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禁反魂の法理
唐揚げ日和
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「ちょっと! ここまで来て、どういう事なの!?」
「いや、な。お前さんだって嫌だろうー、こんな魔物の巣窟」
「あ、あのー」
「だから、私一人でも行くって言ってるのよ」
「アホな事抜かすな! 一人であの城に辿りつけるわけないのは明白だ」
「えーと……」
オルトロス討伐直後、これからどう行動を起こすのか? お互いに話し合う事とした。
私としては、皇帝やディングリングの直近の行動が気がかりだし、ダンジョンコアの秘密も訊きださないといけない。
さらにモリスンを見つけ出す事ができる能力を持った占星術師が、ここサクリファイス内にいると知った今、この先を進まない道理は一切ない。
その事を踏まえ、私は二人にジップ村での出来事やここに来た本当の目的を包み隠さず全部、打ち明けた。
なのに……この猫は臆病風に吹かれたのか、引き返そうと言ってきた。
バーナード一人で帰るのなら、私も文句はない。
むしろ、短い間にここまで協力してくれたんだ――感謝しかない。
ところが、彼は私まで連れ帰ろうとしている。
理由を聞いてもはぐらかすだけで当然、納得なんていかない。
「まあまあ、お二人とも落ち着いて。ここは一旦、お茶にしましょう!」
トルテもトルテだ。
中立の立場なのはともかく、彼女も何かを隠している。
今は元に戻ったけれどグリッドアーツを使用していた時の豹変ぶり……あからさまに何かがある。
ブオォ――ン! ブォオ――ン! 傍から法螺貝を吹くような、けたたましい音が鳴った。
「やべっ……腹の虫が泣いてら。そういや、昼まだだったよな」
バーナードだった……彼は人間ではなく怪異の類ではないのかと疑いたくなってきた。
「じゃあ、この着火剤でも食べたら?」
私は笑顔で黒い塊を差し出した。
これは還らずの森で入手した木炭のようで実はマナの結晶、火にくべると非常によい火力を提供してくれる。
皮肉混じりで言ってみると彼は「おおっ……」と感嘆のうめきを上げ結晶を手に取った。
「うわっー、本当に食べるんだ……」
「んなわけあるか! コイツはカルブンクロスっていう鉱石だ! そこいらじゃ、まず手に入らないほど希少で高価な石なんだが……まさか、お前。火にくべていたのか!? う、嘘やろ……」
「だだだって、知らなかったし。そこいら中に落ちていたしぃ」
「と こ ろ でどの辺りで拾ったんですか!? 商会としては是非とも入手経路を知りたいです。もちろん、それなりのお礼はさせていただきますよ。あっ、契約書とかも必要になりますね!」
今までにないぐらいに瞳を輝かせる一人と一匹。
ここまで絵に描いたような守銭奴たちを見て、私は教えていいのか? どうか躊躇っていた。
「そうだ! なら、それを今回の報酬にするってのはどう?」
「私は構わないんですけど、サクリファイス城内に入るんですよね? なら、管理人さんの許可を取らないと。本来なら関係者以外、門をくぐる事さえ禁じられていますが……」
「つーか、門を破壊しちまった件もある。ここでバレたら弁償もん確定だぞ、だったら早々に立ち去った方がいい」
「それが帰ろうとする理由なの? なら尚更、謝りに行かないと! 見知らない土地に来ていきなり犯罪者になりたくないし、ここで引き返してしまっては余計、城の内部に入れなくなる」
「けどよー」
「私もモチさんの意見に賛成です。考えてみてくださいバーナードさん、モチさんが遺跡の正門を魔法球で破壊したのを大勢の人が目撃しています。今、戻ったしても警吏に取り押さえられてしまいますよ 」
「ぐぬぬっ、俺達はすでに詰んでいるのかよ……ああ! クソ分かったよー、俺にもちゃんと取り分寄こせよ」
「じゃあ、それで決定ね! 私もお腹すいちゃった、お昼にしよっか」
仲間の了解を得て、私はパンッと両手を打ち鳴らした。
早速、調理に取り掛かる。
三人分を作らないとだが、トルテが手伝ってくれるというので大助かりだ。
普段、実家で家事を手伝っているという彼女は、非常に手際がいい。
テキパキと野菜を刻み、スープを作っていく。
バーナードはと言うと――
「な、なんだよ? 背後からすんげぇー視線を感じるんだが……」
期待しない方がいい。彼は彼で忙しいようだ、先ほどの戦いで血糊がついた小太刀を洗って砥石で研いでいる。
「さて、私もやりますか!」
取り出したるは先日、狩った? ホロホロ鳥の肉。
それを適度なサイズに切り分け、私が手作りした特製配合スパイスを振り掛け、馴染ませるように肉をもみ込んでいく。
スパイスはどこで手に入れたかですって?
