お地蔵さまとなった”爆弾岩”はそっと少女の様子を見ている

TEKKON

文字の大きさ
7 / 7

最終話

しおりを挟む
…………

 これで、終わる。僕の短すぎる生涯も、人間との穏やかな日々も。

 決して人間と交わる事のない精霊として生まれながらも、受肉した事により交流が生まれて、最終的にはこの手で人間を救う事すら出来た。
 そっか。そうなんだ。僕は幸せ者だったんだ。

 でも、トコに会えないのが心残りだし、あの別れ方が最後というのは本当に悲しい。もう一度会いたい。話したい。あの温かい手で触れてほしい。


「トコ…… ごめん」


 そう思った時、どこからか「大丈夫よ」と、巫女様の声が聞こえた気がした。



……
………


ゴゴゴゴゴゴゴ!


 モンスターを森に足止めさせて、村に戻る途中のラヒム達の後ろから今まで見た事のない強烈な光と衝撃、そして激しい振動が遅いかかってきた。

「な、何だ!?」
「うわああああ!!!」
「キャアッ!」

 その衝撃に立つ事すら出来ず、地面に這いつくばる。

「い、一体…… グアッ!!」

 リーダーがその態勢のまま後ろを振り返った瞬間、今度は煙や土砂が襲いかかる。

「これが奴の爆発だってのか!」
「そ、空を見ろよ、オイ」
「あ、あれは……!」
「夜中の夜明け……?」

 夜中だというのにわずかの間、空がほのかに光っているように見えた。この異常現象による恐怖と混乱が人々を包み、モンスターも恐れをなして一目散に逃げ出していく。

「バク、お前はやってくれたんだな」

 ラヒムは想像を遥か超える爆発に驚きはしたものの、特別な恐怖は感じていない。これはバクによって起こされた事である以上、恐れる理由は一切無いのだ。

「本当にありがとう。そして……」

 ラヒムは涙を流しながら黙とうをするようにゆっくりと目を閉じた。


……


 一方、村の方にも同じく強烈な音と衝撃と振動が村を襲う。老朽化していた建物の一部が損壊して飛んできた土砂や破片で怪我する者も多く、あまりもの光景に思わず死を覚悟する者もいた。

 その後も不思議な事は続く。爆発の余波も収まってようやく状況が落ち着いた頃、今度はキラキラとした青い光の欠片が辺りに降り注いだのである。その光景を見た人々はそれぞれ別の印象を抱いた。

「今度は一体なんだ!」
「大丈夫なの!?」
「綺麗。星が降ってくるみたい……」
「……」

 度重なる謎の現象にみんなが動揺している中、トコだけはその光の正体を知っている。製造所の中に避難していたトコは、窓から見えた青い光を見た瞬間、部屋から飛び出して建物の外で立ち尽くす。

「バ、バクちゃあぁぁん!」

 空を見上げるトコの涙は止まらない。

「バクちゃぁぁあん!こんなの嫌だよ。どうしてよ。バクちゃぁぁあああん!!」

 青く美しい光が降り注ぐ幻想的な空の下、一人の少女はずっと泣き続けた。


……
………


”……大丈夫だよ。トコ”


 その時、誰かが”聞こえない声で”少女に話しかけてきた。

「へっ?」

 空から親指大の青いクリスタルが、意思を持ったかのようにトコの近くにゆっくり舞い降りてゆく。

「バクちゃん!」
“トコ!”

 爆発により魔王の呪いから解き放たれた汚れの一切無い清らかなクリスタルは、大好きな少女の手の平に包まれる。


“これからはずっと一緒だね”
「うんっ!」

 他の人には聞こえない声を聞きながら嬉しそうに少女は笑い、クリスタルは月の光を受けて優しく光る。その光はとても喜んでいるように見えた。


……………


 一方、悪夢の夜が明けて、森の様子を目のあたりにした時人々は恐怖していた。たった一体のモンスターにより森の一部が吹き飛んでいたからだ。
 従来の爆弾岩とは比較にならない圧倒的な破壊力を持つモンスターの出現により、今までの戦いが一変するという事を突き付けられている。

「さて、これからどうしようか」

「まずは城に戻って報告しないといけないな」

 リーダーとラヒムは爆発の痕を確認をしながら淡々と話しているが、それは疲れ切った身体を早く休めたいという気持ちが勝っているからだろう。
 20体以上のモンスターによる襲撃という、過去にない戦いに勝利した事はとても大きな意味を持つ。

 しかし、それはあの爆弾岩がいたからだ。もし彼がいなかったら今頃ここはモンスターにより廃墟と化していただろう。そう。バクがいなければ……


 その時。ラヒムの元にトコがやってきて、信じられない事を言いだした。

「パパ!バクちゃんが帰ってきたよ!」

「なんだって!?」

「……ほらっ!」

 トコがゆっくり両手を広げると、そこには青く輝くクリスタルがあった。

「これが、あのバクだって……?」

「うんっ!」

 トコ以外誰も声を聞く事も出来ない、この小さなクリスタルが生きているとは信じがたいが、良く見ると僅かに光り方が時々変わっているのがわかる。おそらく気分や感情でかわるのだろう。

「バクちゃんが『村を救ってくれてありがとう』 だって!」

 トコのその言葉で、バクの話は本当だと確信した。バクはそういう奴なのだと知っているからだ。

 これから世界がどうなっていくのかはまだわからない。しかし、今はただこのルマル村がモンスターの脅威を退けられた事を聖なる柱、いや、バクに感謝しよう。



ー これからもずっと、このルマルの村を見守ってくれますように ー



----- 完 -----



―――――――――
最後まで読んでいただき、ありがとうございました
もし面白い!と思ったなら、お気に入りや感想を
いただけるとこれからの励みになります。

本当にありがとうございました!
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

不幸でしあわせな子どもたち 「しあわせのふうせん」

山口かずなり
絵本
小説 不幸でしあわせな子どもたち スピンオフ作品 ・ ウルが友だちのメロウからもらったのは、 緑色のふうせん だけどウルにとっては、いらないもの いらないものは、誰かにとっては、 ほしいもの。 だけど、気づいて ふうせんの正体に‥。

少年イシュタと夜空の少女 ~死なずの村 エリュシラーナ~

朔雲みう (さくもみう)
児童書・童話
イシュタは病の妹のため、誰も死なない村・エリュシラーナへと旅立つ。そして、夜空のような美しい少女・フェルルと出会い…… 「昔話をしてあげるわ――」 フェルルの口から語られる、村に隠された秘密とは……?  ☆…☆…☆  ※ 大人でも楽しめる児童文学として書きました。明確な記述は避けておりますので、大人になって読み返してみると、また違った風に感じられる……そんな物語かもしれません……♪  ※ イラストは、親友の朝美智晴さまに描いていただきました。

緑色の友達

石河 翠
児童書・童話
むかしむかしあるところに、大きな森に囲まれた小さな村がありました。そこに住む女の子ララは、祭りの前日に不思議な男の子に出会います。ところが男の子にはある秘密があったのです……。 こちらは小説家になろうにも投稿しております。 表紙は、貴様 二太郎様に描いて頂きました。

野良犬ぽちの冒険

KAORUwithAI
児童書・童話
――ぼくの名前、まだおぼえてる? ぽちは、むかし だれかに かわいがられていた犬。 だけど、ひっこしの日に うっかり わすれられてしまって、 気がついたら、ひとりぼっちの「のらいぬ」に なっていた。 やさしい人もいれば、こわい人もいる。 あめの日も、さむい夜も、ぽちは がんばって生きていく。 それでも、ぽちは 思っている。 ──また だれかが「ぽち」ってよんでくれる日が、くるんじゃないかって。 すこし さみしくて、すこし あたたかい、 のらいぬ・ぽちの ぼうけんが はじまります。

まぼろしのミッドナイトスクール

木野もくば
児童書・童話
深夜0時ちょうどに突然あらわれる不思議な学校。そこには、不思議な先生と生徒たちがいました。飼い猫との最後に後悔がある青年……。深い森の中で道に迷う少女……。人間に恋をした水の神さま……。それぞれの道に迷い、そして誰かと誰かの想いがつながったとき、暗闇の空に光る星くずの方から学校のチャイムが鳴り響いてくるのでした。

ノースキャンプの見張り台

こいちろう
児童書・童話
 時代劇で見かけるような、古めかしい木づくりの橋。それを渡ると、向こう岸にノースキャンプがある。アーミーグリーンの北門と、その傍の監視塔。まるで映画村のセットだ。 進駐軍のキャンプ跡。周りを鉄さびた有刺鉄線に囲まれた、まるで要塞みたいな町だった。進駐軍が去ってからは住宅地になって、たくさんの子どもが暮らしていた。  赤茶色にさび付いた監視塔。その下に広がる広っぱは、子どもたちの最高の遊び場だ。見張っているのか、見守っているのか、鉄塔の、あのてっぺんから、いつも誰かに見られているんじゃないか?ユーイチはいつもそんな風に感じていた。

童話短編集

木野もくば
児童書・童話
一話完結の物語をまとめています。

【もふもふ手芸部】あみぐるみ作ってみる、だけのはずが勇者ってなんなの!?

釈 余白(しやく)
児童書・童話
 網浜ナオは勉強もスポーツも中の下で無難にこなす平凡な少年だ。今年はいよいよ最高学年になったのだが過去5年間で100点を取ったことも運動会で1等を取ったこともない。もちろん習字や美術で賞をもらったこともなかった。  しかしそんなナオでも一つだけ特技を持っていた。それは編み物、それもあみぐるみを作らせたらおそらく学校で一番、もちろん家庭科の先生よりもうまく作れることだった。友達がいないわけではないが、人に合わせるのが苦手なナオにとっては一人でできる趣味としてもいい気晴らしになっていた。  そんなナオがあみぐるみのメイキング動画を動画サイトへ投稿したり動画配信を始めたりしているうちに奇妙な場所へ迷い込んだ夢を見る。それは現実とは思えないが夢と言うには不思議な感覚で、沢山のぬいぐるみが暮らす『もふもふの国』という場所だった。  そのもふもふの国で、元同級生の丸川亜矢と出会いもふもふの国が滅亡の危機にあると聞かされる。実はその国の王女だと言う亜美の願いにより、もふもふの国を救うべく、ナオは立ち上がった。

処理中です...