48 / 74
難攻不落のサクリファイス
東へ
しおりを挟む
過去の出来事を呼び起こす度、私は記憶の旅に出る。
あの時はこうだった、その時はそう思っていた、あの場合はこうすれば良かった――都度、思い返していくことで新しい気づきを得たりする。
旅が好きだ! 旅をしよう! 旅は人を大きくする!
たとえ独りでも怯えるな、踏みとどまるな。
別れは終わりではない、一歩進めば世界はまた広がってゆく。
その先がどうなるのか誰にもわからない。けれどそれは、明日の色はまだ何色にも染まっていないという無限の証。
降り注ぐ陽射しの暖かさ。
香る異国の空気。
こだまする生命の躍動。
心と体を満たす自然の恵み。
すべての五感を研ぎ澄ませたその先に待つのは、未知なる光景、真新しい世界に魂を奮い立たせる自分。
抑えきれない程の胸のときめきが、新たな出会いを導いてくれるはずだ。
「違う……こんなん私の知っている地図じゃない…………そうだよね? モリスン」
地図を持つ手を震わせて使い魔の彼に問う。
村を出立する間際、カシュウさんの粋な罠、グレイデさんから地図を受け取った。
受け取ったは良いんだけど――――まさか、彼女が手書きで作成した物だとは露知らず、地図を開き三秒でそっと閉じた。
地図に載っていたのは三角形を描くように配置された三つの丸。それぞれには村、サクリファ、ベルドガンドと記載された大変、簡潔簡素なもの。
村の位置からしてサクリファイスは北東の位置するはずだ……これで方角すら違ったら割とガチでブチギレてもいいと思う。
『お、落ち着いてくださいませ。萌知様、アーカイブス内にあるサクリファイス方面のデータは現状不足しておりまして我も正確な場所を算出することが出来ませぬ。やはり、そのゴミ屑に頼るしか……』
「ゴミ!? いくらなんでも、それは……神頼み? 村で調達した食料で何日持つかなぁ? ハハッ」
『も、萌知様! そう悲観的になる必要はありませんぞ。このゴ……地図、見方を変えれば珍妙、謎めいており宝探しの地図にも見えますぞ!』
卒倒しそうなる私を元気づける為に、優秀な使い魔は色々と気遣ってくれる。
この優しさに、ついつい甘えてしまいそうなる。
けれど、モリスンが悪魔であることは無視できない問題だ。
どこからどこまでが本音なのか? 何が本当の事なのか? 多分、彼は一切合切、明かしてはいない。
素性にしてもそうだ、私がそう考えているだけでモリスンの口から身の上話を聞いたことは一度もなかった。
これには、召喚してまだ日がそう経っていないというのも理由としてあるのだけど……。
「うん! 道端でウダウダしてても駄目だね。とりあえず、行動あるのみ! そうすりゃ、何とかなるさ」
『流石ですな。貴女様ほど適当という言葉が似あうレディを、このモリスン存じません』
こ、コイツぅ……絶対、私の事を雑にあしらっておる。
「飛び立て! 物干し竿!!」
ディザスターワーウルフ戦でも大活躍だった、アイアンロッドに浮力の魔力を込める。
というか……あれだけ酷使したのにほぼ無傷なのは、魔力に対する浸透性が優れている証拠だ。
高純度の魔力を通せる媒体というのは、それだけで魔法による強化の恩恵を受けることができる。
これは武器にとっては非常に強みとなる。
浮遊する、ソレの先端部分に魔力を練り上げ生み出した風の糸、空糸を束にして巻きつける。
すると、あら不思議~空飛ぶの箒完成だ。
早速、腰掛けて試運転だと意気込む私、エアーブラストの威力調整も慣れたものだ。
いきなり加速するのではなく、徐々に速度を出していけるぐらいには上達した。
『ほほう~これは、気分いいものですな』
緑の絨毯。そのすぐ上を、箒は風をきって滑走してゆく。
モリスンのいう通り、肌をさす風が心地良いし、辺りは森林や山岳地で囲われた絶景が拡がっている。
その縁を飾るのは、どこまでも続く快晴の空。
これほど、遊覧飛行にうってつけの条件はなかなか揃うものでもない。
「もしかしたら私、けっこう贅沢な一時をすごしているかも?」
ホント、飛行魔法様様だ。
もし、この魔法を編み出していなかったら、私はジップ村から移動しなかっただろう。
なぜならフランクさんの馬車に乗った時、この世界の厳しさを身をもって体感したからだ。
とにかく馬車は無理だった、移動時間自体は長くなかったからどうにかなったけど足回りが悪く揺れが酷い。
重ねて道も舗装されていない剥き出しのモノだから、次第に酔いが回ってくる。
いかに乗り物に強い私でもこれには参った。
しかし、そんなものはまだ序章である。
馬車には乗りつつも、どうしても乗り越えことができなかったジャンダルムがある。
それは、お尻へダイレクトアタックを仕掛けてくる振動という理不尽運動だ。
まったく弁慶の泣き所なんて鼻で笑ってしまうレベルだ。これには屈強なる戦士でもケツから壊されていくのは確実だ。
『も、萌知様ぁああ~!!』
お尻の将来を心配していると、不意にモリスンの悲鳴が頭上から聞こえた。
先刻まで私の肩に止まっていた彼がいない。
ふと、空を見上げると北方へと羽ばたく巨大な怪鳥の姿……。
「わあっ!」怪鳥の足下にモリスンがぶら下がっている!