それは回復薬の調合で失敗すればいくらでも出せるから……まぁ、いくら頑張っても回復薬は一つもできなかったんですけどね。
適性がないったら、ほんとね……もう。
不幸中の幸い、七転八倒、スパイスが手に入ったのは救いでした。
これを上手く活用せず、ワイルドハンターの愛読者は語れない。
そして、なんと驚くことなかれ! この世界には、コレ! 小麦粉があるのさ~。
「モチさん、どんな料理を作っているんですか!?」
「ふふ~ん、こんな晴れた日はやっぱ、コレでしょ!!」
「めっさ……空模様が怪しいんですけど」
たとえトルテに突っ込まれても、私はもう止まれない。
しばらく、休ませておいた肉に小麦粉と何かそれっぽい粉を混ぜたモノをまぶしていく。
あとはジップ村特産の植物油を熱して、適温で一気に攻めていく。
飛び跳ねてくる、利かん坊も神眼にかかればチョロいものよ。
最早、私には油攻撃は効かない。
さあ! 姿を見せるのが良い。
出でよ、スパイシーチキン唐揚げ――
「フフッフ、ハハッハハハ――!!」
「おい……やべぇーよ。アイツ、トリップしてんぞ」
「魔法の実験みたいになちゃってますね……」
いやー、ホント―揚げるのって気分爽快だわ~。
若干、脱線したけれど、唐揚げ自体の出来栄えは上々だった。
二人にも評判はよく「ウメェー!!」「美味しい!!」を連呼していた。
聞くところによると、この世界で油で揚げるという料理はなかなか珍しいそうだ。
どうやら、宗教関連の影響らしい。詳しくは訊かなかったけれど、別に禁止されているというわけでもないので、別段気に留める必要はないとのこと。
「いやー、食った食った」
昼食後、マスクの口元をテカテカと光らせて満足気に鼻歌を口ずさむ猫。
最初から疑問に感じていた。あの状態でよく食事が摂れるなと……疲れるから外せば? と言っても彼は酷く嫌がる。
当然、無理強いするつもりもないし、詮索する気もないから本人の意思を尊重するけど……気にならないと言えば嘘になる。
でも、今はもっと気にする事がある。
正門でのキャンプを終わらせると、私たちは遺跡の管理人と占星術師に会う為に行動を開始した。
門は開きっぱなしの状態だったので、内部の様子は最初から目にすることができた。
そこは、静寂につつまれた盛者必衰の世界――古の廃都
生命の息吹を一切感じられず、朽ち果てた建屋は原型を保てず崩れ落ちている。
神殿を支えていたと思われる石柱には、細やかな幾何学模様が多数、刻まれていて当時の建築技術レベルの高さを垣間見ることができる。
取り敢えず、瘴気は発生していないようだ。
ならば、観光客の立ち入りを禁じているのは、遺跡の状態を保つためなんだろうな。
付近に聖域があるような気配はないし、あるのなら遺跡の状態はここまで劣化しないはずだ。
トルテの話によると管理人は遺跡の奥に管理部屋を構えているらしい。
あらかたの場所が特定できるのであれば、わざわざエアリアルサーチを発動させる必要もないか。
「いや、な。お前さんだって嫌だろうー、こんな魔物の巣窟」
「あ、あのー」
「だから、私一人でも行くって言ってるのよ」
「アホな事抜かすな! 一人であの城に辿りつけるわけないのは明白だ」
「えーと……」
オルトロス討伐直後、これからどう行動を起こすのか? お互いに話し合う事とした。
私としては、皇帝やディングリングの直近の行動が気がかりだし、ダンジョンコアの秘密も訊きださないといけない。
さらにモリスンを見つけ出す事ができる能力を持った占星術師が、ここサクリファイス内にいると知った今、この先を進まない道理は一切ない。
その事を踏まえ、私は二人にジップ村での出来事やここに来た本当の目的を包み隠さず全部、打ち明けた。
