55 / 59
五十四話 アニキ、選択を迫られる
しおりを挟む
「ふぅ~やれやれだ……五十点だ」
「へっ?」
しばしの沈黙の後、敵のくせにブルジョアレッドに溜息をつかれてしまった。
やっちゃった……思い返しても赤面してしまう。
恥ずかしさを捨てきれなかったばかり、ぎこちない動きになってしまった。
これは戦隊ヒーローだった時とは勝手が違いすぎる。
勢い任せで手足を振っても粗さが目立つだけだ。
「フェアリーとか言ったな。なんでインド人みたいな踊りを踊った? しかも、その手に握っているのは何だ? マイスプーンか!? 食いしん坊キャラなのか、オマエは!」
レッドがやけに口うるさかった。
こういう評論家気取りの輩は一定数いるが、ボクのメンタルでは到底辛口に耐えられない。
平気なのはカレーの辛さだけだ。
「ちょっと、貴方ね。こっちは、まだ駆け出しの魔法少女なのよ。いきなりプロレベルな物を要求されてもできることとできないことがあるの!」
「仮にも魔法少女と名乗るんだ。事前に訓練を積んでおくのが常識だろうよ。お前たちみたいなニワカが入っていい世界じゃないんだよ!!」
「あのねぇ、貴方こそ自分が怪人であることを忘れていない? らしくないのは、どっちよ!」
「俺は正義のヒーローだ!! 貴様らのような自己顕示欲の塊に裁きの鉄鎚を下すのが、俺の使命だ」
「そういうのを、お節介魔っていうのよ!! 誰のための正義よ。貴方は自分が望んだように行かないことが気に要らないだけでしょっ? 貴方のような人に世界を良くして貰いたいなんて誰も望んでいないわ。そろそろ、そのことに気づいたら?」
唐突な口論が始まった。
初めから存在自体が矛盾をはらんでいるレッドは何を言おうともブーメラン返しで突き刺さっていた。
もはや、ハーネスのワンサイドゲームでしかない。
ゲームと一言で片づけてしまえば語弊を生んでしまうけれど、ボクが立ち入る隙もないほどにレッドは完膚なきまで叩きのめされて途中から恍惚な表情を浮かべていた。
さすがは変態、苦痛に快感を覚えている。
というか、いつファイナルフィニッシャーを決めるのだろうか……少し、不安になってきた。
「なんて女だ。重箱の隅を突くどころか、楊枝でほじくってくるぞ!! もういい! 俺たちに言葉は不要だ! あとは拳で語るのみ」
「そう? じゃ、フェザーブレイキングチェーン!!」
「きっ、たねぇぇえええええええええええええええええ―――――」
跳躍する鎖の鞭にブルジョアレッドは小躍りするかのように逃げ惑う。
無造作に動き回っているように見えても、かなり素早い。
チェーンの不規則な動きを見切り、容易に回避しているようにも思われる。
床下に打ちつけられた鎖から火花が飛び散る。
物に打ち当てることで動きに、さらなる変化を与えている。
にもかかわらず、ハーネスを挑発するように、金色の肉体は四方八方を駆け回っている。
「エスカレーション、スマッシュ―――――!!」
どこにも隙が見当たらない、その瀬戸際でボクはキャリバーで超加速し必殺の一撃を叩き込んだ。
その時だった、レッドのマスクの口元が裂けたのは―――
イヤらしく笑いながらボクのことを一瞥すると血管が浮き出るほどのイカツイ腕でコスモブレイドを受け止めた。
「理不尽の障壁! デッドリバーシ」
攻撃を受け止めながら、レッドはバリアを張り出した。
タイミング的には完全にずれているような気がする。
当人はまったく持って平然としていた。奴の行動が常識の範疇を越えているのは既に承知している。
なのに、この胸をざわつかせる空気は一体……。
「きゃっ――――――!!」
ハーネスの悲鳴とともに、ボクも拡散するバリアの衝撃をモロに喰らい弾き飛ばされていた。
防御に使用するのではなく攻撃に転じる、理不尽の壁とはよく言ったものだ。
ツゥ―と鼻下を流れ落ちる鼻血を手の甲で拭いながら立ち上がる。
既にレッドはハーネスの方へと移動し彼女の胸グラを掴んで持ち上げていた。
「新人とは言えよくやったほうだが、まだまだ甘いな。やれやれ、俺も敗北というものを知りたいものだ。もっとも、そんなことができる相手など……この世界にはいないだろうがぁ!!」
「があぁぁ…………」
ピュアグランガントレットに換装し攻撃をしかけるボクをレッドは足で蹴り飛ばしてきた。
文字通り一蹴。ビルダーのごとき筋骨隆々の美脚から、殺人的な破壊力が伝ってボクを襲ってくる。
ガントレットで受け止めれなければ即死だった。
ダメージ受けたせいで身体が硬直してしまっている。
惨めにも床に這いつくばる状態に陥ってしまった。
「ふふん~ふ。さて、どうしたものか? 貴様らをこのまま葬り去るのは簡単だ。だが、俺もヒーローだ。そこは寛大といこうじゃないか! どちらか、一方は身逃がしてあげる……けど、生き残れるのは相手を殺した方だけだよぉ!!」
「ふ、ふざけるな!!!」
よりによって、怪人はボクらに同士討ちを強要してきた。
セコイヤも似たように悪趣味を好む傾向があった。
