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五十六話 アニキ、真の魔法少女となる
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荘厳な光を放つ黄金のギアアーマーがボクの呼びかけに応じて引き寄せられていた。
一度はバラバラになっていたガゥライザーのボディが再集結し、ボクの身体と合体する。
悪くはない感触だ。頑丈な造りではありつつも重量を感じさせない。
これもまた魔法の一種なのか? このギアアーマーはゴールドではなく特殊な金属を用いて製造されたもののようだ。
マスターローブの肩口から背後を覆うバックパックのシリンダーが可動すると蒸気を放出しながら円筒状のパーツが飛び出てきた。
両肩から突出したソレらを引き抜き一つにつなげると魔法のステッキに変身した。
なんで分割して収納していたのかとツッコムのは後回しだ。
これ以上、レッドには仲間を傷つけさせない。
「マジカルジャベリン!! ファィ――――ッ!!」
魔法のステッキは不思議な杖、お爺ちゃんお婆ちゃんが携帯しているモノとはわけが違う。
望めばにミサイルだって魔法になる。
実のところ、ミサイルは怪人に対してかなりのダメージを与えられる。
軍隊が常に悪役に負けているイメージがあるのは、それがフィクションだからだ。
現実において彼らが本気なれば、並みの変体ならば十五分足らずで討伐することできる。
あえて、そうはせずヒーロー本部を頼るのはそこが天下り先だからである。
というのは――――半分ぐらいは冗談で、国軍は周辺諸国から脅威と見做されることを恐れている。
だからこそ国家に属さない国境なき、防衛機関が求められる。
ドクター、チョイワリーのような天才科学者が禁断の研究に手を染めて、結果として人智を超える技能を生み出している。
その成果がこそ、この真の魔法少女の姿だ。
「アツアツアツ!! クソォオオオ、全裸のせいで炎が防げない」
真顔でそういうことを口にするけど、ボディスーツを取っ払ったのは言うまでもなくコイツだ。
ミサイルを素手で掴み取りしたのはいいが、爆発することを考えていなかったのだろう。
爆炎に巻かれながら天に向かって拳を突き上げていた。
見た目はど派手だけど、カッコよくポーズを決めている場合などではない。その身は焼けている。
『今だ、コイツを使うのだ! エロい体つきの魔法少女よ』
「わ、私! 私のことを言ったの!? このレッサーパンダ、普通じゃないわ」
二の腕で胸元を隠しながら警戒するハーネスを他所に、博士は作業に没頭していた。
彼にとっては性欲よりも研究欲の方が勝るのだろう。
マシーンをスマホで操作しながらイルカ型のモンスターバイクを発進させる為に最終調整に取り掛かっていた。
悲しいかな、ドローンを操作するレッサーパンダの絵面は見ていて妙に和んでしまう。
これが悪の組織の幹部だというに、もはや威厳すら感じられない。
『準備できたぞ。サガワデバイス起動! ドルフィーネ、キャストオフ!!』
「ぎゃあああ――――!! 吾輩の吾輩のアイデンティティーが容赦なくパクられているぅぅ」
ハーネスに向かって変形するドルフィーネの姿に、ドブさんが阿鼻叫喚の声を上げていた。
どんだけショックをうけているのだとツッコミたいが、それだけではない。
ドブさん自身も田所さんと共にダブルドブライザーなる禁断の新兵器を開発してようと目論んでいるのをボクは、偶然にも耳にしてしまった。
はっきり、言ってパクっているのはドッチだい? と指摘してやりたい。
そうしないのは、ドブさんが人の話を聞こうとしないAIだからだ。
特に今は、グダグダと話している場合ではない。
ガゥライザーに次ぐ第二の機体、ドルフィーネと合身した魔法少女。
淡い水色をしたクリスタルのギアアーマーを装着したシルフィードハーネス・フルスタイルモードがここに誕生した。
「凄いわ。凄まじい魔力の流れを感じる……これが魔法少女の完成形態」
『魔法少女たちよ! あの愚か者を止めてやってくれないか? もうアレに、人の心は宿っていない。残されていた記憶を辿って、模倣しているにすぎない』
「まぁ――たぁ――だぁああ―――――吾輩の台詞がぁあああ!!」
「愚痴るのは後だよ! いくよ、ドブさん。レグルスラスター起動!」
飛翔しながら、未だに炎をまとうレッドの傍まで距離を縮める。
向い側からドルフィーネのレッグパーツを稼動させて、スケーターのように地面を滑走してくるハーネスが迫ってきた。
「これで挟み撃ちだ。フルスタイルモードによる左右の同時攻撃を凌げるものならやってみせろ!!」
「バアァアアアアニング・フレア・チャァアア―――――ジィィィ」
力み過ぎたレッドのケツから「ブッ!!」と音が鳴る。
ハーフタイムを告げるブザーでなく、明らかに放屁した音だった。
濃度が濃いのか、たちまち大爆発を巻き起こし、さらに炎上するブルジョアレッド。
SNS以外で燃えている男は、この怪人だけだろう。
「業火に焼かれるがいいい!!」
「クールエレメンス! フリージングホライゾン。我が魔力に応じ、大気を氷結させよ!!」
ハーネス背中から三本のビットが発射された。
イルカのヒレを象るソレらは変体を囲うと一斉に冷凍ガスを放射し始める。
「この情熱が燃え尽きることはナッシング!!」