なのに……この猫は臆病風に吹かれたのか、引き返そうと言ってきた。
バーナード一人で帰るのなら、私も文句はない。
むしろ、短い間にここまで協力してくれたんだ――感謝しかない。
ところが、彼は私まで連れ帰ろうとしている。
理由を聞いてもはぐらかすだけで当然、納得なんていかない。
「まあまあ、お二人とも落ち着いて。ここは一旦、お茶にしましょう!」
トルテもトルテだ。
中立の立場なのはともかく、彼女も何かを隠している。
今は元に戻ったけれどグリッドアーツを使用していた時の豹変ぶり……あからさまに何かがある。
ブオォ――ン! ブォオ――ン! 傍から法螺貝を吹くような、けたたましい音が鳴った。
「やべっ……腹の虫が泣いてら。そういや、昼まだだったよな」
バーナードだった……彼は人間ではなく怪異の類ではないのかと疑いたくなってきた。
「じゃあ、この着火剤でも食べたら?」
私は笑顔で黒い塊を差し出した。
これは還らずの森で入手した木炭のようで実はマナの結晶、火にくべると非常によい火力を提供してくれる。
皮肉混じりで言ってみると彼は「おおっ……」と感嘆のうめきを上げ結晶を手に取った。
「うわっー、本当に食べるんだ……」
「んなわけあるか! コイツはカルブンクロスっていう鉱石だ! そこいらじゃ、まず手に入らないほど希少で高価な石なんだが……まさか、お前。火にくべていたのか!? う、嘘やろ……」
「だだだって、知らなかったし。そこいら中に落ちていたしぃ」
「と こ ろ でどの辺りで拾ったんですか!? 商会としては是非とも入手経路を知りたいです。もちろん、それなりのお礼はさせていただきますよ。あっ、契約書とかも必要になりますね!」
今までにないぐらいに瞳を輝かせる一人と一匹。
ここまで絵に描いたような守銭奴たちを見て、私は教えていいのか? どうか躊躇っていた。
「そうだ! なら、それを今回の報酬にするってのはどう?」
「私は構わないんですけど、サクリファイス城内に入るんですよね? なら、管理人さんの許可を取らないと。本来なら関係者以外、門をくぐる事さえ禁じられていますが……」
「つーか、門を破壊しちまった件もある。ここでバレたら弁償もん確定だぞ、だったら早々に立ち去った方がいい」
「それが帰ろうとする理由なの? なら尚更、謝りに行かないと! 見知らない土地に来ていきなり犯罪者になりたくないし、ここで引き返してしまっては余計、城の内部に入れなくなる」
「けどよー」
「私もモチさんの意見に賛成です。考えてみてくださいバーナードさん、モチさんが遺跡の正門を魔法球で破壊したのを大勢の人が目撃しています。今、戻ったしても警吏に取り押さえられてしまいますよ 」
「ぐぬぬっ、俺達はすでに詰んでいるのかよ……ああ! クソ分かったよー、俺にもちゃんと取り分寄こせよ」
「じゃあ、それで決定ね! 私もお腹すいちゃった、お昼にしよっか」
仲間の了解を得て、私はパンッと両手を打ち鳴らした。
早速、調理に取り掛かる。
三人分を作らないとだが、トルテが手伝ってくれるというので大助かりだ。
普段、実家で家事を手伝っているという彼女は、非常に手際がいい。
テキパキと野菜を刻み、スープを作っていく。
バーナードはと言うと――
「な、なんだよ? 背後からすんげぇー視線を感じるんだが……」
期待しない方がいい。彼は彼で忙しいようだ、先ほどの戦いで血糊がついた小太刀を洗って砥石で研いでいる。
「さて、私もやりますか!」
取り出したるは先日、狩った? ホロホロ鳥の肉。
それを適度なサイズに切り分け、私が手作りした特製配合スパイスを振り掛け、馴染ませるように肉をもみ込んでいく。
スパイスはどこで手に入れたかですって?
