お地蔵さまとなった”爆弾岩”はそっと少女の様子を見ている

TEKKON

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第六話

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「ぬおおおおおぉ!」
「今度は向こうから来る!」
「早く石弾を準備してくれ!」

 一方、ラヒム達は無数に押し寄せてくるモンスター達を上からの投石や罠で動きを封じたり、時には真っ正面から力で抑えて村に入れるのを防いでいた。守るだけなら当分は持ちそうだが、それは敵が人間側の予想外の抵抗で戸惑っているだけだ。

 このままだと突破されるのは時間の問題という事実は変わらない。だから、その事実を変える為に私達は村から外に出る。” 数分だけ森まで後退させる”為に持っている戦力を全て投入するのだ。

 陣地という地の利を捨てて戦うのはとても危険なのはわかりきっているが、私達はやらないといけない。それがバクとの約束なのだから。

「いくぞ!俺達に続け!」

 パーティーは先頭に立って外にいるモンスターに向かって攻撃を仕掛ける。強力な呪文が魔法使いの手から放たれて目の前の中型モンスター数体を吹っ飛ばし、リーダーの剣が大型モンスターの腕を豪快に切り落とす。

「うおおおおお!」

 ラヒム達もその横から現れる無数のモンスターに対して攻撃をしかけていった。


……………


ドドドド……

 最初の花火が上がってから数分が経過して、少しずつこちらに向かって来る足音が大きくなってきた。

「ラヒム、ガンバッテ」

 あれだけの数のモンスターを押し返して、一時的にも大きく後退させるのは並大抵なことでは無い。今、沢山の人間が死力を尽くしてモンスターと戦っている。僕はその決死の行為に答えなければいけない。僕は改めて覚悟を決めた。


……………


 一方、ラヒム達はただがむしゃらにモンスター達に向かって攻撃を繰り返していた。マジックパワーや薬草も一切出し惜しみをしないこの戦い方は、すぐに攻勢限界点を迎えるのはわかっているが、今はただ、ゴリ押しで目の前のモンスターを後退させる事だけを考える。

「もう少しで目的ラインに到達出来る。そうすれば……!」

「右から新たな大型モンスターの集団が!」

「何っ!?」

「予備戦力の投入…… いや、敵のリーダーと直衛モンスターか!」

 このタイミングでの増援は非常にまずい、少しでも攻勢が崩れたら総崩れする可能性すらある。

「どうすれば……!」

 悩むラヒムの元にリーダーがやってきた。

「怯むな。 これが最後の踏ん張りどころだ! 奴らは俺達が何とかする。20秒だけ食い止めてくれ!」

 そう言うと、パーティーは向かってくる新手の前に立ちはだかり、リーダーと魔法使いは長文の呪文詠唱を始めると二人の周りを巨大な魔法陣が包む。

「こ、この呪文は…… まさか伝説の!?」

「これで俺達のマジックパワーはスッカラカンだ。まさか、これを使う羽目になるとはな!」

リーダーと魔法使いが同時に叫ぶ。

『超級電撃天驚弾!』

 その瞬間、二人の腕から強力な雷撃が広範囲に放たれ、敵の援軍を半分無力化する事が出来た。更にこの威力に気圧されたか他のモンスター達も動揺している。

「今だ! 一気に目標ラインまで押し込め!」

 ラヒムはこの機を逃さないと檄を飛ばし、悲鳴を上げる身体にムチを打って更に前進を続けた。


……
………

 そして、激闘の末に大半のモンスターを目標のラインまで後退させる事に成功する。

「火をつけろ!」

 ここで人間とモンスターの間に多量の火薬や引火性の液体を散布して、そこに魔法使いが火球をぶつけ大火災を巻き起こす。
 無論、モンスターをせん滅するほどの量は無く、あくまで足止めを目的としたものであり、更に数分しか持たない一時しのぎだ。しかし、今回はそれで構わない。

「よし、作戦終了だ。バクに合図を送れ!」

 あとはバクに任せてここから一刻も早く退却する事だけを考えよう。これがあいつの望みなのだから。

「……バク。 もっとお前と話をしたかったし、母やトコの今までの話もお前に聞かせてやりたかった。とても残念だ」

 ラヒムは走りながらも流れる涙を抑えきれない。


……………


ドドドドド!


 そうしている内にも音は急速に大きくなり、僕の目でもモンスターの実体が視認出来るようになった。

「アッ!アイツダ!」

 僕はその中に見た事のある大型モンスターを発見した。恐らく指揮をとっているであろうあのモンスターは、間違いなく僕を魔王の城へと運んだ奴だ。

 それを見た瞬間に、身体の中からバキッ!と大きな音がした。 身体中の痛みも赤い光も強くなり、高揚感すら感じ始めている。この初めての違和感、そして恐怖。間違いない。

 “僕の中で何かが蠢いている“

 そうハッキリ認識した瞬間、空に向かっていく無数の光が見えた。そして、それはとても大きな音で鳴り響き、綺麗な夜空に大量の大輪の輪を咲かせてゆく。

「ミンナ……」

 それを見て僕はとても嬉しくなった。予定されていた2回目の合図は1回目と同じく花火一発の筈なのに、実際は数え切れない程の花火が打ちあがった。 これの意味する事はただ一つ。


ありがとう
さようなら


 という人間からの最後のメッセージに他ならない。
 これは最高の"お別れの言葉"だ。

 パラパラと花火が散り、空が元に戻ると同時に、今度は森の一角から出る赤い光が辺りをゆっくり包み始めた。言うまでも無くなくその光は僕の身体から発する怨念の光。広範囲に死を撒き散らす絶望のカウントダウンだ。

 爆発を封じるタイミングは既に過ぎている。ようやく僕の存在を知ったモンスターが、人間側の目論みに気づいてももう遅い。使えない失敗作だと無造作に捨てた爆弾岩、いやボムロックをずっと放置していたお前らの最大の敗因だ。

 これは魔王への“なめるな!” というメッセージだ。人間や僕達精霊を簡単に滅ぼす事が出来ると思ったら大間違いだという事を思い知るがいい。

 身体から赤い光が溢れ出し、クリスタルの美しい身体は醜くドス黒い岩石へ塗り替えられていく。身体が猛烈に熱い。頭が焼き切れそうなくらい痛い。そして心がドス黒く染まっていくのが恐ろしい。 今、僕を動かしているのは怒りと憎しみ。お前らモンスターや魔王への憎悪だ。


 幹部モンスターが僕を睨みつけて「貴様……!」と殺意を込めて呟く。
 その反吐が出るような顔を見ていると段々と口角が上がっていく。おそらく今の僕は魔王の城でボムロックとなった仲間と同じ表情をしているだろう。

 意識が薄れていく。心がドス黒い呪いに包まれていく。そして呪いの底から” 何か”が生まれてくる。この世界すら焼き尽くしてしまいそうな“何か”を。

「……うおおおおおおぉ!」

 もう逃げられないと悟った幹部モンスター達は、大爆発する前に僕を殺そうと一直線に向かってくる。



「オマエヲ、コロス!!」



 最後の力でそう叫んだ瞬間、身体の中で何かが弾けた。そして、それは急速に広がり周りを包んでいく……

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