問答無用!でランキングブレイカー!! ースキル、グラビアこそ最強最高ですー

心絵マシテ

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恋するコペルニクス

28話 虚栄心の先にあるのは……

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 人の癖を見抜くのは、何も珍しい能力ではない。
 冒険者という、職業柄、洞察力を鍛える機会はいくらでもある。

 特に、戦闘時にパーティーの前線に立つ者にとっては、必須と言っても過言ではない。
 モンスターの攻撃癖やパターン、心理的動作やイレギュラーな状態。
 それら、すべてを迅速に把握して、対応策を練る。
 これが出来なければ、どれほどランキングが高い強者であろうとも、無事では済まされない。
 反対に、俺のような万年弱者であろうとも対策され講じれれば、なんとかやっていける。

 ワカモトさんに見送られつつも、俺たちはそれぞれ道を歩むこととなった。
 思えば、ここまで来るのに長い時間を要した気もする。

 無論……気のせいなどではない。
 この移動型ダンジョン、星団船では時間の概念が曖昧になる。
 ある場所では時間の流れが加速したり、また別の場所では時間が伸びて遅延する現象も確認されている。
 時間が長く感じるという事は、時間の経過がゆっくりとなっていることを意味する。
 外界では絶対に解消できない時間差というモノをここでは打ち消すことも可能だ。
 もし、敵の時間の流れがここより遅ければ、もしくは聖殿内に時間を加速させる場所があればハンターたちに追いつける。

 すべての通路を一気に調べられないのは、気がかりではある。
 気持ちを切り替えなければと、深く息を吸う。
 不安ばかりが募ってしまう中で、悩んでも嫌な方向に物事をイメージしてしまうだけだ。

 直線に続く、トンネルを抜けると大きな広間に出た。
 今までの自然全開の鍾乳洞ではなく、この場所だけしっかりとした部屋になっていた。
 床には、真っ白なタイルが敷き詰められ、天井まで達している四方の塀が壁としての機能を担っている。
 黄褐色の竜燐が散りばめられた天井の元、部屋の中央部には桃木に囲われた小さな池と石像がある。

 厳粛な空気を滞らせながらも、柔らかな波長を感じる池の周辺は神秘に満ちた癒しの場という印象を受けた。
 それと同時に、明確に浮き出ている違和感がある。
 まるで、俺を警戒し殺気立っている気さえもする。

 中央の石像は、青春を謳歌するように小鳥を片手にのせた吟遊詩人をモチーフにしたモノだった。
 芸術に疎い俺でも、この像の出来栄えがよく分かる。
 髪の毛一本の細部までしっかりと表現され、かなり凝っている。
 近づくと台座に『スケベの象』と銘打ってあった。
 さぞかし、名だたる名工なのだろうと関心するも、目が釘付けになった。

 ここで、違和感の正体に気づいてしまった……像の視線位置がおかしい。
 部屋に入った時、この石像は遠方を眺めていた。
 ところがどうだ。今は、遠方どころか足元の俺をのぞき込んでいる。
 のぞき行為は犯罪だと、すねを叩くと、やはり視線が移動した。

 瞬間、俺の中ですべての謎が一つに繋がった。
 何を謎としていたのか? 謎だが、脳内チャンネルでは一つの映像が作製済みになっている。
 スケベの像――それは覗き見、専門の像。
 石像を装いながら堂々と女子更衣室や女湯をのぞいている。

「おそらく、この眼がカメラとなっていて、撮影した映像を像の製作者が、ニタニタと笑いながら上映しているのだろう。その様子、俺にはハッキリと分かる! なぜなら、この石像がスケベ像であることを包み隠さず告げているのだから」

 完璧だ……また一つ、難解を解いてしまった。
 祝福してくれる人はいないが、それでいい。
 俺は見返りなんて求めない。
 謎を解いたことで世の女性たちが幸せになるのなら、喜んでハンケチにでもなろう。
 ……やけに、朝日が眩しいな。
 ここは、ダンジョンだというのに……わざわざ、俺を祝福するために出張して来てくれたとでもいうのか?

「何をアホなことを抜かしおる!」

 光っていたのは、太陽ではなく俺のスキルブックだった。
 何色だと訊かれたら、夜のラブホ街のネオンの色と答えれば、ファイナルアンサー。
 二度とシャバの空気は吸えないかもしれない……。

「たく、懲りずに次から次へとブツブツと……不審者すぎて背筋がピリピリするわい」

「ミステリアスって……セクスィーだろっ」

「おぇー、誰もミステリアスなんて言っておらぞ。よくて、ミスダラケデスじゃろ、主の場合は! いい加減な推測ばかり立ておって」

「誰が、ミルマスカラスだぁ! 空中殺法なんてできないぞ、俺は」

「誰じゃ!? たまに主が何を言っているのか、サッパリじゃ……」

「まぁ、おろしポン酢ですから」

 妙な沈黙が俺たちの間を支配した。
 話し相手が勝手に現れて、調子に乗っていた部分もある。
 おそらく、もう一歩踏み込んだら、ゴミを見るような視線を浴びるだろう。
 けれど、同じぐらい倫理の境界線を踏み越えたい自分がいる。
 この、もどかしさがエクセレント。
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