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第五話 衝突
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それは怒りと痛みで血を吐いているような赤い光。
その光は外に設置していた小屋に当たり、一気に燃え上がって爆発した。
この光は明らかに今までの魔法とは違う。まったく新しい力だ。
「やったぞ大成功だ! これで私の野望も達成される!」
「おめでとうございます大臣!」
「引き続きこの学校をご贔屓に……!」
大喜びする大臣や校長先生たち。
技術者たちは興奮しながら今の結果を記録している。
これからは勇者や魔法使いでなくても、マジックパワーを使わなくとも、光を放つ事が出来るようになるのだろうか。
世界が変わるという事はこういう事なのだろうか。
「……」
僕たちが歌う事をやめてしまっても、兵士はそれを注意する事をしない。
あまりもの光景にみんな呆然としていた。
「キャアアアア!」
その時、一人のクラスメートが音楽箱を見て叫んだ。
箱の中から煙が出ていて、見るからに弱っている。
前は歌が終わっても当分は反応があったのに、既に絶え絶えになっている。
「おい。クリス!」
「嫌だ。嫌だよぉ……」
心配する僕たちをよそに、大人たちはその様子も記録している。
「反応が通常時の20%まで低下しています」
「起動数値を下回っていますので、おそらくもう発射は……」
「なんだ。一発しか撃てないのか! 効率が悪すぎるな」
大臣はそう言いながらも、兵士に指示を出し、大きめの箱を持ってこさせる。
「しかしそれでも構わん。何故なら我々には……」
その箱をひっくり返すと、色や大きさがバラバラなクリスタルが多数出てきた。
「弾 は た く さ ん あ る ん だ」
大臣はそのクリスタルを見ながら満足げな表情を見せる。
「このクリスタルは……」
このクリスタルはよく見ると微かに光を放っている。
びっくり音楽箱で必要なクリスタルが、こんなにあるなんて……
その時、今まで黙っていたガラクタじいさんが叫んだ
「貴様ら、まさかルマルの村に行ってきたのか!」
「クリスタルの伝説は調べさせてもらったよ」
「村の宝とされているクリスタルをこんなにたくさん渡す訳がない。もしや……!」
「なぁに、少し脅したら快く譲ってくれたよ」
「ふざけるなぁ!!」
おじいさんは大臣に飛び掛かろうとするが、すぐに近くの兵士に止められる。
「貴様らは何をやっているのかわかっているのか! このクリスタルは鉱物ではない。心を持つ立派な生き物、神様かもしれないんじゃぞ!」
おじいさんが言うには、こことは全く違う別の世界の生き物ではないかとの事だった。
「何故、歌によって色や光り方が変わるか考えた事あるか!? 少しでもクリスタルの心を考えた事があるのか!?」
「クリスタルの心、だって? 笑わせるじゃないか!」
「ここにいる子供たちはクリスタルが笑う事を知っておる。一緒に遊ぼうという気持ちが歌になり、クリスタルもそれに反応して一緒に遊んでいたんじゃ」
「そんなおとぎ話みたいな事、ある訳がない!」
「数値でしかクリスタルを見ていない貴様らには、それに気づかなかったのか!」
おじいさんの言う事は当たっていると思う。
びっくり音楽箱は、いや中のクリスは、僕たちの友達だったんだ。
「……ネオ君」
ガラクタじいさんは取り押さえられながら、僕に話しかけてきた。
「おじいさん……!」
「弱っているクリスタルに、いや友達にいつもの歌を歌ってくれないかの」
「えっ」
「このままだと消えてしまう。その前に元気に……」
「そんな事する必要は無い! 早くクリスタルを交換して次のテストを進めるんだ!」
大臣はそう言って僕たちを邪魔しようとした。
兵隊が僕たちの目の前に立ち、歌わせないぞと脅してきた。
