェヘッヘッヘ――――!!」
殴られ過ぎて頭がおかしくなったのだろうか?
レッドがブラックデビルみたいに笑っていた。
ブラックデビルが何なのかは、一言で片づければ悪魔――――みたいな秋刀魚。
とにかく、終始痛がる素振りもなく純粋な気持ち悪さを感じずにいられない。
そうこうしているうちにボクの体力が底をついてしまった。
「ん、はぁはぁはぁ……な、何故? そんなにピンピンしているんだ?」
「決まっているだろう!! エロいことを考えているからだぁぁぁ」
そんな力説をされても困る…………確かにエロスは偉大だ。それだけで三日三晩、不眠不休で戦える。
けれど、戦隊ヒーローモノのレッドにドスケベな奴が今までいたのだろうか?
ムッツリはあったと思うが、平気で垣根を破壊するほどオープンな奴はそうそういない。
危なかった……危うくボクの中のヒーローの定義が崩れるところだった。
「それは、精神的な問題で肉体にはダメージが残ってはずだろう? ボクが聞きたいのはどうして無傷なのかだぁ!」
「そこまで見抜かれているとはな……実はな、変わり身の術により貴様の攻撃はすべて無効化になっているのだ! ガバババッ―――――――」
説明している最中に、レッドの顎下から血が流れ落ちていた。
無効化どころか、ボクの攻撃はすべてクリーンヒットしていた。
どうして、こんなしょうもない嘘をつくのだろうか?
よく分からないが、分かってしまったらボクもヤバイ奴になってしまっていることだ。
「赤で良かったぁ―――白だったら洗濯するのが大変だったわ!!」
気にするところ、そこ!? 主婦みたいなことを言っている。
白だったら、それ単なるタイツじゃん。
「どうやら、身体がほぐれてきたようだねぇ~。ならば、こちらも本気モードで行かせて貰おう」
パキッパキパキ――――!!
レッドが自身のシンボルでもあるマスクを素手で引き剥がした。
予期せぬ出来事に、ボクは自分の目を疑いたくなってきた。
マスクの下から新たなレッドのマスクが現れた―――――何も変わらない。
というか、同じマスクを重ねて装着する意図が見えてこない。
「ぁはっ!! 変身するとでも思ったのか!? 残念だが、これから変身するのだ!」
結局、変身するかい……。
いい加減、わけも分からない前振りは止めていただきたい!
「ひぃぃぃろぉぉぉ―――チェ「シルフィードショット!!」
「ヘブゴォ――――」
惜しい、あと少しで変身できるかというところで、ケツに風の弾丸が直撃しレッドが無言でしゃがみ込んでしまった。
意味もなく遊んでいるからそうなるだ。この反省を次に活かしてもらたいが、生憎と次があるのかは保証できない。
「どうやら間に合ったようね! フェアリー」
「シルフィードハーネス? どうやってここに?」
「どうもこうも、外の井戸を調べていたら中から物音がしたから変身して下まで降りてきたのよ」
ハーネスが天上を指さすとその先に地上へと伸びるパイプがあった。
井戸と思われたものは、ジャムさんのP工場みたいな煙突だったらしい。
ちなみにパンの包装紙などに書かれているアルファベットは製造工場を意味する。
「貴様ぁぁあ――――!! 何か良からぬことを想像していたなぁぁ」
レッドがついにタイツをビリビリと引き裂いた。
そこから露出される肉体はオスカー像みたいに金色に光輝いていた。
「やっぱり、変体だったのね……」ハーネスがハンドガンを構える。
変体かはともかく変質者であることは疑う余地もない。
ブーメランパンツ一丁の姿で手首にカフス、首には蝶ネクタイを装着すると、マスクまでもが金色に染まってゆく。
「ゴールデンレッド、参上!! これが俺のファイナルフォームだ!!」
「レッドの要素がどこにもNEEEEEEEEEEE―――――」
「フェアリー、相手がファイナルなら私たちもファイナルで一気に決着をつけましょう」
何か知らなけれど、ハーネスが悪い意味で触発されていた。
いくら二人がかりでもフルスタイルモードでない状態で今のブルジョアレッドに通じるのか?
