RiCE CAkE ODySSEy

心絵マシテ

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難攻不落のサクリファイス

猫の剣士

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おかしい……いくらテレパスで呼び掛けてもモリスンから返事がない。
辺りを探りながらも、私は彼と連絡が途絶えた理由を探っていた。
大まかに考えれば二つ。
私達の魔力回線が何らかの影響を受け妨害されているか。モリスンの媒体であるキメラ人形が部分的に破損したかだ。
後者のほうだったら、見つけるのは相当困難になる。
せめて完全破壊されていたのなら魂の方はアーカイブスに戻ってくれるのだが……。
アーカイブスでも応答がないのだから、モリスンの魂は未だ、この世界に留まっているということになる。
盲点だった、このまま媒体を見つけなければモリスンは行方不明になってしまう。
なんとしても、見つけ出さないと……。
念ために魔力感知もしてみた、けれど近くにそれらしい魔力の反応はない。
もし、ここいらに居ないとすれば怪鳥が落下した最中で、何処か離れた場所に放られたかもしれない。
白樺しらかばに似た木々の合間を移動しながら、私は捜索を続けた。

「どうしよう……エアリアルサーチで広範囲捜索しても微弱な反応だらけで、どれがモリスンのモノか見分けがつかない。とりあえず、反応が多い方に向かうしか――」

雑木林の奥に、きらめく無数の光が漂っていた。
魔物かと、一瞬身構えてしまったが、よくよく見れば水面が陽射しに照らされ光っているだけだ。
湖だ! 雑木林の向こう側には名も知れない綺麗な湖が佇んでいる。
その美しい景色についつい魅了され、私は自然と湖畔に向かっていた。
水中まで透けて見える澄んだ水面は鏡のように周囲の景色を映している。
ひんやりとした空気と人気のない静けさ。
まさに癒しの空間、避暑地にはこれ以上はないほど、うってつけの場所だ。

ブッ!! 近場から聞き覚えのある嫌な音が聞こえた。
せっかく、侘び寂びに浸っていたのに全部台無しだ。
誰だ! こんな大自然に真っ只中で屁をこく奴は――!?

それは何とも形容し難い姿をしていた……。
休日、リビングのソファーでくつろぐお父さんも真っ青になるほど、ケツをかきながら地べたに寝そべっている人? みたいのがいた。
軽鎧を身に着けているところから冒険者なのだろうか? 気になるところであるも、それ以上に注目しなければならないところがある。
驚く事に、ソイツの頭部は人のものではなく、我々が良く知る動物のモノになっていた。
獣人だったら、受け入れられたかもしれない。
、だとしてもナックみたいな前例がある。
だが、ソイツはどれにも該当しない偽物だ! 明らかに奴の頭部は、猫を模した兜になっている。
一体、どういうコンセプトでその恰好をチョイスしたのか?
私の関与するところではなくとも、これだけは言わせて欲しい。

この不審者め――――

何の気なしに周囲を見渡す、目の前にいるのが怪しすぎて誰かの罠ではないと疑ってしまう。
どうやら、誰かに見張られているという訳でもなさそうだ。
そうなると、湖のほとりに今いるのは、コレと私だけという事になる……それはそれで気不味いような――
どうする、このままやりすご――――

「人の背後でブツクサ言ってないで、早くしろや!!」

「うわっあああ!!」

あれこれと考えを巡らせていると猫の人が突然、私の方を振り向きキレ始めた。
よく分からないけど、私が声をかけてくるのを今か今かとスタンバっていたけど、なかなか来ないから我慢できなくなったんだと思う。
というか……人って言ったよね? 素直に人類と認めてもいいのだろうか?

「さっきから熱い視線を送って来やがって、何だ? 借金の催促か!?」

「いえいえ、私はただの通りすがりですよ」

「てめーら、それで何度、俺をだまくらかしてきたんだよ! もうー、その手は喰らわんぞ」

「ところで……それ、美味しい?」

傲岸不遜ごうがんふそんというか傲慢無礼というのか、依然として地面に寝転がる猫。
その口元から雑草が顔を出しているのに私は気づいてしまった。
間違いない、彼は草の根を食べている。貪欲に己が飢えをしのぐため、とりあえず食べられそうなモノを貪っていたんだ。
そこまでしなけばならない理由があったとでもいうのか!?