しかし……
「わかった、おじいさん。みんな、歌おう!」
『うんっ!』
クラスのみんなも同じ気持ちだった。僕たちは強制されたとはいえ、クリスにひどい事をしてしまった。
謝りたい。謝って、元気になって、また遊びたい。
そう強く思ったんだ。
* * *
そして僕たちは歌う。
クリスへ「ごめんなさい」という気持ちを込めて。
これは皆でいっぱい遊んだ後、ひと休止として良く歌う歌だ。
僕たちは知っている。いや感じていた。
この静かな歌は、クリスにとって一番の癒しの歌なんだと。
クリスは僕たちの歌声に反応して、弱々しいながら光を発する。
さっきの痛々しい赤色ではなく、穏やかな青色。クリスタルと同じ青色だ。
「なんだこの発光パターンは!」
「初めてみる波長です! 詳細不明、機械に反応しません!」
「いったい何なんだ……!」
科学者たちはクリスの反応に戸惑っている。
これでハッキリわかった。こいつらはクリスをエネルギーとしか見ていない。吸い取る事しか考えてない事を。
少しずつクリスに光が戻っていく。歌にあわせてゆっくり光が波打つ。
それを見て僕らはホッとしたが、それも大臣の一言で吹き飛ばされてしまう。
「そんなくだらない歌やめろ! お前等が歌うのはさっきの奴だ!」
僕たちはそれでも歌うのを止めない。そして大人たちに言ってやった。
「僕たちはもうあんな歌は歌いません! これ以上大事な友達を苦しめるなんてもう嫌だ!」
「言わせておけば……! このガキを捕まえて今すぐ牢屋に叩き込め! この私に歯向かった事を後悔させてやる!」
大臣はそう兵隊に命令したけど、兵士は戸惑っているようだ。
脅すのが仕事で、実際に子供に手をかける事までは考えていなかったのだろう。
「ぐぬぬ……! 腑抜けどもめ~!」
大臣が激しく怒っている中、ガラクタじいさんが取り押さえている兵士を振りほどき、音楽箱の所に向かって走る。
「おじいさん!」
「ネオ君すまなかった! これが君とクリスへのワシの…… 償いじゃ!」
おじいさんは、音楽箱に取り付けられているコードを引っこ抜き、箱からクリスタルが入っているガラス部分を取り出す。
クリスタルは特殊な聖水の中に入っていて、特殊なガラス箱の中で揺れていた。
「何をする! このじじい!」
大臣はおじいさんの所に詰め寄ると、力いっぱい殴りつけた。
おじいさんが手に持っていたガラス箱は、他のクリスタルがある所に混ざるように転がっていった。
「ぐあぁっ!」
「おじいさん!」
口から血を流しているおじいさんを兵士達がもう一度取り押さえる。
今度は数人がかりで完全に取り抑えられている。もうピクリとも動けない。
「ワ、ワシは信じておった……」
殴られて、数人に押しつぶされてゼーゼー言いながらも話すのを止めない。
「この光る箱、この世界にいる”神様”の存在がこの街、この国、そしていつか世界中に広まって、世界を歌で包んで幸せに出来ると……」
「……」
「しかし、人間はすぐ利益に結び付けようとする。まさか神様さえ新エネルギーとして利用しようとするとは……っ!」
おじいさんの瞳に涙が溢れてくる。息が苦しいのだろうか、顔色も悪くなっているように見える。
「ネ、ネオ君…… これからもクリスと仲良くしてやってくれ……」
そう言うと、おじいさんは意識を失った。
「おじいさん……!」
「酷すぎる! もう我慢出来ない!」
「もうこんなのは嫌だ!」
「おじいさんを助けるんだ!」
僕たちはこの酷い状況に我慢出来なくなっていた。
もちろん兵士たちは怖いけど、それ以上におじいさんへの仕打ちが我慢出来なかったんだ。
「みんな、危ないからやめなさい!」
「私達大人のいう事を聞きなさい!」
先生たちは僕たちを必死で止めようとする。
しかし、ここまできたらもう止められない。
「もういい! 全員捕まえろ! 続きは牢獄だ!」
ここまで状況が悪化した事で、初めこそ戸惑っていた兵士たちも取り抑えようと身構える。
