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プロローグ 旅の天秤
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放課後、私たちは最寄りのファミレスに立ち寄った。
担任の件について周囲の大人にどう事実を打ち明けるべきか、話し合う必要があったからだ。
勿論、この問題を野放しにすることはできないし、必ず明るみに出す。
その点においては私も小鳩さんも意見が一致している。
ただ、いつ行動に移すのかいう話になると意見は割れた。
今すぐ、学校側に報告するべきだと私は告げた。
しかし、小鳩さんの方はそうは思っていないらしく待ったがかかってしまった。
どうも釈然としないと小首をかしげていると小鳩さんの方から、事情を説明したいとこうしてファミレスに誘われたのだ。
「私のおごりだから、てきとーに注文してね。どうしたの? ソワソワして」
「い、いやお構いなく。ただ、学校帰りに飲食店に立ち寄るの大丈夫かなって……考えるとなかなか落ち着かないかな」
「うーん、真面目か! 別に気にしないでいいわよ。この店の店長、身内だし実質保護者同伴みたいなものよ」
「小鳩さん、なんたる剛毅」
本当のそれでいいのだろうか?
強引な解釈に押し流されているような気がする。
人がわりと戸惑っているのも知らずに、小鳩さん早速注文しているし。
「じゃ、そろそろ本題に入りましょうか」
「うん」
「月舘さん、貴女は他者に言えない秘密を抱えているよね?」
「えっ? ひ、秘密って」
思いもよらない一言に、心臓が一瞬だけ激しく脈打った。
まさか、魔術のことがバレてしまったのか?
そんな話は一度たりともしたことは無いし、気づかれる心当たりもない。
と、とにかく沈黙は不味い。
鎌をかけられている可能性もある、怪しまれない程度に返答してこの話題をそらさないと。
「当ててみよっか! 月舘さん実は人にはない特殊な能力を持っているとか?」
「へぇっ! へえぇー。そんな……こと……ないよ?」
やばい、やばいやばいぃぃ、嘘はついていないけど小鳩さんの読み? はかなり核心に近い。
動揺して声が裏返ってしまった。
握った両拳を膝小僧の上にのせたまま身動きが取れない。
蛇ににらまれたカエルか! 私は。
辛うじて視線だけ向けると、小鳩さんはにこにこ微笑んでいる。
この人、絶対私の秘密に気づいている……そうでなければ、こんな変な問答は始まらない。
「これでも白状しないとは、お主もなかなか強情者よのぅ。フフッ……ちょっと意地悪が過ぎちゃった、ゴメンね。心配しなくも大丈夫、私も貴女と同類だから」
「といいますと……」
「私のひぃひぃひぃお婆ちゃん、魔女だったの。そのせいか私は術具って呼ばれている魔法の道具が扱えるの、種類問わず何でもね。貴女のことも探ったわけではなく魔力探知の術具で偶然、気づいたの」
「言われてみれば確かに、あなたからは微弱だけど魔……あっ! 何でもないです」
どどどうしよう……今の今まで全然気づかなかった。
まさか、クラスメイトが同様の秘密を抱えていたなんて想像できるわけがないよ。
秘密を知られた時、相手がどんな反応を示すのか? ばかり考えてきた私だ。
他者のカミングアウトを聞いてもどう受け答えしてあげればいいのか? さっぱりだ!
それにしても、小鳩さんは凄い。
いくら私が魔術に関わっている者だからって、自分の正体を赤裸々に打ち明けてくるなんて、度胸がなければできない。
彼女を見ていると自分がいかに卑小なのか痛感させられる。
皮肉にも魔力感知できるがゆえの弊害。
これ以上、嘘偽りなく真を伝えようとしている人に、私の秘密を隠し通すのは無理だ。
自分だけ黙秘を通すのはフェアではないし、何より真摯に向き合ってくれる彼女の気持ちを穢したくない。
「小鳩さん……確かに、あなたの言う通り私には不思議な力があります。けど、ごめんなさい……私、期待には応えられない。力を持っているはずなのに、術も魔法も何一つ使えない出来損ない魔術師なの」
「いいえ、貴女は特別だわ。魔法が使えないんじゃなくて、使い方の認識自体が間違っているのよ」
いつしか、テーブルの上に置かれていたティーカップ。
紅茶が淹れてある、それを手に取りながら彼女は先の言葉意味を説明してくれた。
「例えば、月舘さんはミルクティーが飲みたい。けれど、目の前にあるのはただの紅茶。貴女はそれをどうにかしようとテーブルの砂糖を入れる……しかし、いくら砂糖を入れても甘くなるばかりで紅茶はミルクティーならないしなりえない。ならば、どうする?」
「砂糖ではなくミルクを手にいれないと、だけどここには無い」
「そうね。貴女の力を開花させるきっかけは貴女の手元には無いわ、砂糖はいくらでもあるのに。性質あるいは種の違いゆえに望む形に届かない。でもね……私なら貴女が必要とするミルクを用意できるのよ」
そう言いながら、小鳩さんは鞄を開けて真っ白なシルク生地でくるんである何かを取り出した。
離れていても感じる強い魔力の渦を帯びたソレは薄気味悪く、近づけられただけで肌がピリピリしてくる。
「術具、旅の天秤。この天秤は現世を隠世に改編する力を宿すと言われている禁忌の呪具。胡散臭いいわれだけど一回、試してみたから効果は実証済みよ」
担任の件について周囲の大人にどう事実を打ち明けるべきか、話し合う必要があったからだ。
勿論、この問題を野放しにすることはできないし、必ず明るみに出す。
その点においては私も小鳩さんも意見が一致している。
ただ、いつ行動に移すのかいう話になると意見は割れた。
今すぐ、学校側に報告するべきだと私は告げた。
しかし、小鳩さんの方はそうは思っていないらしく待ったがかかってしまった。
どうも釈然としないと小首をかしげていると小鳩さんの方から、事情を説明したいとこうしてファミレスに誘われたのだ。
「私のおごりだから、てきとーに注文してね。どうしたの? ソワソワして」
「い、いやお構いなく。ただ、学校帰りに飲食店に立ち寄るの大丈夫かなって……考えるとなかなか落ち着かないかな」
「うーん、真面目か! 別に気にしないでいいわよ。この店の店長、身内だし実質保護者同伴みたいなものよ」
「小鳩さん、なんたる剛毅」
本当のそれでいいのだろうか?