いいや、考えている場合ではない。先手を打たなければボクたちの負けだ。
「「ファイナルフィニッシャー!」」
ボクたちは息を合わせて、ベルトのレバーを引いた。
再び、コスモブレイドが展開し、ハーネスの装衣の一部だったフェザーブレイキングチェーン伸びてゆく。
「世界に蔓延る悪意と闇をこの鎖で縛りつけてみせる! シルフィードハーネス、今宵も華麗に舞ってみせるわ」
ふえぇええ!? まさかと思うケド、このタイミングで決め台詞とかいわないとイケないの!?
なんの段取りもなしに、ボクの方へとウィンクするハーネス。
お約束とは言え、特撮でもない本物でも魔法少女としてやらないといけないの?
「カレー大好きとか言わないよね? キュイちゃん」
もはや、決め台詞を言わないとイケない空気になっていた……。
考えていなかったボクも悪いけれど、それって最初の方でやっておくべきだったんじゃ―――――迷っていても始まらない。
こうなればヤケだ、ボクのありったけをぶつけてやる!!
「さんざめく光は絶頂の兆し、ハッピービームでアナタの心もリフレッシュ! 妖精界の魔法少女サークレットフェアリー、ここに推参!!」
魔法少女でも肉弾戦が得意な子は珍しくない。それに倣い、相手をフルボッコにする!
「フエェェ!! フエェヘッヘッヘ――――!!」
殴られ過ぎて頭がおかしくなったのだろうか?
レッドがブラックデビルみたいに笑っていた。
ブラックデビルが何なのかは、一言で片づければ悪魔――――みたいな秋刀魚。
とにかく、終始痛がる素振りもなく純粋な気持ち悪さを感じずにいられない。
そうこうしているうちにボクの体力が底をついてしまった。
「ん、はぁはぁはぁ……な、何故? そんなにピンピンしているんだ?」
「決まっているだろう!! エロいことを考えているからだぁぁぁ」
そんな力説をされても困る…………確かにエロスは偉大だ。それだけで三日三晩、不眠不休で戦える。
けれど、戦隊ヒーローモノのレッドにドスケベな奴が今までいたのだろうか?
ムッツリはあったと思うが、平気で垣根を破壊するほどオープンな奴はそうそういない。
危なかった……危うくボクの中のヒーローの定義が崩れるところだった。
「それは、精神的な問題で肉体にはダメージが残ってはずだろう? ボクが聞きたいのはどうして無傷なのかだぁ!」
「そこまで見抜かれているとはな……実はな、変わり身の術により貴様の攻撃はすべて無効化になっているのだ! ガバババッ―――――――」
説明している最中に、レッドの顎下から血が流れ落ちていた。
無効化どころか、ボクの攻撃はすべてクリーンヒットしていた。
どうして、こんなしょうもない嘘をつくのだろうか?
よく分からないが、分かってしまったらボクもヤバイ奴になってしまっていることだ。
「赤で良かったぁ―――白だったら洗濯するのが大変だったわ!!」
気にするところ、そこ!? 主婦みたいなことを言っている。
白だったら、それ単なるタイツじゃん。
「どうやら、身体がほぐれてきたようだねぇ~。ならば、こちらも本気モードで行かせて貰おう」
パキッパキパキ――――!!
レッドが自身のシンボルでもあるマスクを素手で引き剥がした。
予期せぬ出来事に、ボクは自分の目を疑いたくなってきた。
マスクの下から新たなレッドのマスクが現れた―――――何も変わらない。
というか、同じマスクを重ねて装着する意図が見えてこない。
「ぁはっ!! 変身するとでも思ったのか!? 残念だが、これから変身するのだ!」
結局、変身するかい……。
いい加減、わけも分からない前振りは止めていただきたい!