次第に気温が下がり霜が降りてくる世界でレッドは再加熱しようとまたもや気張りだした。
「ん? んんん? あっ、あああ!!」
今度は屁ではなく失禁だった。
一度はバラバラになっていたガゥライザーのボディが再集結し、ボクの身体と合体する。
悪くはない感触だ。頑丈な造りではありつつも重量を感じさせない。
これもまた魔法の一種なのか? このギアアーマーはゴールドではなく特殊な金属を用いて製造されたもののようだ。
マスターローブの肩口から背後を覆うバックパックのシリンダーが可動すると蒸気を放出しながら円筒状のパーツが飛び出てきた。
両肩から突出したソレらを引き抜き一つにつなげると魔法のステッキに変身した。
なんで分割して収納していたのかとツッコムのは後回しだ。
これ以上、レッドには仲間を傷つけさせない。
「マジカルジャベリン!! ファィ――――ッ!!」
魔法のステッキは不思議な杖、お爺ちゃんお婆ちゃんが携帯しているモノとはわけが違う。
望めばにミサイルだって魔法になる。
実のところ、ミサイルは怪人に対してかなりのダメージを与えられる。
軍隊が常に悪役に負けているイメージがあるのは、それがフィクションだからだ。
現実において彼らが本気なれば、並みの変体ならば十五分足らずで討伐することできる。
あえて、そうはせずヒーロー本部を頼るのはそこが天下り先だからである。
というのは――――半分ぐらいは冗談で、国軍は周辺諸国から脅威と見做されることを恐れている。
だからこそ国家に属さない国境なき、防衛機関が求められる。
ドクター、チョイワリーのような天才科学者が禁断の研究に手を染めて、結果として人智を超える技能を生み出している。
その成果がこそ、この真の魔法少女の姿だ。
「アツアツアツ!! クソォオオオ、全裸のせいで炎が防げない」
真顔でそういうことを口にするけど、ボディスーツを取っ払ったのは言うまでもなくコイツだ。
ミサイルを素手で掴み取りしたのはいいが、爆発することを考えていなかったのだろう。
爆炎に巻かれながら天に向かって拳を突き上げていた。
見た目はど派手だけど、カッコよくポーズを決めている場合などではない。その身は焼けている。
『今だ、コイツを使うのだ! エロい体つきの魔法少女よ』
「わ、私! 私のことを言ったの!? このレッサーパンダ、普通じゃないわ」
二の腕で胸元を隠しながら警戒するハーネスを他所に、博士は作業に没頭していた。
彼にとっては性欲よりも研究欲の方が勝るのだろう。
マシーンをスマホで操作しながらイルカ型のモンスターバイクを発進させる為に最終調整に取り掛かっていた。
悲しいかな、ドローンを操作するレッサーパンダの絵面は見ていて妙に和んでしまう。
これが悪の組織の幹部だというに、もはや威厳すら感じられない。
『準備できたぞ。サガワデバイス起動! ドルフィーネ、キャストオフ!!』
「ぎゃあああ――――!! 吾輩の吾輩のアイデンティティーが容赦なくパクられているぅぅ」
ハーネスに向かって変形するドルフィーネの姿に、ドブさんが阿鼻叫喚の声を上げていた。
どんだけショックをうけているのだとツッコミたいが、それだけではない。
ドブさん自身も田所さんと共にダブルドブライザーなる禁断の新兵器を開発してようと目論んでいるのをボクは、偶然にも耳にしてしまった。
はっきり、言ってパクっているのはドッチだい? と指摘してやりたい。
そうしないのは、ドブさんが人の話を聞こうとしないAIだからだ。
特に今は、グダグダと話している場合ではない。
ガゥライザーに次ぐ第二の機体、ドルフィーネと合身した魔法少女。
淡い水色をしたクリスタルのギアアーマーを装着したシルフィードハーネス・フルスタイルモードがここに誕生した。
「凄いわ。凄まじい魔力の流れを感じる……これが魔法少女の完成形態」
『魔法少女たちよ! あの愚か者を止めてやってくれないか? もうアレに、人の心は宿っていない。残されていた記憶を辿って、模倣しているにすぎない』
「まぁ――たぁ――だぁああ―――――吾輩の台詞がぁあああ!!」
「愚痴るのは後だよ! いくよ、ドブさん。レグルスラスター起動!」
飛翔しながら、未だに炎をまとうレッドの傍まで距離を縮める。
向い側からドルフィーネのレッグパーツを稼動させて、スケーターのように地面を滑走してくるハーネスが迫ってきた。
「これで挟み撃ちだ。フルスタイルモードによる左右の同時攻撃を凌げるものならやってみせろ!!」
「バアァアアアアニング・フレア・チャァアア―――――ジィィィ」
力み過ぎたレッドのケツから「ブッ!!」と音が鳴る。
ハーフタイムを告げるブザーでなく、明らかに放屁した音だった。
濃度が濃いのか、たちまち大爆発を巻き起こし、さらに炎上するブルジョアレッド。
SNS以外で燃えている男は、この怪人だけだろう。
「業火に焼かれるがいいい!!」
「クールエレメンス! フリージングホライゾン。我が魔力に応じ、大気を氷結させよ!!」
ハーネス背中から三本のビットが発射された。
イルカのヒレを象るソレらは変体を囲うと一斉に冷凍ガスを放射し始める。
「この情熱が燃え尽きることはナッシング!!」
次第に気温が下がり霜が降りてくる世界でレッドは再加熱しようとまたもや気張りだした。
「ん? んんん? あっ、あああ!!」
今度は屁ではなく失禁だった。
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