(もういい。僕たちは全力で戦うまでだ……)
そう覚悟を決めた瞬間、突然音楽室の一角が光りだした。
その光は外に設置していた小屋に当たり、一気に燃え上がって爆発した。
この光は明らかに今までの魔法とは違う。まったく新しい力だ。
「やったぞ大成功だ! これで私の野望も達成される!」
「おめでとうございます大臣!」
「引き続きこの学校をご贔屓に……!」
大喜びする大臣や校長先生たち。
技術者たちは興奮しながら今の結果を記録している。
これからは勇者や魔法使いでなくても、マジックパワーを使わなくとも、光を放つ事が出来るようになるのだろうか。
世界が変わるという事はこういう事なのだろうか。
「……」
僕たちが歌う事をやめてしまっても、兵士はそれを注意する事をしない。
あまりもの光景にみんな呆然としていた。
「キャアアアア!」
その時、一人のクラスメートが音楽箱を見て叫んだ。
箱の中から煙が出ていて、見るからに弱っている。
前は歌が終わっても当分は反応があったのに、既に絶え絶えになっている。
「おい。クリス!」
「嫌だ。嫌だよぉ……」
心配する僕たちをよそに、大人たちはその様子も記録している。
「反応が通常時の20%まで低下しています」
「起動数値を下回っていますので、おそらくもう発射は……」
「なんだ。一発しか撃てないのか! 効率が悪すぎるな」
大臣はそう言いながらも、兵士に指示を出し、大きめの箱を持ってこさせる。
「しかしそれでも構わん。何故なら我々には……」
その箱をひっくり返すと、色や大きさがバラバラなクリスタルが多数出てきた。
「弾 は た く さ ん あ る ん だ」
大臣はそのクリスタルを見ながら満足げな表情を見せる。
「このクリスタルは……」
このクリスタルはよく見ると微かに光を放っている。
びっくり音楽箱で必要なクリスタルが、こんなにあるなんて……
その時、今まで黙っていたガラクタじいさんが叫んだ
「貴様ら、まさかルマルの村に行ってきたのか!」
「クリスタルの伝説は調べさせてもらったよ」
「村の宝とされているクリスタルをこんなにたくさん渡す訳がない。もしや……!」
「なぁに、少し脅したら快く譲ってくれたよ」
「ふざけるなぁ!!」
おじいさんは大臣に飛び掛かろうとするが、すぐに近くの兵士に止められる。
「貴様らは何をやっているのかわかっているのか! このクリスタルは鉱物ではない。心を持つ立派な生き物、神様かもしれないんじゃぞ!」
おじいさんが言うには、こことは全く違う別の世界の生き物ではないかとの事だった。
「何故、歌によって色や光り方が変わるか考えた事あるか!? 少しでもクリスタルの心を考えた事があるのか!?」
「クリスタルの心、だって? 笑わせるじゃないか!」
「ここにいる子供たちはクリスタルが笑う事を知っておる。一緒に遊ぼうという気持ちが歌になり、クリスタルもそれに反応して一緒に遊んでいたんじゃ」
「そんなおとぎ話みたいな事、ある訳がない!」
「数値でしかクリスタルを見ていない貴様らには、それに気づかなかったのか!」
おじいさんの言う事は当たっていると思う。
びっくり音楽箱は、いや中のクリスは、僕たちの友達だったんだ。
「……ネオ君」
ガラクタじいさんは取り押さえられながら、僕に話しかけてきた。
「おじいさん……!」
「弱っているクリスタルに、いや友達にいつもの歌を歌ってくれないかの」
「えっ」
「このままだと消えてしまう。その前に元気に……」
「そんな事する必要は無い! 早くクリスタルを交換して次のテストを進めるんだ!」
大臣はそう言って僕たちを邪魔しようとした。
兵隊が僕たちの目の前に立ち、歌わせないぞと脅してきた。
しかし……
「わかった、おじいさん。みんな、歌おう!」
『うんっ!』
クラスのみんなも同じ気持ちだった。僕たちは強制されたとはいえ、クリスにひどい事をしてしまった。
