RiCE CAkE ODySSEy

心絵マシテ

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難攻不落のサクリファイス

東へ

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過去の出来事を呼び起こす度、私は記憶の旅に出る。
あの時はこうだった、その時はそう思っていた、あの場合はこうすれば良かった――都度、思い返していくことで新しいを得たりする。

旅が好きだ! 旅をしよう! 旅は人を大きくする!
たとえ独りでも怯えるな、踏みとどまるな。
別れは終わりではない、一歩進めば世界はまた広がってゆく。
その先がどうなるのか誰にもわからない。けれどそれは、明日の色はまだ何色にも染まっていないという無限の証。
降り注ぐ陽射しの暖かさ。
香る異国の空気。
こだまする生命の躍動。
心と体を満たす自然の恵み。
すべての五感を研ぎ澄ませたその先に待つのは、未知なる光景、真新しい世界に魂を奮い立たせる自分。
抑えきれない程の胸のときめきが、新たな出会いを導いてくれるはずだ。


「違う……こんなん私の知っている地図じゃない…………そうだよね? モリスン」

地図を持つ手を震わせて使い魔の彼に問う。
村を出立する間際、カシュウさんの粋な罠、グレイデさんから地図を受け取った。
受け取ったは良いんだけど――――まさか、彼女が手書きで作成した物だとは露知らず、地図を開き三秒でそっと閉じた。
地図に載っていたのは三角形を描くように配置された三つの丸。それぞれには村、サクリファ、ベルドガンドと記載された大変、簡潔簡素なもの。
村の位置からしてサクリファイスは北東の位置するはずだ……これで方角すら違ったら割とガチでブチギレてもいいと思う。

『お、落ち着いてくださいませ。萌知様、アーカイブス内にあるサクリファイス方面のデータは現状不足しておりまして我も正確な場所を算出することが出来ませぬ。やはり、そのゴミ屑に頼るしか……』

「ゴミ!? いくらなんでも、それは……神頼み? 村で調達した食料で何日持つかなぁ? ハハッ」

『も、萌知様! そう悲観的になる必要はありませんぞ。このゴ……地図、見方を変えれば珍妙、謎めいており宝探しの地図にも見えますぞ!』

卒倒しそうなる私を元気づける為に、優秀な使い魔は色々と気遣ってくれる。
この優しさに、ついつい甘えてしまいそうなる。
けれど、モリスンが悪魔であることは無視できない問題だ。
どこからどこまでが本音なのか? 何が本当の事なのか? 多分、は一切合切、明かしてはいない。
素性にしてもそうだ、私がそう考えているだけでモリスンの口から身の上話を聞いたことは一度もなかった。
これには、召喚してまだ日がそう経っていないというのも理由としてあるのだけど……。

「うん! 道端でウダウダしてても駄目だね。とりあえず、行動あるのみ! そうすりゃ、何とかなるさ」

流石さすがですな。貴女様ほどという言葉が似あうレディを、このモリスン存じません』

こ、コイツぅ……絶対、私の事を雑にあしらっておる。

「飛び立て! 物干し竿!!」

ディザスターワーウルフ戦でも大活躍だった、アイアンロッドに浮力の魔力を込める。
というか……あれだけ酷使したのにほぼ無傷なのは、魔力に対する浸透性が優れている証拠だ。
高純度の魔力を通せる媒体というのは、それだけで魔法による強化の恩恵を受けることができる。
これは武器にとっては非常に強みとなる。

浮遊する、ソレの先端部分に魔力を練り上げ生み出した風の糸、空糸を束にして巻きつける。
すると、あら不思議~空飛ぶのほうき完成だ。
早速、腰掛けて試運転だと意気込む私、エアーブラストの威力調整も慣れたものだ。
いきなり加速するのではなく、徐々に速度を出していけるぐらいには上達した。

『ほほう~これは、気分いいものですな』

緑の絨毯じゅうたん。そのすぐ上を、箒は風をきって滑走してゆく。
モリスンのいう通り、肌をさす風が心地良いし、辺りは森林や山岳地で囲われた絶景が拡がっている。
そのふちを飾るのは、どこまでも続く快晴の空。
これほど、遊覧飛行にうってつけの条件はなかなか揃うものでもない。

「もしかしたら私、けっこう贅沢な一時をすごしているかも?」

ホント、飛行魔法様様だ。
もし、この魔法を編み出していなかったら、私はジップ村から移動しなかっただろう。
なぜならフランクさんの馬車に乗った時、この世界の厳しさを身をもって体感したからだ。
とにかく馬車は無理だった、移動時間自体は長くなかったからどうにかなったけど足回りが悪く揺れが酷い。
重ねて道も舗装されていない剥き出しのモノだから、次第に酔いが回ってくる。
いかに乗り物に強い私でもこれには参った。
しかし、そんなものはまだ序章である。
馬車には乗りつつも、どうしても乗り越えことができなかったジャンダルムがある。
それは、お尻へダイレクトアタックを仕掛けてくる振動という理不尽運動だ。
まったく弁慶の泣き所なんて鼻で笑ってしまうレベルだ。これには屈強なる戦士でもケツから壊されていくのは確実だ。

『も、萌知様ぁああ~!!』

お尻の将来を心配していると、不意にモリスンの悲鳴が頭上から聞こえた。
先刻まで私の肩に止まっていた彼がいない。
ふと、空を見上げると北方へと羽ばたく巨大な怪鳥の姿……。

「わあっ!」怪鳥の足下にモリスンがぶら下がっている!
物理的な接触がなかったことから、おそらく魔法の類を使いモリスンを誘拐したに違いない。
そうこうしている内に私からどんどん遠ざかっていくモリスン達。
それもそうだ! 進んでいる方向が全然違う。
むしろ、私の方から離れていっている流れだ。

「ったく……モリスンを返しなさーい!!」

取り急ぎで方向転換し追走する。
かなりの速度で飛行してしている怪鳥は、もう点のように小さくなって見える。
でも所詮は鳥は鳥だ、ここからの巻き返しは余裕で可能。
なんせ、こちとら加速すれば飛翔体並みの速度で相手に追いつくんだぁあああ――――行き過ぎた!!
あまりに一瞬すぎて怪鳥を追い抜いてしまった……ブレーキをかけようにも、このままだと離れすぎて見失ってしまう。

「空糸・縛鎖っ!!」

離れるのなら、いっそ連行してしまえばいい。網上の魔法糸を解き放ち、鳥の両翼を絡め取った。

「よっしゃ! ゲットだぜぇ~。ん? ああ、わあっ! ちょっ……重い重いっ」

鳥の重量によりガクンと背後が下がっていく。
咄嗟とっさとはいえ糸で絡め取ったのは間違いだった。
翼を押さえられては怪鳥とて落下するしかない。そのことを私は見落としていた。
地上に吸い込まれていく鳥に巻き込まれていくカタチで私も降下していっている。

「そういや絶叫マシン苦手だったっけ、私。下は雑木林、なんとかなるかな」

危機的、状況にも関わらず微塵も恐怖が湧いてこない。塔でも感じたこの感覚……これも彼女が話していた魔性とかいうモノの一端なのだろう。
あれだけ怖かった高所が今は平気だ。
とりあえず縛鎖を解除してみたが、大きくバランスを崩してしまった以上、飛行はできない。
一先ずは、落下をどうにかしないと……。
私は再度、縛鎖を発動させ木々の間に引っ掛け、大き目のハンモックを作った。
狙い通り、風でできた網はしっかりと私の身を受けとめてくれた。

地上に降りるなり怪鳥を近くで発見した。
あれだけドスン! と派手な音を立てていたんだ、どこら辺に落ちたかなんて分かりきっている。
横に倒れているソレを、ロッドで突いてみるも反応はない。
どうやら、地表に叩きつけられた時点で絶命していたみたいだ。
かぎ爪の間を見てため息をつく、そこにモリスンの姿はない。

「モリス――ン!! どこにいるの? 返事して!」
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