物理的な接触がなかったことから、おそらく魔法の類を使いモリスンを誘拐したに違いない。
そうこうしている内に私からどんどん遠ざかっていくモリスン達。
それもそうだ! 進んでいる方向が全然違う。
むしろ、私の方から離れていっている流れだ。
「ったく……モリスンを返しなさーい!!」
取り急ぎで方向転換し追走する。
かなりの速度で飛行してしている怪鳥は、もう点のように小さくなって見える。
でも所詮は鳥は鳥だ、ここからの巻き返しは余裕で可能。
なんせ、こちとら加速すれば飛翔体並みの速度で相手に追いつくんだぁあああ――――行き過ぎた!!
あまりに一瞬すぎて怪鳥を追い抜いてしまった……ブレーキをかけようにも、このままだと離れすぎて見失ってしまう。
「空糸・縛鎖っ!!」
離れるのなら、いっそ連行してしまえばいい。網上の魔法糸を解き放ち、鳥の両翼を絡め取った。
「よっしゃ! ゲットだぜぇ~。ん? ああ、わあっ! ちょっ……重い重いっ」
鳥の重量によりガクンと背後が下がっていく。
咄嗟とはいえ糸で絡め取ったのは間違いだった。
翼を押さえられては怪鳥とて落下するしかない。そのことを私は見落としていた。
地上に吸い込まれていく鳥に巻き込まれていくカタチで私も降下していっている。
「そういや絶叫マシン苦手だったっけ、私。下は雑木林、なんとかなるかな」
危機的、状況にも関わらず微塵も恐怖が湧いてこない。塔でも感じたこの感覚……これも彼女が話していた魔性とかいうモノの一端なのだろう。
あれだけ怖かった高所が今は平気だ。
とりあえず縛鎖を解除してみたが、大きくバランスを崩してしまった以上、飛行はできない。
一先ずは、落下をどうにかしないと……。
私は再度、縛鎖を発動させ木々の間に引っ掛け、大き目のハンモックを作った。
狙い通り、風でできた網はしっかりと私の身を受けとめてくれた。
地上に降りるなり怪鳥を近くで発見した。
あれだけドスン! と派手な音を立てていたんだ、どこら辺に落ちたかなんて分かりきっている。
横に倒れているソレを、ロッドで突いてみるも反応はない。
どうやら、地表に叩きつけられた時点で絶命していたみたいだ。
かぎ爪の間を見てため息をつく、そこにモリスンの姿はない。
「モリス――ン!! どこにいるの? 返事して!」
あの時はこうだった、その時はそう思っていた、あの場合はこうすれば良かった――都度、思い返していくことで新しい気づきを得たりする。
旅が好きだ! 旅をしよう! 旅は人を大きくする!
たとえ独りでも怯えるな、踏みとどまるな。
別れは終わりではない、一歩進めば世界はまた広がってゆく。
その先がどうなるのか誰にもわからない。けれどそれは、明日の色はまだ何色にも染まっていないという無限の証。
降り注ぐ陽射しの暖かさ。
香る異国の空気。
こだまする生命の躍動。
心と体を満たす自然の恵み。
すべての五感を研ぎ澄ませたその先に待つのは、未知なる光景、真新しい世界に魂を奮い立たせる自分。
抑えきれない程の胸のときめきが、新たな出会いを導いてくれるはずだ。
「違う……こんなん私の知っている地図じゃない…………そうだよね? モリスン」
地図を持つ手を震わせて使い魔の彼に問う。
村を出立する間際、カシュウさんの粋な罠、グレイデさんから地図を受け取った。
受け取ったは良いんだけど――――まさか、彼女が手書きで作成した物だとは露知らず、地図を開き三秒でそっと閉じた。
地図に載っていたのは三角形を描くように配置された三つの丸。それぞれには村、サクリファ、ベルドガンドと記載された大変、簡潔簡素なもの。
村の位置からしてサクリファイスは北東の位置するはずだ……これで方角すら違ったら割とガチでブチギレてもいいと思う。
『お、落ち着いてくださいませ。萌知様、アーカイブス内にあるサクリファイス方面のデータは現状不足しておりまして我も正確な場所を算出することが出来ませぬ。やはり、そのゴミ屑に頼るしか……』
「ゴミ!? いくらなんでも、それは……神頼み? 村で調達した食料で何日持つかなぁ? ハハッ」
『も、萌知様! そう悲観的になる必要はありませんぞ。このゴ……地図、見方を変えれば珍妙、謎めいており宝探しの地図にも見えますぞ!』
卒倒しそうなる私を元気づける為に、優秀な使い魔は色々と気遣ってくれる。
この優しさに、ついつい甘えてしまいそうなる。
けれど、モリスンが悪魔であることは無視できない問題だ。
どこからどこまでが本音なのか? 何が本当の事なのか? 多分、彼は一切合切、明かしてはいない。
素性にしてもそうだ、私がそう考えているだけでモリスンの口から身の上話を聞いたことは一度もなかった。
これには、召喚してまだ日がそう経っていないというのも理由としてあるのだけど……。
「うん! 道端でウダウダしてても駄目だね。とりあえず、行動あるのみ! そうすりゃ、何とかなるさ」
『流石ですな。貴女様ほど適当という言葉が似あうレディを、このモリスン存じません』
こ、コイツぅ……絶対、私の事を雑にあしらっておる。
「飛び立て! 物干し竿!!」
ディザスターワーウルフ戦でも大活躍だった、アイアンロッドに浮力の魔力を込める。
というか……あれだけ酷使したのにほぼ無傷なのは、魔力に対する浸透性が優れている証拠だ。
高純度の魔力を通せる媒体というのは、それだけで魔法による強化の恩恵を受けることができる。
これは武器にとっては非常に強みとなる。
浮遊する、ソレの先端部分に魔力を練り上げ生み出した風の糸、空糸を束にして巻きつける。
すると、あら不思議~空飛ぶの箒完成だ。
早速、腰掛けて試運転だと意気込む私、エアーブラストの威力調整も慣れたものだ。
いきなり加速するのではなく、徐々に速度を出していけるぐらいには上達した。
『ほほう~これは、気分いいものですな』
緑の絨毯。そのすぐ上を、箒は風をきって滑走してゆく。
モリスンのいう通り、肌をさす風が心地良いし、辺りは森林や山岳地で囲われた絶景が拡がっている。
その縁を飾るのは、どこまでも続く快晴の空。
これほど、遊覧飛行にうってつけの条件はなかなか揃うものでもない。
「もしかしたら私、けっこう贅沢な一時をすごしているかも?」
ホント、飛行魔法様様だ。
もし、この魔法を編み出していなかったら、私はジップ村から移動しなかっただろう。
なぜならフランクさんの馬車に乗った時、この世界の厳しさを身をもって体感したからだ。
とにかく馬車は無理だった、移動時間自体は長くなかったからどうにかなったけど足回りが悪く揺れが酷い。
重ねて道も舗装されていない剥き出しのモノだから、次第に酔いが回ってくる。
いかに乗り物に強い私でもこれには参った。
しかし、そんなものはまだ序章である。
馬車には乗りつつも、どうしても乗り越えことができなかったジャンダルムがある。
それは、お尻へダイレクトアタックを仕掛けてくる振動という理不尽運動だ。
まったく弁慶の泣き所なんて鼻で笑ってしまうレベルだ。これには屈強なる戦士でもケツから壊されていくのは確実だ。
『も、萌知様ぁああ~!!』
お尻の将来を心配していると、不意にモリスンの悲鳴が頭上から聞こえた。
先刻まで私の肩に止まっていた彼がいない。
ふと、空を見上げると北方へと羽ばたく巨大な怪鳥の姿……。
「わあっ!」怪鳥の足下にモリスンがぶら下がっている!
物理的な接触がなかったことから、おそらく魔法の類を使いモリスンを誘拐したに違いない。
そうこうしている内に私からどんどん遠ざかっていくモリスン達。
それもそうだ! 進んでいる方向が全然違う。
むしろ、私の方から離れていっている流れだ。
「ったく……モリスンを返しなさーい!!」
取り急ぎで方向転換し追走する。
かなりの速度で飛行してしている怪鳥は、もう点のように小さくなって見える。
でも所詮は鳥は鳥だ、ここからの巻き返しは余裕で可能。
なんせ、こちとら加速すれば飛翔体並みの速度で相手に追いつくんだぁあああ――――行き過ぎた!!
あまりに一瞬すぎて怪鳥を追い抜いてしまった……ブレーキをかけようにも、このままだと離れすぎて見失ってしまう。
「空糸・縛鎖っ!!」
離れるのなら、いっそ連行してしまえばいい。網上の魔法糸を解き放ち、鳥の両翼を絡め取った。
「よっしゃ! ゲットだぜぇ~。ん? ああ、わあっ! ちょっ……重い重いっ」
鳥の重量によりガクンと背後が下がっていく。
咄嗟とはいえ糸で絡め取ったのは間違いだった。
翼を押さえられては怪鳥とて落下するしかない。そのことを私は見落としていた。
地上に吸い込まれていく鳥に巻き込まれていくカタチで私も降下していっている。
「そういや絶叫マシン苦手だったっけ、私。下は雑木林、なんとかなるかな」
危機的、状況にも関わらず微塵も恐怖が湧いてこない。塔でも感じたこの感覚……これも彼女が話していた魔性とかいうモノの一端なのだろう。
あれだけ怖かった高所が今は平気だ。
とりあえず縛鎖を解除してみたが、大きくバランスを崩してしまった以上、飛行はできない。
一先ずは、落下をどうにかしないと……。
私は再度、縛鎖を発動させ木々の間に引っ掛け、大き目のハンモックを作った。
狙い通り、風でできた網はしっかりと私の身を受けとめてくれた。
地上に降りるなり怪鳥を近くで発見した。
あれだけドスン! と派手な音を立てていたんだ、どこら辺に落ちたかなんて分かりきっている。
横に倒れているソレを、ロッドで突いてみるも反応はない。
どうやら、地表に叩きつけられた時点で絶命していたみたいだ。
かぎ爪の間を見てため息をつく、そこにモリスンの姿はない。
「モリス――ン!! どこにいるの? 返事して!」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~
二階堂吉乃
恋愛
同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。
1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。
一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。
いつか優しく終わらせてあげるために。
イチイ アキラ
恋愛
初夜の最中。王子は死んだ。
犯人は誰なのか。
妃となった妹を虐げていた姉か。それとも……。
12話くらいからが本編です。そこに至るまでもじっくりお楽しみください。
短編)どうぞ、勝手に滅んでください。
黑野羊
恋愛
二度も捨てられた聖女です。真実の愛を見つけたので、国は救いません。
あらすじ)
大陸中央にあるルオーゴ王国で、国を守る結界を維持してきた聖女ロザリア。
政略のため王太子と婚約していた彼女は、突如『真の聖女』が現れたとして婚約を破棄され、聖女の座を追われてしまう。さらに、代わりに婚姻しろと命じられた聖騎士からも拒絶され、実家にも見捨てられたロザリアは、『最果ての修道院』へと追放された。
けれど彼女はそこで、地位や栄光、贅沢などとはほど遠い、無条件に寄り添ってくれる『真実の愛』と穏やかな日々を手にいれる。
やがて聖女を失った王国は、崩壊へ向かっていき――。
ーーー
※カクヨム、なろうにも掲載しています
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
冴えない建築家いずれ巨匠へと至る
木工槍鉋
ファンタジー
「建築とは、単なる箱を作ることではない。そこに流れる『時』を設計することだ――」
かつてそう語り、伝説の巨匠と呼ばれることになる男も、かつては己の名前に怯えるだけの冴えない二級建築士だった。
安藤研吾、40代。独立したものの仕事はなく、下請けとして「情緒のない真四角な箱」の図面を引き続ける日々。そんな彼が恩師に教えられた座標の先で迷い込んだのは、昭和初期を彷彿とさせる、魔法のない異世界だった。
現代の建築知識、そして一釘一釘を大切にする頑固大工との出会い。 「便利さ」ではなく「住む人の幸せ」を求めて、研吾は廃村に時計台を建て、水路を拓き、人々の暮らしを再生していく。
異世界で「百年の計」を学んだ研吾が現実世界に戻ったとき、その設計は現代の建築界をも揺るがし始める。 これは、一人の男が仕事への誇りを取り戻し、本物の「巨匠」へと駆け上がるまでの、ひたむきな再建の記録。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる