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第四話 カウントダウン
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そして、ついに実際の音楽箱を使ってテストする事になった。
久しぶりにクリスと会えるのは嬉しい。嬉しい筈なのに、悲しい。悔しい。
教室の扉が大きな音を立てて開けられた。
そこには国の大臣と、いつもよりたくさんの兵士さん。技術家らしき人。そして校長先生もニヤニヤしながら一緒に入ってくる。
そして、少し離れた所にガラクタじいさんがいた。
『おじいさんっ!』
僕たちは大きな声をあげる。
1ヵ月会わなかっただけなのに、元気いっぱいの前のおじいさんとは別人に見えた。
僕たちに対しては申し訳ないと謝るような、そして大臣や兵士さんたちには怒りの表情を向ける。
「ハッハッハッ! 折角の晴れ舞台だから、産みの親にも直に見てもらいたくてね!」
大臣は僕たちに向かって笑いながら言った。
「この実験に成功したら、きっと私達に協力したくなるだろう」
「ふざけるな! ワシは決して貴様らに協力なんかせんぞ!」
おじいさんはかなり痩せてるようにも見える。
この1ヵ月、一体どんな目にあったのだろうか。考えるだけで怖くなった。
そして、びっくり音楽箱が音楽室に運ばれてくるが、見た瞬間僕たちは衝撃を受けた。
「おい、なんだよこれは……」
「なんてかわいそうな事を!」
「こ、怖いよぉ」
元の箱はそのままだが、無数のパイプが箱に突き刺さっていて、その周りには無数の機械やコードが取り付けられている。
無理やり取り付けたようなゴツゴツ感がとにかく痛々しい。
「お前が協力してくれたらもっと立派になったのにな」
「貴様……!」
ガラクタじいさんはその大臣の言葉を聞いて、身体をワナワナと震わせる。
もし兵士さんに掴まれていなかったら、今にも殴りかかりそうな勢いだ。
その険悪な雰囲気をよそに準備は着々と進められる。
音楽室の窓を開け、太い筒が外に向けられる。まるで大砲の砲身みたいだ。
準備が完了した後、兵士さんが僕たちの周りを取り囲むように並ぶ。
僕たちを逃がさないように、僕たちを抵抗させないように。
そして大臣が高らかに宣言する。
「さあ、実験の開始だ! 諸君の歌声がこの世界を変えるのだ!」
* * *
その大臣の声が僕たちの恐怖心を煽ってくる。
ついには泣き出したクラスメイトもいる。
その光景を見た校長先生は、優しい声で僕たちをなだめにきた。
「皆さん、勘違いをしてはいけません。これはとても光栄で喜ぶべき事なんですよ」
「あなた達の歌声でこの世界は平和で幸せになれるんです!」
校長先生がどれだけキレイごとを言っても、僕たちの心には響かない。
なら何でこの事を秘密にしているのか。他の国に話したら逮捕するなんて脅迫じゃないか。
そして、平和と言いながら何で最初に作ったのが「武器」なのか。
子供だからとバカにしないで欲しい。大人の汚い考えなんて丸見えだ。
これは、戦う為の道具だ。そして、おそらく戦争に、人殺しに使う道具だ。
「まったく。お前たち子供は大人の言う事を聞けばいいんだ! さもなくばお前たちのお父さんやお母さんがどうなるかわからんぞ……?」
しびれを切らした大臣はついに本性を見せた。
更に大臣が右手を上に上げると兵士さん、いや兵士たちは整列して僕たちを厳しい目で睨みつけてくる。
この国はこんなに酷い事をする国なのか。と悲しくなった。
音楽の先生は、僕たちを必死でなだめながらも歌いましょうと言う。
悲しそう、そして悔しそうに目に涙を浮かべている先生の言葉に、僕たちは言うとおりにしか出来ない。
――そして、悪夢の時間が始まった
変わり果ててしまった”友人”に、絶対聴かせたくない歌を届ける。
そして、その歌を聞いた友人は光を放つ。しかし、光り方が前とは全然違っていた。
(な、なんだよこれは。苦しんでいる……!)