「ひぃぃぃろぉぉぉ―――チェ「シルフィードショット!!」
「ヘブゴォ――――」
惜しい、あと少しで変身できるかというところで、ケツに風の弾丸が直撃しレッドが無言でしゃがみ込んでしまった。
意味もなく遊んでいるからそうなるだ。この反省を次に活かしてもらたいが、生憎と次があるのかは保証できない。
「どうやら間に合ったようね! フェアリー」
「シルフィードハーネス? どうやってここに?」
「どうもこうも、外の井戸を調べていたら中から物音がしたから変身して下まで降りてきたのよ」
ハーネスが天上を指さすとその先に地上へと伸びるパイプがあった。
井戸と思われたものは、ジャムさんのP工場みたいな煙突だったらしい。
ちなみにパンの包装紙などに書かれているアルファベットは製造工場を意味する。
「貴様ぁぁあ――――!! 何か良からぬことを想像していたなぁぁ」
レッドがついにタイツをビリビリと引き裂いた。
そこから露出される肉体はオスカー像みたいに金色に光輝いていた。
「やっぱり、変体だったのね……」ハーネスがハンドガンを構える。
変体かはともかく変質者であることは疑う余地もない。
ブーメランパンツ一丁の姿で手首にカフス、首には蝶ネクタイを装着すると、マスクまでもが金色に染まってゆく。
「ゴールデンレッド、参上!! これが俺のファイナルフォームだ!!」
「レッドの要素がどこにもNEEEEEEEEEEE―――――」
「フェアリー、相手がファイナルなら私たちもファイナルで一気に決着をつけましょう」
何か知らなけれど、ハーネスが悪い意味で触発されていた。
いくら二人がかりでもフルスタイルモードでない状態で今のブルジョアレッドに通じるのか?
いいや、考えている場合ではない。先手を打たなければボクたちの負けだ。
「「ファイナルフィニッシャー!」」
ボクたちは息を合わせて、ベルトのレバーを引いた。
再び、コスモブレイドが展開し、ハーネスの装衣の一部だったフェザーブレイキングチェーン伸びてゆく。
「世界に蔓延る悪意と闇をこの鎖で縛りつけてみせる! シルフィードハーネス、今宵も華麗に舞ってみせるわ」
ふえぇええ!? まさかと思うケド、このタイミングで決め台詞とかいわないとイケないの!?
なんの段取りもなしに、ボクの方へとウィンクするハーネス。
お約束とは言え、特撮でもない本物でも魔法少女としてやらないといけないの?
「カレー大好きとか言わないよね? キュイちゃん」
もはや、決め台詞を言わないとイケない空気になっていた……。
考えていなかったボクも悪いけれど、それって最初の方でやっておくべきだったんじゃ―――――迷っていても始まらない。
こうなればヤケだ、ボクのありったけをぶつけてやる!!
「さんざめく光は絶頂の兆し、ハッピービームでアナタの心もリフレッシュ! 妖精界の魔法少女サークレットフェアリー、ここに推参!!」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
この世界、イケメンが迫害されてるってマジ!?〜アホの子による無自覚救済物語〜
具なっしー
恋愛
※この表紙は前世基準。本編では美醜逆転してます。AIです
転生先は──美醜逆転、男女比20:1の世界!?
肌は真っ白、顔のパーツは小さければ小さいほど美しい!?
その結果、地球基準の超絶イケメンたちは “醜男(キメオ)” と呼ばれ、迫害されていた。
そんな世界に爆誕したのは、脳みそふわふわアホの子・ミーミ。
前世で「喋らなければ可愛い」と言われ続けた彼女に同情した神様は、
「この子は救済が必要だ…!」と世界一の美少女に転生させてしまった。
「ひきわり納豆顔じゃん!これが美しいの??」
己の欲望のために押せ押せ行動するアホの子が、
結果的にイケメン達を救い、世界を変えていく──!
「すきーー♡結婚してください!私が幸せにしますぅ〜♡♡♡」
でも、気づけば彼らが全方向から迫ってくる逆ハーレム状態に……!
アホの子が無自覚に世界を救う、
価値観バグりまくりご都合主義100%ファンタジーラブコメ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる