超絶転身少女 インフィニティアニキ 特撮ヒーローから魔法少女系νtuberに転職します

心絵マシテ

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五十七話 アニキ、ハッピーかい?

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ずぶ濡れとなった股間にそっと手を当て、レッドは感触を確かめる。
年甲斐もなく、恐る恐る触れると、まだじんわりと生暖かい。
自分の犯してしまったことへの背徳感が背筋を駆け抜ける。
大は小を兼ねると言うが、生理的シナジー効果により禁断の境地に至ってしまった。
ヒーローとして、オムツァーになるのはまだ時期尚早だと常日頃、頭の片隅で思い浮かべていた日々が今では懐かしく思う。
ノスタルジックに浸るレッドには幼女の歌声が聞こえていた。
その唄は彼にとっての子守歌でありレクイエムでもあった。
心を落ち着けて深呼吸すると思考は一巡して、それもアリだなと受け入れる覚悟ができた。

ようやく、考えがまとまった男は急激に股間に冷えを感じた。
生来の冷え性であると理解しているレッドにとって、股下が冷えることはいつもことだった。
あまりにも慣れ過ぎて内腿うちもも部分にまで耐えられない肌寒さを感じるまで気づけなかった。

「凍っている、だと!?」

突然の変化に面をくらう。怪人の肉体であっても凍結には敵わない。
ブーメランパンツから凍りついてゆくレッド、ほぼ裸体なので見る見るうちに氷結してしまう。
そのまま力任せに身体を動かせば身体中にひび割れが生じ粉々に砕けてしまう。
それだけは何としても避けたい。
勘弁、願いたいところなのだが、そう上手くいかないのが人の世の世知辛さである。

「「ダブルファイナルフィニッシャー、コスモダイヤモンドノヴァ!! 世界に幸あれ! 魔よ滅せよ!」」

サークレットフェアリーとシルフィードハーネスの合体技が炸裂した。
ビットから発生する渦巻く冷気の塊をブルジョアレッドに叩き込むと高熱を放つコスモブレイドが飛び交う。
途端、凝縮していた気体は急速な熱膨張を起こし、壮絶なる大爆発を引き起こした。
地下の格納庫全体が激しく揺れ、耳をつんざくような爆音をまき散らしながら、閃光はレッドの身体を飲み込んでいった。
魔法少女の力は決して足し算では計れない。
フェアリーとハーネスの二人が力を合わせた結果、これまでにない強大なエネルギーを生み出した。
屋外へと出る大穴を開けたまま閃光が山肌を大きく抉った――――



初めて放つハーネスとの合体技は凄まじいモノだった。今でもこの手に感触が残っている。
しきりに腕をさすりながら、ボクは今起きた出来事を冷静に思い返す。
フルスタイルモードになったボクたちの決め技が華麗に決まった。
ついに、あの変態ながらも強敵だったブルジョアレッドを越えて見せた。

「勝ったん……だよね? 私たち」
隣に立つハーネスも信じられないといった表情でボクに目を向けていた。

「一人ではできないことも二人でやれば可能となるんだ!」とボクは強く首肯した。

このまま勝利の余韻に浸りたいところだが、そうもいかない。
レッドの身体から過剰な魔の力を吸引し、ハーネスへと渡さないといけない。
もっとも彼の状態を調べる方が先のような気もするが……。

大穴から外出て見ると、すぐ近くに別の大穴が開いていた。
急いで向かってみると穴の中央で埋もれているレッドを発見した。
意識はないようだが、まだちゃんと脈はある。

背後から「キュイ!」とボクを呼ぶ声が聞こえた。
振り向くと茂みの向こうから手を振るアイカちゃんたちが見えた。

「もう大丈夫だよね? キュイちゃん、吾輩は少々疲れたから変身を解除することにするよ?」

「うん、今回は激闘だったからね。回復するまで休んでいて!」

ボクがそう伝えると変身が解除されガーターベルトが外れムニーのカタチに戻った。
余程、消耗したのだろう、ドブさんにしては偉くあっさりとしていた。

「とと、おっと!! 危ない、危うく落とすところだったよ」

しばらくは、そっとしておいてあげようとムニーを抱きかかえ、田所さんたちと合流した。
田宮さんと二人で状況を説明すると、TMGのメンバーは反応こそ違えど驚きを隠せずにいた。

「くぅ―――カッケェェェ!! これが噂のギアアーマーか!」

「悪いが俺はそろそろ帰りたいんだガゥ。次の仕事が待っている」

ガゥライザーとドルフィーネを交互に見ながら興奮するアイカちゃん。
人工知能が備わっていないドルフィーネはともかく、ガゥはほとほと困っている様子だった。

「そう言えば、ガゥって仕事ばかりで忙しいよね?」

「前にも言ったばずだが、養わないといけない家族がいるんだガゥ。それじゃな。また何かあったら読んでくれ、フェアリー!!」

転送されるガゥを見送りつつ、レッドの方へと向かうと田所さんがぶっ太い注射器を持ち出し、魔力を吸い上げていた。

「これは、かなりの量が取れるぞ! 田宮君、悪いがいくらか分けてもらえないか? 代わりと言ってはなんだが、そのイルカのギアアーマーに人工知能を搭載しよう! さすれば君の良きサポーターになるだろう」

「それは有難い話です。いずれにせよ、分配することは考えていました。皆さんもここに潜んでいる変体を探していたわけですし」

「話が早くて助かるわ、エレナちゃん。大抵、こういう時はどちらかが、ごねて揉めるごとになるんよ」

「あの彼はどうなるんですか?」

話を進めている田宮さんたちにボクは尋ねた。今までだったらボクが倒した相手は人に戻るはずだ。
このレッドは変体になって、ずいぶんと時間が経過している。
本当に、博士の仮説通り彼が人の心を無くしてしまったのなら、ボクが何をしても戻ることはない。
拭えない懸念がこの胸を強く圧迫していた。
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