それは回復薬の調合で失敗すればいくらでも出せるから……まぁ、いくら頑張っても回復薬は一つもできなかったんですけどね。
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不幸中の幸い、七転八倒、スパイスが手に入ったのは救いでした。
これを上手く活用せず、ワイルドハンターの愛読者は語れない。
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「モチさん、どんな料理を作っているんですか!?」
「ふふ~ん、こんな晴れた日はやっぱ、コレでしょ!!」
「めっさ……空模様が怪しいんですけど」
たとえトルテに突っ込まれても、私はもう止まれない。
しばらく、休ませておいた肉に小麦粉と何かそれっぽい粉を混ぜたモノをまぶしていく。
あとはジップ村特産の植物油を熱して、適温で一気に攻めていく。
飛び跳ねてくる、利かん坊も神眼にかかればチョロいものよ。
最早、私には油攻撃は効かない。
さあ! 姿を見せるのが良い。
出でよ、スパイシーチキン唐揚げ――
「フフッフ、ハハッハハハ――!!」
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「魔法の実験みたいになちゃってますね……」
いやー、ホント―揚げるのって気分爽快だわ~。
若干、脱線したけれど、唐揚げ自体の出来栄えは上々だった。
二人にも評判はよく「ウメェー!!」「美味しい!!」を連呼していた。
聞くところによると、この世界で油で揚げるという料理はなかなか珍しいそうだ。
どうやら、宗教関連の影響らしい。詳しくは訊かなかったけれど、別に禁止されているというわけでもないので、別段気に留める必要はないとのこと。
「いやー、食った食った」
昼食後、マスクの口元をテカテカと光らせて満足気に鼻歌を口ずさむ猫。
最初から疑問に感じていた。あの状態でよく食事が摂れるなと……疲れるから外せば? と言っても彼は酷く嫌がる。
当然、無理強いするつもりもないし、詮索する気もないから本人の意思を尊重するけど……気にならないと言えば嘘になる。
でも、今はもっと気にする事がある。
正門でのキャンプを終わらせると、私たちは遺跡の管理人と占星術師に会う為に行動を開始した。
門は開きっぱなしの状態だったので、内部の様子は最初から目にすることができた。
そこは、静寂につつまれた盛者必衰の世界――古の廃都
生命の息吹を一切感じられず、朽ち果てた建屋は原型を保てず崩れ落ちている。
神殿を支えていたと思われる石柱には、細やかな幾何学模様が多数、刻まれていて当時の建築技術レベルの高さを垣間見ることができる。
取り敢えず、瘴気は発生していないようだ。
ならば、観光客の立ち入りを禁じているのは、遺跡の状態を保つためなんだろうな。
付近に聖域があるような気配はないし、あるのなら遺跡の状態はここまで劣化しないはずだ。
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