当然ながら、即行で否定した。仲間を討つなんてできるわけがない。
ハーネスだってきっと――――
「分かったわ……だから、その汚らしい手を離して頂戴」
耳を疑う一言が彼女から発せられた。けれど、それが本心ではないことはボクにはちゃんと伝わっている。
ハーネスのことだ。敵の油断を誘い、上手い方法を考えてくれているはずだ。
ボクにできることは、そのサーポトに徹することだ。
「はぁ~、ああ―――あ! シラケるわ。仲間を裏切るフリをして自分を犠牲にするつもりなんだろう? 分かる! 分かるよぉぉぉ~、だって俺はヒーローだからさ。決めたよ、希望通り君の命でフェアリーを助けてやろう!」
「ヤメロォォオオオオ―――――――――!!!」
「へっ?」
しばしの沈黙の後、敵のくせにブルジョアレッドに溜息をつかれてしまった。
やっちゃった……思い返しても赤面してしまう。
恥ずかしさを捨てきれなかったばかり、ぎこちない動きになってしまった。
これは戦隊ヒーローだった時とは勝手が違いすぎる。
勢い任せで手足を振っても粗さが目立つだけだ。
「フェアリーとか言ったな。なんでインド人みたいな踊りを踊った? しかも、その手に握っているのは何だ? マイスプーンか!? 食いしん坊キャラなのか、オマエは!」
レッドがやけに口うるさかった。
こういう評論家気取りの輩は一定数いるが、ボクのメンタルでは到底辛口に耐えられない。
平気なのはカレーの辛さだけだ。
「ちょっと、貴方ね。こっちは、まだ駆け出しの魔法少女なのよ。いきなりプロレベルな物を要求されてもできることとできないことがあるの!」
「仮にも魔法少女と名乗るんだ。事前に訓練を積んでおくのが常識だろうよ。お前たちみたいなニワカが入っていい世界じゃないんだよ!!」
「あのねぇ、貴方こそ自分が怪人であることを忘れていない? らしくないのは、どっちよ!」
「俺は正義のヒーローだ!! 貴様らのような自己顕示欲の塊に裁きの鉄鎚を下すのが、俺の使命だ」
「そういうのを、お節介魔っていうのよ!! 誰のための正義よ。貴方は自分が望んだように行かないことが気に要らないだけでしょっ? 貴方のような人に世界を良くして貰いたいなんて誰も望んでいないわ。そろそろ、そのことに気づいたら?」
唐突な口論が始まった。
初めから存在自体が矛盾をはらんでいるレッドは何を言おうともブーメラン返しで突き刺さっていた。
もはや、ハーネスのワンサイドゲームでしかない。
ゲームと一言で片づけてしまえば語弊を生んでしまうけれど、ボクが立ち入る隙もないほどにレッドは完膚なきまで叩きのめされて途中から恍惚な表情を浮かべていた。
さすがは変態、苦痛に快感を覚えている。
というか、いつファイナルフィニッシャーを決めるのだろうか……少し、不安になってきた。
「なんて女だ。重箱の隅を突くどころか、楊枝でほじくってくるぞ!! もういい! 俺たちに言葉は不要だ! あとは拳で語るのみ」
「そう? じゃ、フェザーブレイキングチェーン!!」
「きっ、たねぇぇえええええええええええええええええ―――――」
跳躍する鎖の鞭にブルジョアレッドは小躍りするかのように逃げ惑う。
無造作に動き回っているように見えても、かなり素早い。
チェーンの不規則な動きを見切り、容易に回避しているようにも思われる。
床下に打ちつけられた鎖から火花が飛び散る。
物に打ち当てることで動きに、さらなる変化を与えている。
にもかかわらず、ハーネスを挑発するように、金色の肉体は四方八方を駆け回っている。
「エスカレーション、スマッシュ―――――!!」
どこにも隙が見当たらない、その瀬戸際でボクはキャリバーで超加速し必殺の一撃を叩き込んだ。
その時だった、レッドのマスクの口元が裂けたのは―――
イヤらしく笑いながらボクのことを一瞥すると血管が浮き出るほどのイカツイ腕でコスモブレイドを受け止めた。
「理不尽の障壁! デッドリバーシ」
攻撃を受け止めながら、レッドはバリアを張り出した。
タイミング的には完全にずれているような気がする。
当人はまったく持って平然としていた。奴の行動が常識の範疇を越えているのは既に承知している。
なのに、この胸をざわつかせる空気は一体……。
「きゃっ――――――!!」
ハーネスの悲鳴とともに、ボクも拡散するバリアの衝撃をモロに喰らい弾き飛ばされていた。
防御に使用するのではなく攻撃に転じる、理不尽の壁とはよく言ったものだ。
ツゥ―と鼻下を流れ落ちる鼻血を手の甲で拭いながら立ち上がる。
既にレッドはハーネスの方へと移動し彼女の胸グラを掴んで持ち上げていた。
「新人とは言えよくやったほうだが、まだまだ甘いな。やれやれ、俺も敗北というものを知りたいものだ。もっとも、そんなことができる相手など……この世界にはいないだろうがぁ!!」
「があぁぁ…………」
ピュアグランガントレットに換装し攻撃をしかけるボクをレッドは足で蹴り飛ばしてきた。
