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五十五話 アニキ、飛翔するドルフィンに希望を抱く
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捕らえたハーネスを鑑賞し舌なめずりするレッド、すでにヒーローの面影すらない。
狂人だ、怪人の中でも極めて狂暴な類である。
「早く助けないと……ドブさん! フルスタイルモードになれる条件は思い出せたの?」
「…………ドブさん?」
「ん? あくづうFHHFVHFヴぇ――――YES!」
「何がYESだよ、こんな時までふざけないでよ」
「おっ、フルチンがどうしたんだい? 君にはもう……無いだろ」
「そんな悲しいことを言わなくもいいよ! 今はフルスタイルモードに変身しないとハーネスが危ないんだよ!!」
懸命に訴えるボクの気持ちをようやく汲んでくれたらしい。
「検索してみるよ」とドブさんが言ってくれた。
数秒後、ガーターベルトが怪しく発光し始めた。
もう待っている時間すらない。レッドの奴がハーネスの首を絞めつけようとしている。
「動け動け動け動け動け動け動けぇぇぇ―――なんでだよぉぉ!! どうしてこんな時にボクの身体は言うこと聞かないんだ!?」
「お待たせ、シンジ君。ああ……もちろん太い方じゃないよ」
「どうでも良いよ! それよりも――――「まぁ、手短に話すと絆パワーだね。君、最近ガゥライザーとどうなの?」
まるで主婦に旦那との仲を聞く昼間のMCのようだ。
どうもこうも、ガゥの方が忙し過ぎて戦い以外の接点がない。
だからなのか……こういう現場では定番の絆パワーとやらが足りないのは。
「ガゥ、すまなかった。決して君を蔑ろにしたわけではないんだ。何を言っても所詮、言い訳でしかないけど今だけは……今だけは! 仲間を救う力を貸してほしい」
頭を下げることすらままならない。
でも、ボクの本心であることは変わりない。
「そんな表情をするな。ドウナンイエロー! 俺はオマエと共に戦えたことが楽しかったガゥ。ずっと、続けば良いと思っていた。だからこそ、オマエがヒーローを引退した時、裏切られた気がした。それでも、今度は魔法少女として戻ってきてくれた。今は臨時でしか力を貸せないが、こうしてまた肩を並べて戦えているんだ! 今は嬉しく思うガゥ」
そう言うとガゥは急に駆け出した。
ボクの代わりにハーネスを救出しようとしている。
地を移動するのなら、ボクよりも断然、彼の方が速い。
前脚の付け根、人でいう肩の部分にマスターローブのマイクロガンが設置されている。
あの銃は基本、フルオートで掃射できる。
その機能を活かしガゥライザーが牽制をしかける。
荒々しい金属を連続で鳴らし、火花をまき散らしてゆく。
足下に銃弾が沈む衝撃で、床は砂埃で土気色に塗りつぶされてゆく。
後に残るは窪んだ弾痕と火薬特有の薬品臭い香りだけだ。
思わぬ奇襲攻撃を受けたレッドは慌てふためていたがハーネスを一向に手離そうとしない。
対するガゥライザーは彼女を解放するようにリスクを無視して、飛びかかり力づくで奪おうとした。
「ノールックソォォォード! ゴールデンスレイヤー」
今度は何も持っていないのに、武器を取り扱うようなエアープレイをし始めた。
ただし、奴の恐ろしいところは演技で終わらないところだ。
空振りした素手でも物体を切断する非常識な怪力が備わっている。
「ガゥ!!」レッドによりガゥライザーがバラバラに散ってゆく。
ボクがしっかりしていれば、こんなことにはならずに済んだはずだ。力の差が開いているのは分かっていたのに……それを軽視してしまっていた。
この変体とは戦ってはいけなかったんだ。仲間が増えたことで思わず強気になってしまっていた。
「諦めるな! サークレットフェアリー!! 戦っているのはオマエ一人ではないんだガゥ……」
床に転がるガゥが叫んだ。頭部だけの姿になってもボクの背中を押そうとしてくれている。
そして、彼が伝えようとしていたことがすぐに明らかとなった。
ガゥライザーと入れ替わりで、あのドルフィン型のマシーンが爆走しながらレッドの背中に体当たりをかましていた。
「どうして勝手に……あれは! サガワ博士!」
ドルフィンに搭乗したのはレッサーパンダの博士だった。
ボクたちが戦闘を繰り広げている間に博士は、このマシーンを使用できるように修復していたようだ。
「なんだ……このアライグマはああぁ!? この小動物の分際で! 喰い殺してやる」
「ワンワンワン!! ワン!」
息子に何かを必死で伝えようとしている。けれど、伝える手段がない。
すると博士はスマートフォンを抱えながら器用に画面をタッチしてゆく。
『美味しい蕎麦屋からやってきました』
「知るかよ! 何がしたいんだ? コイツは!!」
どうやらスマホの翻訳機能を利用して伝えたいこと告げようと試みているみたいだ。
悪戦苦闘しながら、操作を続けている。
『もうヤメロ。そんなことをしていても優秀な父親を越えられるほどの器量はオマエにはない』
「んなぁぁ……下等生物にそんなことを言われる筋合いはない!」
博士の言葉により激怒したレッドはハーネスを地面に放り捨て、彼の下へと詰め寄っていった。
その瞬間、ついにドブデバイスのゲージが満タンとなった。
