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第三話 せん妄の世界

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 しかし、その感覚も夜になると一転してしまう。

 人の気配がなくなり、物音も静かになり、ICUなので当然スマホも所持出来ず、更に時計もなく今が何時かもわからない。

 つまり外界からの刺激が無くなるのだ。

 脳をやられて思考、判断能力が落ちてる上に、外界からの刺激が乏しくなると何が起こるか。あなたは予想出来るだろうか?


……
………

 そう。意識が混濁してしまうのだ。
 初めてそれを実感したのは初日の夜。電気を消された後の話だ。

――――――――――

いきなりだが俺は悟ってしまった。
この世は実は妖怪に支配されている。
人間はそれに気づいていないだけだと。

――――――――――

 上の文章を見てどう思われただろうか?
「なんだこいつ。頭がおかしくなったか?」
 と思っただろう。

 そう。俺も“そう思った“のだ。

 つまり、妖怪の支配を信じる俺と、それを信じない俺の両方が同時に存在しているのである。
 これはいわば脳の認識と知性のズレだ。

 これをきっかけに、脳が伝えてくる訳わからない事を必死に「それは違う!」と否定する、俺の深夜脳内バトルが開始されてしまった。

――さすがICUだ。足元に幽霊が立っているわ――

よく目を凝らして見ろ!何もいない!

――何を言ってる。お前は気づいている筈だ。チラチラこっちを見ている幽霊の存在に――

 めんどくせー!お前黙ってろ!

 もし俺の知性、理性が負けてしまったら、俺はナースコールを押して助けて!と懇願したり、色々と訳わからない事をベラベラ喋る事になるのだろう。

 だから負けるわけにはいかない。

 このような事がずっとでは無いが一晩だけでも数回起こってしまう。
 俺はこのランダムイベントに疲れと、少しの恐怖を感じてしまっていた。

…………

 そして朝がやってくる。

 もっとも、外界を見る窓が無いから、電気がつけられてそう判断するのだが、それでも外界の刺激があるのは嬉しい。

 あの混濁した世界から抜け出せるからだ
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