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泡沫ノ邂逅
星者の密会
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「やあやあ、元気してかい? しばらく連絡がとれなかったから気になってたよ~」
「ご無沙汰しております。アルバ殿が気になさっているのは、我々ではなく例のモノでありませんか?」
ピエロのアルバと和服の女性は顔を合わせるなり、互いに険悪なムードを漂わせていた。
決して表には出さないが、二人に何やら深い因縁があるのだろうか?
今頃になって気づいたが女性の方は、私と同じく仮面を持参していない。
仮面をつけるのは、本人の自由なのか? 決め事なのか? 以前としてルールは曖昧だが、私だけが仲間はずれではないという事実に少しだけ安堵した……?
いやいや、そうじゃない! 着けていないのが普通なんだ! 場の空気に毒されてはダメよ、萌知。
「はい、二人とも睨み合いはそれまで! 今回は六人か、まずまずだねー」
パンパンと手を打ち鳴らしながら、ゴミ袋さんは全員がテーブルにつくように促した。
上座に座る彼を挟むように両脇にアルバと着物の女性がそれぞれ着席する。
私は、少し距離を取り下座の方へ座った。
六人とは言っていたが、実際この場に集合しているのは四人、残り二人はここには来ていない。
代わりとしてテーブルに置かれているオーブを介してこちら様子を視聴しているそうだ。
「では、紳士淑女の諸君、始めよう。今宵、開かれるは深淵の会合、我ら革命の徒だけの語り合い。己が忠義を明かす為、御贄として掲げよ! その真名を! さあ、論じるが為、壇上に立つがいい! 楽園の子らよ」
リーダー格であるゴミ袋さんの指揮もと定例会とやらが始まった。
何故か、流れで参加することになった私は呆然とするしかないが、気にかけてくれる人は当然いない。
なすがままに会議だけが進行していく。
「道化のアルバだ。本日はドルフィーム本島及び、諸国連合との通商協定に伴い、貴国の通貨を主要通貨であるニーゼルに刷新することを提案する。なお、私、アルバディーンと諸島国の代表であるトゲツの両名が立ち会いもと、共和国とドルフィームの両国間の交易を正式なものとする」
テーブルを挟んで向かいに座る和服女性が、壇上の道化師を怪訝そうに直視していた。
何やら雲行きが怪しい、彼女は会議開始の時からずっと拳を握り締めている。
「それで君は? 意見があるならどうぞ」
「かたじけない、シュトゥ殿。ドルフィーム諸国連合代表、トゲツの補佐、ラズ・カヌレの名において諌言いたす。各方、此度の件、今一度考えあらためて頂けるようお願い申す」
会議開始早々、異を唱える彼女の発言に一瞬、壇上の空気が張り詰めた。
慌てた道化師、アルバの追及がすぐさま始まる。
「はっ? 何を今更。それがトゲツの回答だと言うのか!? 返答に散々、時間を割いておいて白紙に戻そうとはどういった了見だ?」
「控えろアルバ、まだ彼女の話途中だ。ラズ、どうして二ーゼルに変えることを拒む? そちらとしても現状、交易面で不便な所は多々あるはずだ」
「近年まで我らメローの民は、連合傘下の国以外との貿易は禁としてきました。そのため、取引の際には物々交換や独自の通貨を用いておりました。ゆえに、それがしは他国との金銭格差を危惧しております。我々には通貨と呼べるものでも、諸外国にとっては価値無きもの同然にございましょう。また、連合の一部では馴染みのない二ーゼルを通貨として受け入れる事を反対する動きもみられ、全会一致には幾ばくかの時を要します」
「なるほど、列国ならではの問題だな。アルバ、このままだとドルフィームとの貿易は難しくなる。提案者として何か解決の見込みはあるのか?」
それが単なる見誤りだったのか? それとも最初から良からぬ事を企てようとしていたのか? いずれにせよ、私には、自分の思惑通りに事が運ばず、アルバは業を煮やしているように見えた。
再度、考察する。
きわめて素朴な疑問であるが彼らは一体、何者だろうか?
話からするに彼らは国の重役や幹部クラスなどを務めている優秀な人材のようだ。
それに彼らの口から出てきたディングという人物? の事も気になる。
本来ならば、その人がこの場に参加するはずだったのに、何故、私に入れ替わってしまったのだろう?
疑問はつきない。
鎖国を続けてきた国が貿易を開始するのは、並大抵の事では成せない。
あくまで想像の域を越えない話だけど、自分たちの要求をさも当然のように言ってのける、この謎の集団は一つの組織として富と権力、人員が十二分に揃っているのかもしれない。
「シュトゥ、解決法がどうこうの問題ではないだろ? どのみち、あの島にあるミスリル鉱石は我々に必要となるものだ。ここで回収しなければ後に響く。本来、メローたちは我々の同士としてミスリルを献上しなければならない。それを生活が成り立たなくなるというから、わざわざ交易のカタチに持って行ってやったのに……この有様だ!」
「それは、いささか横暴であろう。貴殿は、ミスリル鉱石ではなく鉱山の採掘権を求めてきた。ミスリルをいくらか納めるのは止むないしと心得ておるが、鉱床から取れる鉱石の量は莫大だ。すべてを無償で奪われたら、国の財政は悪化の一途を辿る」
「だからこそ、二ーゼルで買い取ると言っているんだ。金銭のやり取りをする以上は価値は揃えなければならない。物々交換にしたってミスリル鉱石の価値を考慮すれば、大量の物資を船に積み込まないと行けなくなる。なんせ、ドルフィームは海上、その地形から転移陣も使用できないときた。はっきり言って、時間も手間もコストもかかってしまう。通貨での交換でなければ釣り合いが取れないのは、君も理解しているはずだ」
「ご無沙汰しております。アルバ殿が気になさっているのは、我々ではなく例のモノでありませんか?」
ピエロのアルバと和服の女性は顔を合わせるなり、互いに険悪なムードを漂わせていた。
決して表には出さないが、二人に何やら深い因縁があるのだろうか?