「変身だ、キュイちゃん!!」
「うん! 皆がつないでくれたチャンスを逃すわけにはいかない。トランスチェンジ! サークレットフェアリー、フルスタイルモード!!」
狂人だ、怪人の中でも極めて狂暴な類である。
「早く助けないと……ドブさん! フルスタイルモードになれる条件は思い出せたの?」
「…………ドブさん?」
「ん? あくづうFHHFVHFヴぇ――――YES!」
「何がYESだよ、こんな時までふざけないでよ」
「おっ、フルチンがどうしたんだい? 君にはもう……無いだろ」
「そんな悲しいことを言わなくもいいよ! 今はフルスタイルモードに変身しないとハーネスが危ないんだよ!!」
懸命に訴えるボクの気持ちをようやく汲んでくれたらしい。
「検索してみるよ」とドブさんが言ってくれた。
数秒後、ガーターベルトが怪しく発光し始めた。
もう待っている時間すらない。レッドの奴がハーネスの首を絞めつけようとしている。
「動け動け動け動け動け動け動けぇぇぇ―――なんでだよぉぉ!! どうしてこんな時にボクの身体は言うこと聞かないんだ!?」
「お待たせ、シンジ君。ああ……もちろん太い方じゃないよ」
「どうでも良いよ! それよりも――――「まぁ、手短に話すと絆パワーだね。君、最近ガゥライザーとどうなの?」
まるで主婦に旦那との仲を聞く昼間のMCのようだ。
どうもこうも、ガゥの方が忙し過ぎて戦い以外の接点がない。
だからなのか……こういう現場では定番の絆パワーとやらが足りないのは。
「ガゥ、すまなかった。決して君を蔑ろにしたわけではないんだ。何を言っても所詮、言い訳でしかないけど今だけは……今だけは! 仲間を救う力を貸してほしい」
頭を下げることすらままならない。
でも、ボクの本心であることは変わりない。
「そんな表情をするな。ドウナンイエロー! 俺はオマエと共に戦えたことが楽しかったガゥ。ずっと、続けば良いと思っていた。だからこそ、オマエがヒーローを引退した時、裏切られた気がした。それでも、今度は魔法少女として戻ってきてくれた。今は臨時でしか力を貸せないが、こうしてまた肩を並べて戦えているんだ! 今は嬉しく思うガゥ」
そう言うとガゥは急に駆け出した。
ボクの代わりにハーネスを救出しようとしている。
地を移動するのなら、ボクよりも断然、彼の方が速い。
前脚の付け根、人でいう肩の部分にマスターローブのマイクロガンが設置されている。
あの銃は基本、フルオートで掃射できる。
その機能を活かしガゥライザーが牽制をしかける。
荒々しい金属を連続で鳴らし、火花をまき散らしてゆく。
足下に銃弾が沈む衝撃で、床は砂埃で土気色に塗りつぶされてゆく。
後に残るは窪んだ弾痕と火薬特有の薬品臭い香りだけだ。
思わぬ奇襲攻撃を受けたレッドは慌てふためていたがハーネスを一向に手離そうとしない。
対するガゥライザーは彼女を解放するようにリスクを無視して、飛びかかり力づくで奪おうとした。
「ノールックソォォォード! ゴールデンスレイヤー」
今度は何も持っていないのに、武器を取り扱うようなエアープレイをし始めた。
ただし、奴の恐ろしいところは演技で終わらないところだ。
空振りした素手でも物体を切断する非常識な怪力が備わっている。
「ガゥ!!」レッドによりガゥライザーがバラバラに散ってゆく。
ボクがしっかりしていれば、こんなことにはならずに済んだはずだ。力の差が開いているのは分かっていたのに……それを軽視してしまっていた。
この変体とは戦ってはいけなかったんだ。仲間が増えたことで思わず強気になってしまっていた。
「諦めるな! サークレットフェアリー!! 戦っているのはオマエ一人ではないんだガゥ……」
床に転がるガゥが叫んだ。頭部だけの姿になってもボクの背中を押そうとしてくれている。
そして、彼が伝えようとしていたことがすぐに明らかとなった。
ガゥライザーと入れ替わりで、あのドルフィン型のマシーンが爆走しながらレッドの背中に体当たりをかましていた。
「どうして勝手に……あれは! サガワ博士!」
ドルフィンに搭乗したのはレッサーパンダの博士だった。
ボクたちが戦闘を繰り広げている間に博士は、このマシーンを使用できるように修復していたようだ。
「なんだ……このアライグマはああぁ!? この小動物の分際で! 喰い殺してやる」
「ワンワンワン!! ワン!」
息子に何かを必死で伝えようとしている。けれど、伝える手段がない。
すると博士はスマートフォンを抱えながら器用に画面をタッチしてゆく。
『美味しい蕎麦屋からやってきました』
「知るかよ! 何がしたいんだ? コイツは!!」
どうやらスマホの翻訳機能を利用して伝えたいこと告げようと試みているみたいだ。
悪戦苦闘しながら、操作を続けている。
『もうヤメロ。そんなことをしていても優秀な父親を越えられるほどの器量はオマエにはない』
「んなぁぁ……下等生物にそんなことを言われる筋合いはない!」
博士の言葉により激怒したレッドはハーネスを地面に放り捨て、彼の下へと詰め寄っていった。
その瞬間、ついにドブデバイスのゲージが満タンとなった。
「変身だ、キュイちゃん!!」
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