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泡沫ノ邂逅
狭間の定例会
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ここは、どこなのだろうか?
気づくと辺り一面が白夜のように明るい空白に支配されていた。
そこに天地の境目はなく、ただただ終わりのみえない空間のみ広がり続けている。
色味の失われた簡素な魔境。
形あるもの全てが排斥された無の終着点。
この場所をどう説明すればイメージと重なり合うのか、自分なりに何個かチョイスしてはみたが、意味のない事だと気づき唇がへの字に曲がった。
自分以外、人っ子一人見当たらない……これでは何処に行けばいいのかも分からない。
周囲は精神病棟みたいに真っ白だ。時間が経つにつれて正常な判断は鈍り、感覚が狂い出してくる。
今は彼是考えるのは控えよう。
これ以上は頭痛のタネになるだけだ。
ゾイとの一戦は正直、敗北感をぬぐえない。
結果だけみれば痛み分け程度に感じる。
しかし相手を侮ったがために主導権を握れず、自分の実力すらろくに出し切れなかった。
首飾りの魔道具についても同様、能力を探ることを優先し警戒を怠ったがゆえに、憶測を越える力を見せつけらて、正体を見極めるどころではなくなってしまった。
極めつけは、重力攻撃を回避しようとコキュートスでゾイを凍えさせ意識を刈り取ろうとした結果、空間転移をさせられ、こちらの方がブラックアウトしてしまうという失態。
言い逃れはできない、挽回するチャンスが残されていたとしても厳しい状況だ。
それでも、この場所には長いできない。私には私の為すべき事がある。
そのためにも最低限、調べないといけないことが幾つかある。
自分がどうして此処にいるのか?
この謎の空間は一体なんなのか?
ここから抜け出す方法はあるのか?
最低でもこれら三つは、知っておきたい。
「ん? あれれ、珍しく俺より先に誰か来てんじゃん」
今の今まで人の気配すらなかったはずなのに、不意に背後から足音が響いてきた。
こちらに向かってきている……。
明らかに人の声だった。こんな何もない場所にどうして人がいるのか? ひょっとしたら、こちらと同様に空間転移してきたのだろうか?
色々と気にはなるも相手の得体がしれないのだ、決して警戒を解いてはならない。
み、見るんじゃなかった。
チラッと後ろに目をやるとピエロがすぐそばをテクテクと歩行していた。
厳密にいえばピエロの仮面をつけた男だけど、どういう意図があり素顔を隠しているのか? 情報が不足している以上は不気味で仕方がない。
「おっおお、君は新顔だねー。誰の代行かな?」
第一印象とはずいぶんと違い、ピエロの人は興味津々といった感じでフランクに接してきた。
返答次第では、それすら危うくなりそうだが……下手にお茶を濁そうとすればもっとヤバイ事が起きそうな予感がする。
「え――――っと、ですね」
不味い……どう話を合わせればいいのか? アーカイブスでも対処しきれない。
「ディングの代わりだろ、魔力感知すれば分かるのに。ずいぶんと意地悪な訊き方するね、アルバ」
今度は奥の方から別の男性の声がした。
いつしか、目の前には楕円の長テーブルが置かれ、傍には肘掛けの付いた腰かけ椅子が10脚ほど整然と並んでいる。
その事に驚きを隠せない私だったが、それだけでは終わらない。
テーブルの奥には雛壇が設置されており、先ほどの声の主はその天辺に腰を下ろして待機していた。
ここに集まる連中はマスクを装着しなければならない、しきたりでもあるというのか? ピエロ同様、その素顔を目にする事はできない。
その人のマスクは、とりわけクレイジーだった。