謝りたい。謝って、元気になって、また遊びたい。
そう強く思ったんだ。
* * *
そして僕たちは歌う。
クリスへ「ごめんなさい」という気持ちを込めて。
これは皆でいっぱい遊んだ後、ひと休止として良く歌う歌だ。
僕たちは知っている。いや感じていた。
この静かな歌は、クリスにとって一番の癒しの歌なんだと。
クリスは僕たちの歌声に反応して、弱々しいながら光を発する。
さっきの痛々しい赤色ではなく、穏やかな青色。クリスタルと同じ青色だ。
「なんだこの発光パターンは!」
「初めてみる波長です! 詳細不明、機械に反応しません!」
「いったい何なんだ……!」
科学者たちはクリスの反応に戸惑っている。
これでハッキリわかった。こいつらはクリスをエネルギーとしか見ていない。吸い取る事しか考えてない事を。
少しずつクリスに光が戻っていく。歌にあわせてゆっくり光が波打つ。
それを見て僕らはホッとしたが、それも大臣の一言で吹き飛ばされてしまう。
「そんなくだらない歌やめろ! お前等が歌うのはさっきの奴だ!」
僕たちはそれでも歌うのを止めない。そして大人たちに言ってやった。
「僕たちはもうあんな歌は歌いません! これ以上大事な友達を苦しめるなんてもう嫌だ!」
「言わせておけば……! このガキを捕まえて今すぐ牢屋に叩き込め! この私に歯向かった事を後悔させてやる!」
大臣はそう兵隊に命令したけど、兵士は戸惑っているようだ。
脅すのが仕事で、実際に子供に手をかける事までは考えていなかったのだろう。
「ぐぬぬ……! 腑抜けどもめ~!」
大臣が激しく怒っている中、ガラクタじいさんが取り押さえている兵士を振りほどき、音楽箱の所に向かって走る。
「おじいさん!」
「ネオ君すまなかった! これが君とクリスへのワシの…… 償いじゃ!」
おじいさんは、音楽箱に取り付けられているコードを引っこ抜き、箱からクリスタルが入っているガラス部分を取り出す。
クリスタルは特殊な聖水の中に入っていて、特殊なガラス箱の中で揺れていた。
「何をする! このじじい!」
大臣はおじいさんの所に詰め寄ると、力いっぱい殴りつけた。
おじいさんが手に持っていたガラス箱は、他のクリスタルがある所に混ざるように転がっていった。
「ぐあぁっ!」
「おじいさん!」
口から血を流しているおじいさんを兵士達がもう一度取り押さえる。
今度は数人がかりで完全に取り抑えられている。もうピクリとも動けない。
「ワ、ワシは信じておった……」
殴られて、数人に押しつぶされてゼーゼー言いながらも話すのを止めない。
「この光る箱、この世界にいる”神様”の存在がこの街、この国、そしていつか世界中に広まって、世界を歌で包んで幸せに出来ると……」
「……」
「しかし、人間はすぐ利益に結び付けようとする。まさか神様さえ新エネルギーとして利用しようとするとは……っ!」
おじいさんの瞳に涙が溢れてくる。息が苦しいのだろうか、顔色も悪くなっているように見える。
「ネ、ネオ君…… これからもクリスと仲良くしてやってくれ……」
そう言うと、おじいさんは意識を失った。
「おじいさん……!」
「酷すぎる! もう我慢出来ない!」
「もうこんなのは嫌だ!」
「おじいさんを助けるんだ!」
僕たちはこの酷い状況に我慢出来なくなっていた。
もちろん兵士たちは怖いけど、それ以上におじいさんへの仕打ちが我慢出来なかったんだ。
「みんな、危ないからやめなさい!」
「私達大人のいう事を聞きなさい!」
先生たちは僕たちを必死で止めようとする。
しかし、ここまできたらもう止められない。
「もういい! 全員捕まえろ! 続きは牢獄だ!」
ここまで状況が悪化した事で、初めこそ戸惑っていた兵士たちも取り抑えようと身構える。
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