今頃になって気づいたが女性の方は、私と同じく仮面を持参していない。
仮面をつけるのは、本人の自由なのか? 決め事なのか? 以前としてルールは曖昧だが、私だけが仲間はずれではないという事実に少しだけ安堵した……?
いやいや、そうじゃない! 着けていないのが普通なんだ! 場の空気に毒されてはダメよ、萌知。
「はい、二人とも睨み合いはそれまで! 今回は六人か、まずまずだねー」
パンパンと手を打ち鳴らしながら、ゴミ袋さんは全員がテーブルにつくように促した。
上座に座る彼を挟むように両脇にアルバと着物の女性がそれぞれ着席する。
私は、少し距離を取り下座の方へ座った。
六人とは言っていたが、実際この場に集合しているのは四人、残り二人はここには来ていない。
代わりとしてテーブルに置かれているオーブを介してこちら様子を視聴しているそうだ。
「では、紳士淑女の諸君、始めよう。今宵、開かれるは深淵の会合、我ら革命の徒だけの語り合い。己が忠義を明かす為、御贄として掲げよ! その真名を! さあ、論じるが為、壇上に立つがいい! 楽園の子らよ」
リーダー格であるゴミ袋さんの指揮もと定例会とやらが始まった。
何故か、流れで参加することになった私は呆然とするしかないが、気にかけてくれる人は当然いない。
なすがままに会議だけが進行していく。
「道化のアルバだ。本日はドルフィーム本島及び、諸国連合との通商協定に伴い、貴国の通貨を主要通貨であるニーゼルに刷新することを提案する。なお、私、アルバディーンと諸島国の代表であるトゲツの両名が立ち会いもと、共和国とドルフィームの両国間の交易を正式なものとする」
テーブルを挟んで向かいに座る和服女性が、壇上の道化師を怪訝そうに直視していた。
何やら雲行きが怪しい、彼女は会議開始の時からずっと拳を握り締めている。
「それで君は? 意見があるならどうぞ」
「かたじけない、シュトゥ殿。ドルフィーム諸国連合代表、トゲツの補佐、ラズ・カヌレの名において諌言いたす。各方、此度の件、今一度考えあらためて頂けるようお願い申す」
会議開始早々、異を唱える彼女の発言に一瞬、壇上の空気が張り詰めた。
慌てた道化師、アルバの追及がすぐさま始まる。
「はっ? 何を今更。それがトゲツの回答だと言うのか!? 返答に散々、時間を割いておいて白紙に戻そうとはどういった了見だ?」
「控えろアルバ、まだ彼女の話途中だ。ラズ、どうして二ーゼルに変えることを拒む? そちらとしても現状、交易面で不便な所は多々あるはずだ」
「近年まで我らメローの民は、連合傘下の国以外との貿易は禁としてきました。そのため、取引の際には物々交換や独自の通貨を用いておりました。ゆえに、それがしは他国との金銭格差を危惧しております。我々には通貨と呼べるものでも、諸外国にとっては価値無きもの同然にございましょう。また、連合の一部では馴染みのない二ーゼルを通貨として受け入れる事を反対する動きもみられ、全会一致には幾ばくかの時を要します」
「なるほど、列国ならではの問題だな。アルバ、このままだとドルフィームとの貿易は難しくなる。提案者として何か解決の見込みはあるのか?」
それが単なる見誤りだったのか? それとも最初から良からぬ事を企てようとしていたのか? いずれにせよ、私には、自分の思惑通りに事が運ばず、アルバは業を煮やしているように見えた。
再度、考察する。
きわめて素朴な疑問であるが彼らは一体、何者だろうか?
話からするに彼らは国の重役や幹部クラスなどを務めている優秀な人材のようだ。
それに彼らの口から出てきたディングという人物? の事も気になる。
本来ならば、その人がこの場に参加するはずだったのに、何故、私に入れ替わってしまったのだろう?
疑問はつきない。
鎖国を続けてきた国が貿易を開始するのは、並大抵の事では成せない。
あくまで想像の域を越えない話だけど、自分たちの要求をさも当然のように言ってのける、この謎の集団は一つの組織として富と権力、人員が十二分に揃っているのかもしれない。
「シュトゥ、解決法がどうこうの問題ではないだろ? どのみち、あの島にあるミスリル鉱石は我々に必要となるものだ。ここで回収しなければ後に響く。本来、メローたちは我々の同士としてミスリルを献上しなければならない。それを生活が成り立たなくなるというから、わざわざ交易のカタチに持って行ってやったのに……この有様だ!」
「それは、いささか横暴であろう。貴殿は、ミスリル鉱石ではなく鉱山の採掘権を求めてきた。ミスリルをいくらか納めるのは止むないしと心得ておるが、鉱床から取れる鉱石の量は莫大だ。すべてを無償で奪われたら、国の財政は悪化の一途を辿る」
「だからこそ、二ーゼルで買い取ると言っているんだ。金銭のやり取りをする以上は価値は揃えなければならない。物々交換にしたってミスリル鉱石の価値を考慮すれば、大量の物資を船に積み込まないと行けなくなる。なんせ、ドルフィームは海上、その地形から転移陣も使用できないときた。はっきり言って、時間も手間もコストもかかってしまう。通貨での交換でなければ釣り合いが取れないのは、君も理解しているはずだ」
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