強引な解釈に押し流されているような気がする。
人がわりと戸惑っているのも知らずに、小鳩さん早速注文しているし。
「じゃ、そろそろ本題に入りましょうか」
「うん」
「月舘さん、貴女は他者に言えない秘密を抱えているよね?」
「えっ? ひ、秘密って」
思いもよらない一言に、心臓が一瞬だけ激しく脈打った。
まさか、魔術のことがバレてしまったのか?
そんな話は一度たりともしたことは無いし、気づかれる心当たりもない。
と、とにかく沈黙は不味い。
鎌をかけられている可能性もある、怪しまれない程度に返答してこの話題をそらさないと。
「当ててみよっか! 月舘さん実は人にはない特殊な能力を持っているとか?」
「へぇっ! へえぇー。そんな……こと……ないよ?」
やばい、やばいやばいぃぃ、嘘はついていないけど小鳩さんの読み? はかなり核心に近い。
動揺して声が裏返ってしまった。
握った両拳を膝小僧の上にのせたまま身動きが取れない。
蛇ににらまれたカエルか! 私は。
辛うじて視線だけ向けると、小鳩さんはにこにこ微笑んでいる。
この人、絶対私の秘密に気づいている……そうでなければ、こんな変な問答は始まらない。
「これでも白状しないとは、お主もなかなか強情者よのぅ。フフッ……ちょっと意地悪が過ぎちゃった、ゴメンね。心配しなくも大丈夫、私も貴女と同類だから」
「といいますと……」
「私のひぃひぃひぃお婆ちゃん、魔女だったの。そのせいか私は術具って呼ばれている魔法の道具が扱えるの、種類問わず何でもね。貴女のことも探ったわけではなく魔力探知の術具で偶然、気づいたの」
「言われてみれば確かに、あなたからは微弱だけど魔……あっ! 何でもないです」
どどどうしよう……今の今まで全然気づかなかった。
まさか、クラスメイトが同様の秘密を抱えていたなんて想像できるわけがないよ。
秘密を知られた時、相手がどんな反応を示すのか? ばかり考えてきた私だ。
他者のカミングアウトを聞いてもどう受け答えしてあげればいいのか? さっぱりだ!
それにしても、小鳩さんは凄い。
いくら私が魔術に関わっている者だからって、自分の正体を赤裸々に打ち明けてくるなんて、度胸がなければできない。
彼女を見ていると自分がいかに卑小なのか痛感させられる。
皮肉にも魔力感知できるがゆえの弊害。
これ以上、嘘偽りなく真を伝えようとしている人に、私の秘密を隠し通すのは無理だ。
自分だけ黙秘を通すのはフェアではないし、何より真摯に向き合ってくれる彼女の気持ちを穢したくない。
「小鳩さん……確かに、あなたの言う通り私には不思議な力があります。けど、ごめんなさい……私、期待には応えられない。力を持っているはずなのに、術も魔法も何一つ使えない出来損ない魔術師なの」
「いいえ、貴女は特別だわ。魔法が使えないんじゃなくて、使い方の認識自体が間違っているのよ」
いつしか、テーブルの上に置かれていたティーカップ。
紅茶が淹れてある、それを手に取りながら彼女は先の言葉意味を説明してくれた。
「例えば、月舘さんはミルクティーが飲みたい。けれど、目の前にあるのはただの紅茶。貴女はそれをどうにかしようとテーブルの砂糖を入れる……しかし、いくら砂糖を入れても甘くなるばかりで紅茶はミルクティーならないしなりえない。ならば、どうする?」
「砂糖ではなくミルクを手にいれないと、だけどここには無い」
「そうね。貴女の力を開花させるきっかけは貴女の手元には無いわ、砂糖はいくらでもあるのに。性質あるいは種の違いゆえに望む形に届かない。でもね……私なら貴女が必要とするミルクを用意できるのよ」
そう言いながら、小鳩さんは鞄を開けて真っ白なシルク生地でくるんである何かを取り出した。
離れていても感じる強い魔力の渦を帯びたソレは薄気味悪く、近づけられただけで肌がピリピリしてくる。
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