「お前……美味いわけねぇ―――よ!! 馬鹿か!! ただ、青臭いだけだろっ。そんなん食べなくても分かる……まぁ、俺は食っているけどな」

「食料がつきたんですか? なら、近くの村や街で補給したほうが……」

「だああああっ! 金があれば、とっくにそうしているわ!!」

「大変ですね。実は私、使い魔のキメラを探してまして。怪鳥と一緒に落下した際にどこか遠くへ飛ばされたんだと思うんですけど……見かけませんでした?」

「知らねぇ。つーか、金の話になった途端に話題をそらしただろう?」

「さあ、どうでしょう? では、私は先を急ぐので」

颯爽とその場から退散する私。
早くも本能が警告を告げている、コイツに深く関わるの危険だと。
いち早く、離脱を試みても、もう手遅れだった。
黒のローブのそでを掴んだまま猫がニンマリと笑っている。
気味の悪い兜面だ、装備者の心境の変化に合わせ表情が変わっている。
これも魔道具の一種なのだろうか?
装備者のステータスを探られないよう鑑定阻害の祝福が施してあるみたいだけど。

「今、怪鳥っつたよな? さっきの轟音……そういう事か! おい! どこに落ちた!?」

「えっ? ここから、すぐ近くの雑木林の中だけど? ちょっと! 待ってよ~」

ようやく立ち上がるなり猫の人は、脇目もふらず雑木林へ突っ走っていった。
はっきり、申し上げて追いかける必要は全然ない。
しかし、その奇行に何かしらの意味があったのなら、うかうかと見過ごすのは愚かでしかない。

「やはぁあ――!! これで当分は食ぶちに困らないぜぇ――!」

私が愚かでした。
怪鳥の元にたどり着くなり、猫はナイフを取り出し体毛をそぎ落としていく。
解体する気、満々だ。
ずいぶんと手慣れたナイフ捌きで内臓を傷つけないように取り出し、血抜きもしっかりとしている。

「真水が欲しいな。お前さん、魔法使いだろ? 水属性魔法は使えるか?」

「使えるけど、やっぱりこのローブ姿だと如何にもだよね」

「知らん、魔法とか関係なくローブを着ている奴はいるからな。ただ、そんなヒラヒラした珍妙な恰好しているのは転移者の奴らぐらいだからな。アイツら大抵、魔法が使えるんだよ」

「て、転移者!? この世界ってもしかすると、転移者が何人かいるの?」

「やはり転移者か……いや、お前さんは少し違うか」

「どういう――」

「そうそう、水はこれに並々と入れてくれ」

この世界には自分以外の転移者がいる。その一言だけで気持ちが瞬時に高まった。
もし他に転移した者がいたとすれば、私達の世界に帰還する方法を知っている人がいるかもしれない。
そんな希望が見いだせるとすれば、今すぐにでも事実かどうか、その是非を問いておきたい。

けれど、そうはならなかった……。
答えると都合が悪いことがあるのか? 彼に、より詳しい説明を求めても言葉をにごすか、適当に相槌をうつかのどちらかだ。
せっかく、水を出してやったのにこれじゃ不公平だ。
そう憤りを感じる私を見て猫の人がやれやれと言わんばかりに呟いた。

「そういえや、さっきツレを探しているって言っていたよな?」

「うん、キメラの人形。使い魔の魂を込めたのなんだけど、念話が途絶えたままなんだ」

「へぇー、召喚術とかいう奴か。あんま、期待されても困るがソイツを探すのは何とかできるかもしれないぞ」

「ホントーに!? 可能なら是非ともお願いしたいんだけど!」

「んじゃ、まずはお前の匂いを嗅がせてくれ」

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