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第4章 契約世界への挑戦
第244話 夜の語り部屋
しおりを挟む綾香とリゼは、今夜、一つの部屋で寝ることになった。奥まった木造宿の一室。木の軋む音がかすかに響く、壁も床もすべてが素朴な造りだ。家具と呼べるものはベッドが二つと、小さな木製の棚のみ。シャワーを浴びた綾香は、巻物から寝巻きを取り出し、体を拭いた後で身につけた。
白地に小さな椿の花があしらわれた、少女らしい可憐なパジャマ。しかし着てすぐ、胸元のボタンが途中で閉まらなくなる。
「う……。これ、去年仕立ててもらったから、胸元がきついなあ……」
綾香が胸元の布をそっと押さえた瞬間――
「……あっ」
小さな音がして、三つのボタンが地面に落ちた。
カラコロカラン
鼓動がどくん、と強くなるとボタンの転がる音ともに響いた。
「……や、やっぱり、ちょっとサイズが合わないか。胸元があいたままになっちゃうな」
布地を握り締めながら、綾香は呟く。仕方なく胸元を片手で押さえながら寝室へ戻ると、既にベッドに座っていたリゼが目を見開いた。
「……あ、あんた……いいもの持ってるね、とは思ってたけど……とんでもないもの持ってたんだな……」
「そ、そんなに見ないでよ……」
頬を染めながら綾香が身をよじると、パジャマの薄布がさらに形を浮き上がらせる。
「いや、悪い……つい……」
一瞬の沈黙が落ちた。
気まずさを紛らわせるように、二人はそれぞれのベッドに腰を下ろす。
寝具のわずかな沈みが、彼女たちの距離を少しだけ近づけた。
しばらくの静寂のあと、リゼがちらりと綾香の胸元に目をやりながら、ぽつりと口を開く。
「あんた、彼氏とか旦那さんとかいるの?」
「え、ええ!? な、何急に!?」
「え? 変なこと聞いた? 単に気になってさ……」
リゼはそう言って、小さく笑った。彼女の白いパジャマは無地で、年相応に落ち着いていたが、どこか寝起きの少女のような無防備さもあった。
「ちなみに私は婚約者はいるんだけど、天炎の精霊様に会うまでは結婚しないって決めてるんだ」
「ええ!? リゼさん、すごい……」
「まあ、十年同棲してるし、既に夫婦みたいなもんだけどね」
「私は……よくわからないの」
綾香は視線を下げながら、胸元をそっと押さえる。
「好きな人はいるし、その人も私のことを大切に思ってくれているのはわかるんだけど……。その人、色々な事情でたくさんの女性に囲まれていて……時々、私のことなんてどうでもいいのかな、って思うときがあって……」
「ふーん。なんだ、女ったらしか。そういうやつにろくな男はいないよ?きっと今日も何人と寝たとか自慢してるよ」
「そ、そうかな……彼は、そんな女性を自分のステータスのように扱う人ではないと思うけど……彼自身、たくさんの女性に囲まれることに悩んでいるようだし……」
「ふーん。なら、奪ったらいいじゃん」
そう言ってリゼは綾香のはだけた胸元をちらりと見て言う。
「綾香のその武器を使ってさ」
「う、奪おうとは……したんだよ?」
綾香は俯いたまま、かすれるような声で呟いた。その声の小ささに、リゼは思わず身を乗り出す。そして、その顔に浮かぶ微笑は、驚きと……少しの羨望だった。
「……い、意外とやり手なんだね……」
そう言って、リゼはふっと笑った。
その声が宿の静けさに溶けていくころ、二人の距離は、少し縮まっていた。
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