世界の終焉

ぴんくじん

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先祖

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淑やかな雨がアスファルトに同化していく平穏な夜。

しかし、この男の心は平穏とは真逆だった。

「オレは人殺しなのかもしれない。勿論オレが人を殺したわけではないのだが、先祖を辿れば人を殺した人間がいるはずだ。最早それは、オレが人を殺したと同じではないのか」

男は、剣が振り上げられ振り下ろされる武者のような目つきで六畳間を右往左往していたが、はたと膝を打つ。

「そうだ、ホーリー先生の所へ伺おう。ホーリー先生と話せば、何か分かるかもしれない」

ホーリー先生とは、男の恩師であり親同然の存在だった。孤児院の前で無造作に捨てられていた男を保護し傅いた。

「孤児院の電話番号は...あったこれだ。011...」

雨が淑やかさを失いつつあった。まるで男の行動を制止させようとしているように。


翌日、男は孤児院の前にいた。茅葺屋根の二階建て古民家風。20坪程の庭が隣接しており、子供たちが走り回っている。

男は遣り戸をノックした。ガシャガシャとやかましい音の後に"開いているから入りなさい"の声があったので歩を進める。

「お久しぶりです。ホーリー先生」

玄関を入り、左横にある階段の中段で、笑顔を浮かべているホーリー先生に男は挨拶をした。

外観はクラシックだが、内観はモダンである。

「お元気そうですね。急に電話をかけてきて、何かあったのではないかと心配しましたよ」

「すいません。聞いていただきたいお話がありまして」

「わかりました。こちらへいらっしゃい」

階段を上っていくホーリー先生を追いかける。

二階には三つ部屋があり、一番奥にある金色のドアの部屋がホーリー先生の部屋だ。

子供の頃は、妖しい雰囲気を醸し出す金色のドアに魅せられ、何度も近づいたが、その度にホーリー先生にこっぴどく怒られた。

「入るのは初めてですよね。どうぞお入り」

妖しい金色のドアが妖しい音を立て開く。

「それで、お話というのは」

中はミニ図書館であった。九畳程の空間を囲むように本棚が配置されており、本がびっしりと詰まっている。その中心の僅かなスペースに机と椅子があり、ホーリー先生は椅子に腰をかける。

「もしかして先祖についてではありませんか」

「どうして分かったのですか」

「そうですか。私は実は研究者なのです。研究によって、親に捨てられた子供は、先祖に思いを馳せる傾向にあることがわかりました」

「研究者だったのですか。それでは僕もそれで...」

「あなたは違いますよ。自分の頭の上を触ってみなさい」

男は自分の頭の上に手を伸ばし、ハッとした。ヌメッとした棒状のものが...
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