RiCE CAkE ODySSEy

心絵マシテ

文字の大きさ
56 / 74
禁反魂の法理

唐揚げ日和

しおりを挟む
「ちょっと! ここまで来て、どういう事なの!?」

「いや、な。お前さんだって嫌だろうー、こんな魔物の巣窟」

「あ、あのー」
「だから、私一人でも行くって言ってるのよ」

「アホな事抜かすな! 一人であの城に辿りつけるわけないのは明白だ」
「えーと……」

オルトロス討伐直後、これからどう行動を起こすのか? お互いに話し合う事とした。
私としては、皇帝やディングリングの直近の行動が気がかりだし、ダンジョンコアの秘密も訊きださないといけない。
さらにモリスンを見つけ出す事ができる能力を持った占星術師が、ここサクリファイス内にいると知った今、この先を進まない道理は一切ない。
その事を踏まえ、私は二人にジップ村での出来事やここに来た本当の目的を包み隠さず全部、打ち明けた。
なのに……この猫は臆病風に吹かれたのか、引き返そうと言ってきた。
バーナード一人で帰るのなら、私も文句はない。
むしろ、短い間にここまで協力してくれたんだ――感謝しかない。
ところが、彼は私まで連れ帰ろうとしている。
理由を聞いてもはぐらかすだけで当然、納得なんていかない。

「まあまあ、お二人とも落ち着いて。ここは一旦、お茶にしましょう!」

トルテもトルテだ。
中立の立場なのはともかく、彼女も何かを隠している。
今は元に戻ったけれどグリッドアーツを使用していた時の豹変ぶり……あからさまに何かがある。

ブオォ――ン! ブォオ――ン! 傍から法螺貝を吹くような、けたたましい音が鳴った。

「やべっ……腹の虫が泣いてら。そういや、昼まだだったよな」

バーナードだった……彼は人間ではなく怪異の類ではないのかと疑いたくなってきた。

「じゃあ、この着火剤でも食べたら?」

私は笑顔で黒い塊を差し出した。
これは還らずの森で入手した木炭のようで実はマナの結晶、火にくべると非常によい火力を提供してくれる。
皮肉混じりで言ってみると彼は「おおっ……」と感嘆のうめきを上げ結晶を手に取った。

「うわっー、本当に食べるんだ……」

「んなわけあるか! コイツはカルブンクロスっていう鉱石だ! そこいらじゃ、まず手に入らないほど希少で高価な石なんだが……まさか、お前。火にくべていたのか!? う、嘘やろ……」

「だだだって、知らなかったし。そこいら中に落ちていたしぃ」

「と こ ろ でどの辺りで拾ったんですか!? 商会としては是非とも入手経路を知りたいです。もちろん、それなりのお礼はさせていただきますよ。あっ、契約書とかも必要になりますね!」

今までにないぐらいに瞳を輝かせる一人と一匹。
ここまで絵に描いたような守銭奴たちを見て、私は教えていいのか? どうか躊躇ためらっていた。

「そうだ! なら、それを今回の報酬にするってのはどう?」

「私は構わないんですけど、サクリファイス城内に入るんですよね? なら、管理人さんの許可を取らないと。本来なら関係者以外、門をくぐる事さえ禁じられていますが……」

「つーか、門を破壊しちまった件もある。ここでバレたら弁償もん確定だぞ、だったら早々に立ち去った方がいい」

「それが帰ろうとする理由なの? なら尚更、謝りに行かないと! 見知らない土地に来ていきなり犯罪者になりたくないし、ここで引き返してしまっては余計、城の内部に入れなくなる」

「けどよー」

「私もモチさんの意見に賛成です。考えてみてくださいバーナードさん、モチさんが遺跡の正門を魔法球で破壊したのを大勢の人が目撃しています。今、戻ったしても警吏に取り押さえられてしまいますよ 」

「ぐぬぬっ、俺達はすでに詰んでいるのかよ……ああ! クソ分かったよー、俺にもちゃんと取り分寄こせよ」

「じゃあ、それで決定ね! 私もお腹すいちゃった、お昼にしよっか」

仲間の了解を得て、私はパンッと両手を打ち鳴らした。

早速、調理に取り掛かる。
三人分を作らないとだが、トルテが手伝ってくれるというので大助かりだ。
普段、実家で家事を手伝っているという彼女は、非常に手際がいい。
テキパキと野菜を刻み、スープを作っていく。
バーナードはと言うと――

「な、なんだよ? 背後からすんげぇー視線を感じるんだが……」

期待しない方がいい。彼は彼で忙しいようだ、先ほどの戦いで血糊ちのりがついた小太刀を洗って砥石で研いでいる。

「さて、私もやりますか!」

取り出したるは先日、狩った? ホロホロ鳥の肉。
それを適度なサイズに切り分け、私が手作りした特製配合スパイスを振り掛け、馴染ませるように肉をもみ込んでいく。
スパイスはどこで手に入れたかですって? 
それは回復薬の調合で失敗すればいくらでも出せるから……まぁ、いくら頑張っても回復薬は一つもできなかったんですけどね。
適性がないったら、ほんとね……もう。
不幸中の幸い、七転八倒、スパイスが手に入ったのは救いでした。
これを上手く活用せず、ワイルドハンターの愛読者は語れない。
そして、なんと驚くことなかれ! この世界には、コレ! 小麦粉があるのさ~。