僕たちは歌いながらも、その動揺はクラスに広がっていく。
この前まで見せていた光は自発的に、楽しそうにリズムに合わせながら光っていた。
でも、今日は無理矢理光らさせてるように見える。まるで濡れたタオルを力任せにしぼっているようだ。
きっとクリスにとって、この歌は毒みたいなものなんだろう。痛々しくて見てられない。
「おぉ。貴様らはなんて事を……!」
ガラクタじいさんは力なく座り込んでいる。
箱から発生したいつもより赤い色をした光は、パイプやコードを通して機械に吸われている。
その証拠に、機械からは音や熱が発生してまるで生きてるかのようだ。
「順調に機械は作動中。次のステージに移行可能です」
「想定通り。いやそれ以上のパワーが発生しているぞ! やれ! ワハハハハハッ!」
泣きそうになってる僕たちとは対照的に、大臣は歓喜の声をあげて科学者に指示を出した。
「もう嫌だ。歌いたくない……」
「かわいそうよ。こんなの!」
そう呟くクラスメートたちに向かって兵隊は歌う事を強制する。
これじゃ、僕たちはまるで奴隷みたいじゃないか。
技術者達は淡々と作業を進めながらも、興奮気味に言う。
「発射準備完了しました。カウントダウンに入ります」
「よし! さぁ、見せてくれよお前の力を……!」
窓から外に向けられた砲身に大人たちの視線が集中する。
「5・4・3」
手を合わせ祈るようなポーズをとるおじいさん。
「2・1」
そして、運命の時がやってくる。
「0!」
その瞬間、砲身の先から赤い光が発射された。
久しぶりにクリスと会えるのは嬉しい。嬉しい筈なのに、悲しい。悔しい。
教室の扉が大きな音を立てて開けられた。
そこには国の大臣と、いつもよりたくさんの兵士さん。技術家らしき人。そして校長先生もニヤニヤしながら一緒に入ってくる。
そして、少し離れた所にガラクタじいさんがいた。
『おじいさんっ!』
僕たちは大きな声をあげる。
1ヵ月会わなかっただけなのに、元気いっぱいの前のおじいさんとは別人に見えた。
僕たちに対しては申し訳ないと謝るような、そして大臣や兵士さんたちには怒りの表情を向ける。
「ハッハッハッ! 折角の晴れ舞台だから、産みの親にも直に見てもらいたくてね!」
大臣は僕たちに向かって笑いながら言った。
「この実験に成功したら、きっと私達に協力したくなるだろう」
「ふざけるな! ワシは決して貴様らに協力なんかせんぞ!」
おじいさんはかなり痩せてるようにも見える。
この1ヵ月、一体どんな目にあったのだろうか。考えるだけで怖くなった。
そして、びっくり音楽箱が音楽室に運ばれてくるが、見た瞬間僕たちは衝撃を受けた。
「おい、なんだよこれは……」
「なんてかわいそうな事を!」
「こ、怖いよぉ」
元の箱はそのままだが、無数のパイプが箱に突き刺さっていて、その周りには無数の機械やコードが取り付けられている。
無理やり取り付けたようなゴツゴツ感がとにかく痛々しい。
「お前が協力してくれたらもっと立派になったのにな」
「貴様……!」
ガラクタじいさんはその大臣の言葉を聞いて、身体をワナワナと震わせる。
もし兵士さんに掴まれていなかったら、今にも殴りかかりそうな勢いだ。
その険悪な雰囲気をよそに準備は着々と進められる。
音楽室の窓を開け、太い筒が外に向けられる。まるで大砲の砲身みたいだ。
準備が完了した後、兵士さんが僕たちの周りを取り囲むように並ぶ。
僕たちを逃がさないように、僕たちを抵抗させないように。
そして大臣が高らかに宣言する。
「さあ、実験の開始だ! 諸君の歌声がこの世界を変えるのだ!」
* * *
その大臣の声が僕たちの恐怖心を煽ってくる。
ついには泣き出したクラスメイトもいる。
その光景を見た校長先生は、優しい声で僕たちをなだめにきた。
「皆さん、勘違いをしてはいけません。これはとても光栄で喜ぶべき事なんですよ」
「あなた達の歌声でこの世界は平和で幸せになれるんです!」
校長先生がどれだけキレイごとを言っても、僕たちの心には響かない。
なら何でこの事を秘密にしているのか。他の国に話したら逮捕するなんて脅迫じゃないか。
そして、平和と言いながら何で最初に作ったのが「武器」なのか。
子供だからとバカにしないで欲しい。大人の汚い考えなんて丸見えだ。
これは、戦う為の道具だ。そして、おそらく戦争に、人殺しに使う道具だ。
「まったく。お前たち子供は大人の言う事を聞けばいいんだ! さもなくばお前たちのお父さんやお母さんがどうなるかわからんぞ……?」
しびれを切らした大臣はついに本性を見せた。
更に大臣が右手を上に上げると兵士さん、いや兵士たちは整列して僕たちを厳しい目で睨みつけてくる。
この国はこんなに酷い事をする国なのか。と悲しくなった。
音楽の先生は、僕たちを必死でなだめながらも歌いましょうと言う。
悲しそう、そして悔しそうに目に涙を浮かべている先生の言葉に、僕たちは言うとおりにしか出来ない。
――そして、悪夢の時間が始まった
変わり果ててしまった”友人”に、絶対聴かせたくない歌を届ける。
そして、その歌を聞いた友人は光を放つ。しかし、光り方が前とは全然違っていた。
(な、なんだよこれは。苦しんでいる……!)
僕たちは歌いながらも、その動揺はクラスに広がっていく。
この前まで見せていた光は自発的に、楽しそうにリズムに合わせながら光っていた。
でも、今日は無理矢理光らさせてるように見える。まるで濡れたタオルを力任せにしぼっているようだ。
きっとクリスにとって、この歌は毒みたいなものなんだろう。痛々しくて見てられない。
「おぉ。貴様らはなんて事を……!」
ガラクタじいさんは力なく座り込んでいる。
箱から発生したいつもより赤い色をした光は、パイプやコードを通して機械に吸われている。
その証拠に、機械からは音や熱が発生してまるで生きてるかのようだ。
「順調に機械は作動中。次のステージに移行可能です」
「想定通り。いやそれ以上のパワーが発生しているぞ! やれ! ワハハハハハッ!」
泣きそうになってる僕たちとは対照的に、大臣は歓喜の声をあげて科学者に指示を出した。
「もう嫌だ。歌いたくない……」
「かわいそうよ。こんなの!」
そう呟くクラスメートたちに向かって兵隊は歌う事を強制する。
これじゃ、僕たちはまるで奴隷みたいじゃないか。
技術者達は淡々と作業を進めながらも、興奮気味に言う。
「発射準備完了しました。カウントダウンに入ります」
「よし! さぁ、見せてくれよお前の力を……!」
窓から外に向けられた砲身に大人たちの視線が集中する。
「5・4・3」
手を合わせ祈るようなポーズをとるおじいさん。
「2・1」
そして、運命の時がやってくる。
「0!」
その瞬間、砲身の先から赤い光が発射された。
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