文字通り一蹴。ビルダーのごとき筋骨隆々の美脚から、殺人的な破壊力が伝ってボクを襲ってくる。
ガントレットで受け止めれなければ即死だった。
ダメージ受けたせいで身体が硬直してしまっている。
惨めにも床に這いつくばる状態に陥ってしまった。
「ふふん~ふ。さて、どうしたものか? 貴様らをこのまま葬り去るのは簡単だ。だが、俺もヒーローだ。そこは寛大といこうじゃないか! どちらか、一方は身逃がしてあげる……けど、生き残れるのは相手を殺した方だけだよぉ!!」
「ふ、ふざけるな!!!」
よりによって、怪人はボクらに同士討ちを強要してきた。
セコイヤも似たように悪趣味を好む傾向があった。
当然ながら、即行で否定した。仲間を討つなんてできるわけがない。
ハーネスだってきっと――――
「分かったわ……だから、その汚らしい手を離して頂戴」
耳を疑う一言が彼女から発せられた。けれど、それが本心ではないことはボクにはちゃんと伝わっている。
ハーネスのことだ。敵の油断を誘い、上手い方法を考えてくれているはずだ。
ボクにできることは、そのサーポトに徹することだ。
「はぁ~、ああ―――あ! シラケるわ。仲間を裏切るフリをして自分を犠牲にするつもりなんだろう? 分かる! 分かるよぉぉぉ~、だって俺はヒーローだからさ。決めたよ、希望通り君の命でフェアリーを助けてやろう!」
「ヤメロォォオオオオ―――――――――!!!」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
この世界、イケメンが迫害されてるってマジ!?〜アホの子による無自覚救済物語〜
具なっしー
恋愛
※この表紙は前世基準。本編では美醜逆転してます。AIです
転生先は──美醜逆転、男女比20:1の世界!?
肌は真っ白、顔のパーツは小さければ小さいほど美しい!?
その結果、地球基準の超絶イケメンたちは “醜男(キメオ)” と呼ばれ、迫害されていた。
そんな世界に爆誕したのは、脳みそふわふわアホの子・ミーミ。
前世で「喋らなければ可愛い」と言われ続けた彼女に同情した神様は、
「この子は救済が必要だ…!」と世界一の美少女に転生させてしまった。
「ひきわり納豆顔じゃん!これが美しいの??」
己の欲望のために押せ押せ行動するアホの子が、
結果的にイケメン達を救い、世界を変えていく──!
「すきーー♡結婚してください!私が幸せにしますぅ〜♡♡♡」
でも、気づけば彼らが全方向から迫ってくる逆ハーレム状態に……!
アホの子が無自覚に世界を救う、
価値観バグりまくりご都合主義100%ファンタジーラブコメ!
クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双
四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。
「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。
教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。
友達もなく、未来への希望もない。
そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。
突如として芽生えた“成長システム”。
努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。
筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。
昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。
「なんであいつが……?」
「昨日まで笑いものだったはずだろ!」
周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。
陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。
だが、これはただのサクセスストーリーではない。
嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。
陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。
「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」
かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。
最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。
物語は、まだ始まったばかりだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる