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本編 燦聖教編
アルビノ
しおりを挟む「おっお前は……シファじゃないか!何があったんだよ!」
獣人族のリーダー、アレクが倒れている獣人に駆け寄る。
知り合いなのか?
名前はさっき走ってる時にお互い名前を教えあった。
「なぁパール?一体何があったんだ?」
「それがじゃのう……」
⭐︎★⭐︎★⭐︎★⭐︎
ティーゴが異空間に行った時まで時は遡り……
「奥の部屋から弱っておる獣人達の気配がするのだ!」
「そうじゃのう?」
銀太とパールは司祭達が現れた扉の奥から獣人達の気配を感じ取る。
「はよう案内せい!」
「ヒィッ!」
素っ裸のダナ司祭とダラァー侯爵は震えながら歩いて行く。
「ノロノロ歩いてないで走りなさいよ!」
バリバリッ
三号が二人の頭に雷を落とす。
「「ギャァ!」」
もう二人の頭は焼け焦げて髪が一本もない……
大急ぎで二人は走って行く。
階段を駆け上がり大きな扉を開けると……贅沢極まりない広い部屋があった。
装飾品全て高そうであるが、下品で趣味の悪さが際立つ。
「これは……お主の部屋か?」
『趣味悪りーな……』
パール達が部屋を見ていると……!
『ちょっと!コッチに獣人達が……!』
部屋の奥にまだ小部屋があったらしい。
三号が中に居た獣人達を見つける。
パールが三号の所に駆け寄ると……!
目の前にいたのは裸で手足を切断され生き絶えていた獣人達。数十人はいるだろう。
「なっ……何て惨い……これが人のする事か?」
余りの酷さにパールは目を覆う。
『この子はまだ生きているわ!』
三号が奥で一人だけ特別な長い鎖を足につけて、座り込んでいる獣人を見つけた。
この獣人の手足は切断されてはいなかった。
獣人を縛っている鎖は、魔法無効の魔石が埋め込まれ、簡単には切断出来そうにない。
「ふんっこの程度の魔法無効でワシの魔法が無力化出来る訳ないじゃろ!」
パキンッ
パールは簡単に鎖を外した。
獣人女性は裸なので、パールが高級な生地のカーテンを破り獣人の女性を包んだ。
流石に皆動物姿なので三号が人化し、女性を抱き抱え部屋から出て来た。
《リザレクション》
三号は抱き抱えながら魔法を放つ。
すると……
獣人の女性が目を開けたその時……前に立っていた裸の司祭と目があった。
イャァァァァァァ!
獣人族の女性は叫び暴れ三号から離れた。
「ーーなんで!私は生きているの⁈やっと……やっと死ねると思ったのに!」
『大丈夫?落ち着いて?』
三号が心配そうに獣人の女性に話しかける。
「ねえっ!あなたお願いよ!私を……殺して!」
『なっ何を言って⁉︎』
「こんな汚い体!このまま生きていてもアイツに汚されるだけ!
やっと……あの地獄から逃れられると思ったのに!」
『あの糞司祭が貴女に何かしたの?』
「そうよ!あいつは私の体を毎晩汚し、子が出来たら困るからと子供を産めない体にされた!
もう女としての価値もない。
私は獣人で珍しいアルビノだからと、ずっと生かされていた。
他の獣人は手足を切断され、ろくに治療もされないから死んで行く……それをずっと私は横で見ていた!
泣き叫ぶ声!恨み!悲鳴!
でも私だけは死なない!
あんなやつのオモチャだ!
だからご飯を食べななかった!
やっと……死ねると思ったのに!」
『頑張ったんだね……エライよ。もう頑張らなくて良いからね?』
三号が獣人を抱きしめた。
「ありがとう……早く殺して……」
パールは魔法を使い獣人の女性を眠らせた。
『お前達は私が知った人間の中でも一番屑だ!』
三号は怒りダナ司祭とダラァー侯爵を切り裂いた!
⭐︎★⭐︎★⭐︎★⭐︎
「そんな事があったのか……いくら何でも酷すぎる。コイツらは獣人達を何だと思ってるんだ!」
『俺のシファに!何て事を……フグッ……良く頑張ったなシファ』
アレクは獣人の女性を泣きながら抱きしめる。
「アレク……もしかしてその女性は……」
「俺の恋人だ……」
「そうか……」
俺は何も良い言葉が浮かばず、アレクの背中を撫でる事しか出来なかった……。
「ティーゴ……俺はシファをこんなにしたアイツらが許せない」
アレクは怒りで拳を強く握りすぎ、指から血が滲んでいる。
「分かった!お前のしたい様にせい!」
パールはダナ司祭とダラァー侯爵を生き返らせた。
「なっ?こんな魔法……この猫は何だ?猫神様か?」
「猫神様って!こやつらに仕返しするんじゃろ?」
「そっ……そうだ!」
アレクはダナ司祭とダラァー侯爵を殴り飛ばす。
「俺をこんなにした恨み……シファの仇!これはシファの心を壊した分だ!」
アレクは二人を蹴り飛ばした。勢いよく壁にぶつかり手足がおかしな方向に曲がる……
口から血を吐き直ぐに生き絶えそうだ……。
「アレクよ?まだ足りぬか?」
「足りない!」
《リザレクション》
パールがダナ司祭とダラァー侯爵を生き返らせた。
二人は怖すぎて体中のあらゆる所から水を垂れ流している。
「コレはな?俺を兵器にした分だ!」
アレクはダナ司祭の肩を持ちそのまま半分に引き裂いた!
獣人族のリーダー……武器も持たずに強すぎる。
「ありがとうもう良いよ……殴っても怒りが収まらない事が分かったよ」
「そうか……まぁ此奴らには然るべき処分を受けて貰うからのう。その時が一番の地獄じゃろうて」
パールはダナ司祭とダラァー侯爵を生き返らせると、眠らせ拘束した。
「さてとこの獣人の娘じゃが、ワシに任せてくれんか?」
「えっ?どーするんだ?」
「時を戻すんじゃよ?」
「パール!とっ時を戻す魔法だって⁉︎伝説の古代魔法じゃないか!」
「ティーゴよ?ワシを誰じゃと思うておるんじゃ?」
パールがニヤリと笑いティーゴを見る。
そうでした!
「大賢者パール様です!」
「そうじゃ!時を戻す魔法などリザレクションより簡単じゃ!」
《リ・ウインド》
獣人女性の身体が光る……!
「うわっ目が開けられない」
光が落ち着くと獣人女性の痩せこけ爛れた肌は、陶器の様に白く艶のあるぷっくりとした肌に!
髪は真珠の様に煌めいている。
こんなに綺麗な女性だったのか……。
獣人女性はスヤスヤと気持ち良さそうに眠っている。
「これでこの獣人の身体は燦聖教と出会う前まで時が戻った。もちろん記憶もじゃ!」
「……そっそうか!ありがとう!猫神様!良かった……シファ」
アレクは大切な宝物を壊さない様にそうっと抱きしめた。
良かった……パールのおかげでこの獣人女性を助ける事が出来た。
全ての獣人達を助けたいのが本音だが、そうも行かないのが悔しい。
奴隷になって皆が生きてる保証は何処にもないのだ。
このシャウエン街に来て無残に殺された沢山の獣人達を俺は見てきた。
この燦聖教と言う集団は腐ってる。
『ねえ?この獣人女性ね?素っ裸よね?目が覚めたらビックリしない?』
三号が目が覚めた時に裸だと変じゃないからと言う。確かに!
今の嫌な記憶は無いんだから……裸はおかしいよな!
「本当だよな!ビックリするよな?」
『それは…私に任せて?スバル!背中に乗せて!』
『おう!任せろ』
スバルがグリフォンの姿に戻る
「ーーわぁ!ググッグリフォン!」
アレクがグリフォンの姿に戻ったスバルにビックリして腰を抜かした。
『街の仕立て屋か洋服屋でその子に似合いそうな服を買ってくるわ!』
「あっ!三号お金!」
俺は慌てて三号に金貨を何枚か渡す
「じゃあねー!買ってくるわ」
スバルは飛び立って行った。
「ティーゴ……お前達は一体何者何だ?」
「んー?俺はただのテイマーだよ!ただ使役した使い獣達が強すぎるんだけどな?」
「いやいや……グリフォンを使役って聞いた事ないぞ?」
『むう!ティーゴは我の主でもあるのだ!』
俺達の話を横で聞いて居た銀太が、フェンリルの姿に戻る
「あわっ!フェンリル!……うーん」
突然至近距離で現れたフェンリルにビックリしアレクは気絶してしまった。
「ちょっ!アレク!」
俺はアレクの頬を軽く叩き起こす
「はっ?俺は?」
「ごめんな?ビックリしたよな?ほら銀太!謝って!」
『ふぬぅっ……すまんのじゃ!そんなにビックリするとは思わなんだ』
銀太がお座りして申し訳なさそうに頭を下げアレクを見る。
「わわっ!こっこのフェンリルって……さっきまで居た獣人か?」
アレクは震えながらも必死に質問する。
「そうなんだ。フェンリルの姿だと目立つからな?変身してたんだよ。」
「もしかして……他のも……全員か?」
「良く分かったな?そうだ!」
「はぁぁ……ティーゴよお前は……普通じゃねーよ!」
アレクは呆れた顔をして笑った。
「もう何があっても俺は驚かねーからな!」
この後異空間に行ったアレクが、再び直ぐに驚くのは……また次のお話。
⭐︎★⭐︎★⭐︎★⭐︎
今回のお話は描写が女性にとっては凄く嫌なお話だと思います。作者も書いてはやめ何度も悩み……書いたお話です。
【アルビノ】
人族や獣人族に稀に生まれてくる。その姿は肌は陶器の様に白く、髪の毛は全ての毛は真っ白で瞳や唇は真っ赤。
皆揃って美しい姿をしている。
《リ・ウインド》
闇魔法
ランクS
百年前後まで全種族の時を遡り巻き戻す事が可能。反対に時を進める事も出来る
失われし古代魔法。
パールがユグドラシルの杖を使う事により、遡ったり、進めたりする年数は変化する可能性あり。
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