「モチさん、どんな料理を作っているんですか!?」

「ふふ~ん、こんな晴れた日はやっぱ、コレでしょ!!」

「めっさ……空模様が怪しいんですけど」

たとえトルテに突っ込まれても、私はもう止まれない。
しばらく、休ませておいた肉に小麦粉と何かそれっぽい粉を混ぜたモノをまぶしていく。
あとはジップ村特産の植物油を熱して、適温で一気に攻めていく。
飛び跳ねてくる、利かん坊も神眼にかかればチョロいものよ。
最早、私には油攻撃は効かない。
さあ! 姿を見せるのが良い。
出でよ、スパイシーチキン唐揚げ――

「フフッフ、ハハッハハハ――!!」

「おい……やべぇーよ。アイツ、トリップしてんぞ」

「魔法の実験みたいになちゃってますね……」

いやー、ホント―揚げるのって気分爽快だわ~。
若干、脱線したけれど、唐揚げ自体の出来栄えは上々だった。
二人にも評判はよく「ウメェー!!」「美味しい!!」を連呼していた。
聞くところによると、この世界で油で揚げるという料理はなかなか珍しいそうだ。
どうやら、宗教関連の影響らしい。詳しくは訊かなかったけれど、別に禁止されているというわけでもないので、別段気に留める必要はないとのこと。

「いやー、食った食った」

昼食後、マスクの口元をテカテカと光らせて満足気に鼻歌を口ずさむ猫。
最初から疑問に感じていた。あの状態でよく食事が摂れるなと……疲れるから外せば? と言っても彼は酷く嫌がる。
当然、無理強いするつもりもないし、詮索する気もないから本人の意思を尊重するけど……気にならないと言えば嘘になる。
でも、今はもっと気にする事がある。

正門でのキャンプを終わらせると、私たちは遺跡の管理人と占星術師に会う為に行動を開始した。
門は開きっぱなしの状態だったので、内部の様子は最初から目にすることができた。
そこは、静寂につつまれた盛者必衰の世界――
生命の息吹を一切感じられず、朽ち果てた建屋は原型を保てず崩れ落ちている。
神殿を支えていたと思われる石柱には、細やかな幾何学模様が多数、刻まれていて当時の建築技術レベルの高さを垣間かいま見ることができる。
取り敢えず、瘴気は発生していないようだ。
ならば、観光客の立ち入りを禁じているのは、遺跡の状態を保つためなんだろうな。
付近に聖域があるような気配はないし、あるのなら遺跡の状態はここまで劣化しないはずだ。
トルテの話によると管理人は遺跡の奥に管理部屋を構えているらしい。
あらかたの場所が特定できるのであれば、わざわざエアリアルサーチを発動させる必要もないか。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

いつか優しく終わらせてあげるために。

イチイ アキラ
恋愛
 初夜の最中。王子は死んだ。  犯人は誰なのか。  妃となった妹を虐げていた姉か。それとも……。  12話くらいからが本編です。そこに至るまでもじっくりお楽しみください。

短編)どうぞ、勝手に滅んでください。

黑野羊
恋愛
二度も捨てられた聖女です。真実の愛を見つけたので、国は救いません。 あらすじ) 大陸中央にあるルオーゴ王国で、国を守る結界を維持してきた聖女ロザリア。 政略のため王太子と婚約していた彼女は、突如『真の聖女』が現れたとして婚約を破棄され、聖女の座を追われてしまう。さらに、代わりに婚姻しろと命じられた聖騎士からも拒絶され、実家にも見捨てられたロザリアは、『最果ての修道院』へと追放された。 けれど彼女はそこで、地位や栄光、贅沢などとはほど遠い、無条件に寄り添ってくれる『真実の愛』と穏やかな日々を手にいれる。 やがて聖女を失った王国は、崩壊へ向かっていき――。 ーーー ※カクヨム、なろうにも掲載しています

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

冴えない建築家いずれ巨匠へと至る

木工槍鉋
ファンタジー
「建築とは、単なる箱を作ることではない。そこに流れる『時』を設計することだ――」 かつてそう語り、伝説の巨匠と呼ばれることになる男も、かつては己の名前に怯えるだけの冴えない二級建築士だった。 安藤研吾、40代。独立したものの仕事はなく、下請けとして「情緒のない真四角な箱」の図面を引き続ける日々。そんな彼が恩師に教えられた座標の先で迷い込んだのは、昭和初期を彷彿とさせる、魔法のない異世界だった。 現代の建築知識、そして一釘一釘を大切にする頑固大工との出会い。 「便利さ」ではなく「住む人の幸せ」を求めて、研吾は廃村に時計台を建て、水路を拓き、人々の暮らしを再生していく。 異世界で「百年の計」を学んだ研吾が現実世界に戻ったとき、その設計は現代の建築界をも揺るがし始める。 これは、一人の男が仕事への誇りを取り戻し、本物の「巨匠」へと駆け上がるまでの、ひたむきな再建の記録。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

処理中です...