彼のマスクはゴミ袋――そうコンビニで使うような小さなサイズの白いゴミ袋を幾重にも顔に巻き付けて、さらに逆さにしたゴミ袋をニット帽のように被っている。
のっけから恰好の良し悪しなど問題にもならない。利便性を追求したとも思えない。
第一印象は変態、その一言に尽きるほどセンセーショナルな攻め方をしている。
「あの――」状況が飲み込めない私は、思い切って手をあげた。
不躾かもしれないが、知らないままでいる方が何倍も怖く思えた。
「あなた方は何者で、ここで何をなさっているのですか? 私、気づいたらここにいて。それで――」
「おっと、ストップ! それ以上は訊いちゃいけないよ」
すかさず、隣に立つアルバと呼ばれたピエロが私の肩に手を回した。
向かいに鎮座しているゴミ袋の人も同感というばかりに頷いている。
「互いの素性を探るのは禁止する、それが僕たちが定めた取り決めだ――と言いたいところだが、その様子だと本当にディングから何も聞かされてないみたいだね。ならば、君にも分かるように説明しよう」
「お、お願いします。此処はどこなんでしょうか?」
「君がいる此処はいわゆる次元の狭間と呼ばれる場所だ。そこに我々は結界を張り、その中でこうして活動しているわけさ」
「次元の狭間……って?」
さらっと飛び出してきたヤバめのワードに、目が点となる。
何をどうすれば、超次元に到達するのか……思いつくの可能性はたった一つ、転移に失敗した際に運悪く此処に飛ばされてしまったという偶然の重なりだ。
「なぁーに、心配ないよ。君は偶然ここに入り込んだのではなく、この定例会に参加する資格を得てやってきたのさ。でなければ、この場所に立ち入ることは不可能だ」
思った傍から否定をくらう私の推測ぇ……そういう速攻は、よくないと思います。
「定例会? いったい何の? 」
「何と問われれば一つに纏めきれぬもの。内容も、その時々で違い申す」
ゴミ袋さんに代わり、私の質問に答えてくれたのは和服姿の女性だった。
今しがた、はせ参じたであろう彼女は、私たちと目が合うなり軽く会釈をした。
「今回の議題は、我が国ドルフィームが抱える交易問題について話し合いの機会を頂いた次第。皆々様、此度は遠路はるばる、ご足労いただき誠に感謝いたす」
気づくと辺り一面が白夜のように明るい空白に支配されていた。
そこに天地の境目はなく、ただただ終わりのみえない空間のみ広がり続けている。
色味の失われた簡素な魔境。
形あるもの全てが排斥された無の終着点。
この場所をどう説明すればイメージと重なり合うのか、自分なりに何個かチョイスしてはみたが、意味のない事だと気づき唇がへの字に曲がった。
自分以外、人っ子一人見当たらない……これでは何処に行けばいいのかも分からない。
周囲は精神病棟みたいに真っ白だ。時間が経つにつれて正常な判断は鈍り、感覚が狂い出してくる。
今は彼是考えるのは控えよう。
これ以上は頭痛のタネになるだけだ。
ゾイとの一戦は正直、敗北感をぬぐえない。
結果だけみれば痛み分け程度に感じる。
しかし相手を侮ったがために主導権を握れず、自分の実力すらろくに出し切れなかった。
首飾りの魔道具についても同様、能力を探ることを優先し警戒を怠ったがゆえに、憶測を越える力を見せつけらて、正体を見極めるどころではなくなってしまった。
極めつけは、重力攻撃を回避しようとコキュートスでゾイを凍えさせ意識を刈り取ろうとした結果、空間転移をさせられ、こちらの方がブラックアウトしてしまうという失態。
言い逃れはできない、挽回するチャンスが残されていたとしても厳しい状況だ。
それでも、この場所には長いできない。私には私の為すべき事がある。
そのためにも最低限、調べないといけないことが幾つかある。
自分がどうして此処にいるのか?
この謎の空間は一体なんなのか?
ここから抜け出す方法はあるのか?
最低でもこれら三つは、知っておきたい。
「ん? あれれ、珍しく俺より先に誰か来てんじゃん」
今の今まで人の気配すらなかったはずなのに、不意に背後から足音が響いてきた。
こちらに向かってきている……。
明らかに人の声だった。こんな何もない場所にどうして人がいるのか? ひょっとしたら、こちらと同様に空間転移してきたのだろうか?
色々と気にはなるも相手の得体がしれないのだ、決して警戒を解いてはならない。
み、見るんじゃなかった。
チラッと後ろに目をやるとピエロがすぐそばをテクテクと歩行していた。
厳密にいえばピエロの仮面をつけた男だけど、どういう意図があり素顔を隠しているのか? 情報が不足している以上は不気味で仕方がない。
「おっおお、君は新顔だねー。誰の代行かな?」
第一印象とはずいぶんと違い、ピエロの人は興味津々といった感じでフランクに接してきた。
返答次第では、それすら危うくなりそうだが……下手にお茶を濁そうとすればもっとヤバイ事が起きそうな予感がする。
「え――――っと、ですね」
不味い……どう話を合わせればいいのか? アーカイブスでも対処しきれない。
「ディングの代わりだろ、魔力感知すれば分かるのに。ずいぶんと意地悪な訊き方するね、アルバ」
今度は奥の方から別の男性の声がした。
いつしか、目の前には楕円の長テーブルが置かれ、傍には肘掛けの付いた腰かけ椅子が10脚ほど整然と並んでいる。
その事に驚きを隠せない私だったが、それだけでは終わらない。
テーブルの奥には雛壇が設置されており、先ほどの声の主はその天辺に腰を下ろして待機していた。
ここに集まる連中はマスクを装着しなければならない、しきたりでもあるというのか? ピエロ同様、その素顔を目にする事はできない。
その人のマスクは、とりわけクレイジーだった。
彼のマスクはゴミ袋――そうコンビニで使うような小さなサイズの白いゴミ袋を幾重にも顔に巻き付けて、さらに逆さにしたゴミ袋をニット帽のように被っている。
のっけから恰好の良し悪しなど問題にもならない。利便性を追求したとも思えない。
第一印象は変態、その一言に尽きるほどセンセーショナルな攻め方をしている。
「あの――」状況が飲み込めない私は、思い切って手をあげた。
不躾かもしれないが、知らないままでいる方が何倍も怖く思えた。
「あなた方は何者で、ここで何をなさっているのですか? 私、気づいたらここにいて。それで――」
「おっと、ストップ! それ以上は訊いちゃいけないよ」
すかさず、隣に立つアルバと呼ばれたピエロが私の肩に手を回した。
向かいに鎮座しているゴミ袋の人も同感というばかりに頷いている。
「互いの素性を探るのは禁止する、それが僕たちが定めた取り決めだ――と言いたいところだが、その様子だと本当にディングから何も聞かされてないみたいだね。ならば、君にも分かるように説明しよう」
「お、お願いします。此処はどこなんでしょうか?」
「君がいる此処はいわゆる次元の狭間と呼ばれる場所だ。そこに我々は結界を張り、その中でこうして活動しているわけさ」
「次元の狭間……って?」
さらっと飛び出してきたヤバめのワードに、目が点となる。
何をどうすれば、超次元に到達するのか……思いつくの可能性はたった一つ、転移に失敗した際に運悪く此処に飛ばされてしまったという偶然の重なりだ。
「なぁーに、心配ないよ。君は偶然ここに入り込んだのではなく、この定例会に参加する資格を得てやってきたのさ。でなければ、この場所に立ち入ることは不可能だ」
思った傍から否定をくらう私の推測ぇ……そういう速攻は、よくないと思います。
「定例会? いったい何の? 」
「何と問われれば一つに纏めきれぬもの。内容も、その時々で違い申す」
ゴミ袋さんに代わり、私の質問に答えてくれたのは和服姿の女性だった。
今しがた、はせ参じたであろう彼女は、私たちと目が合うなり軽く会釈をした。
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