お人好し底辺テイマーがSSSランク聖獣たちともふもふ無双する

大福金

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本編 燦聖教編

エンシェントスパイダーの夢

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「あのさ?お前大事な話があるって言ってなかったか?俺まだ聞いてないぞ?」

『ああ!そうであった。妾の大事な夢の話なんじゃ。話せば長くなるが聞いてくれるかの?』

「おう!もちろんだ」


⭐︎★⭐︎★⭐︎★⭐︎


それは千年も前のお話

貴族達の間で、スパイダーの糸で作った衣類が爆発的に流行り出した。

これにより貴族達によるスパイダーの乱獲が始まった……。

貴族達の一番人気はエンシェントスパイダー。
希少種であり、エンシェントスパイダーが作り出す美しい糸は幻の糸とされ、高額で取り引きされた。

エンシェントスパイダーのランクはSだが、同じSランクのキングスパイダーほど強くはない為まだ捕まえやすかった。

エンシェントスパイダーが作り出すその糸は、虹色に輝く美しさ。

虹色に輝く美しい糸は貴族達を魅了し虜にした。
貴族達は競い合う様にエンシェントスパイダーを探し求めた。
しかし貴族達は捕まえたスパイダーを道具の様に扱い全く大事にしなかった。

それにより、エンシェントスパイダーは千年前に絶滅した。




わらわは七百年前にスパイダーとして生まれた。
その時一緒に生まれた兄弟達は、皆死んでいった。捕まえられたり、冒険者達に討伐されたり……。

その頃の妾には感情など何もなかった。ただ生きて行くそれだけだ。兄弟が死んでも何も思わなんだ。
そんな日々が百年…二百年…三百年…四百年と経って行き……。

ある日、妾は人族に殺されかけた。

どうにか逃げのび妾は洞穴に潜んでおった。
しかし其処にも新たなる人族が現れた。妾はもう……抵抗出来る力など残ってなかった。

殺されると思うたのに、その人族は妾の傷を手当てし……家につれ帰ってくれた。

これが我があるじ様との出会いじゃった。

主様との暮らしは幸せじゃった。
一緒に飯を食べ風呂に入り寝る……それだけの事が本当に幸せじゃった。

その時初めて感情と言うものが芽生えた。楽しいも嬉しいも寂しいも悲しいも全て主様に関係していた。

主様が居ないと寂しい。一緒だと嬉しい。感情も厄介なものだ。

ある時主様が「私とずっと一緒にいるか?」と聞いてきた。
何でその様な事を聞くのだと思った!妾の心は主様のもの、聞くまでもない!もちろん頭を大きく振った。

すると、妾に名をくれた。
妾の瞳が虹色に輝き綺麗じゃからニジと言う名をくれた。妾は初めて嬉しくて泣いた。

妾はテイムされ主様と話が出来る様になった。
話せる事がこんなに嬉しいなんて!

ある日主様が「ニジみたいな綺麗な花を見つけたよ」と虹色に輝く綺麗な花を持って帰ってきた。
その花はレインボーフラワーと言い百年に一度だけ花を咲かせ一日で散ってしまう。
そんな貴重な花を妾にくれた。

妾はレインボーフラワーの蜜を舐めてみた。
不思議な味がした……。美味くはないが何故か力が漲る様で体が満たされた。


主様がまた傷ついたスパイダーを連れ帰って来た。
ジェネラルスパイダーだ。

ジェネラルスパイダーも仲間になった。主様は「これも何かの縁だな」と言いジェネラルスパイダーの名はエンとなった。

家族が増え賑やかになった。エンは体が大きいが優しいやつじゃった。

主様の寿命がもう近いようだ……寂しい。だがスパイダーの寿命も五百年とされておる。妾はもうすぐ誕生してから五百年めが来る。
多分主様より妾の方が先に死ぬ。良かった……主様が死ぬ姿などみとう無い。

体が動かない……そうか妾は死ぬのじゃな……主様と出会えて幸せじゃった。
死ぬのかと思うたら何故か体が七色に光り出し……!
妾はエンシェントスパイダーに進化した!
何と言う事じゃ!

その姿を見た主様は妾の事を美しいと言うてくれた。

そして主様は静かに息を引き取った……。

『いやじゃー主様!妾をおいて逝かないで!いやじゃー!主様!目を開けてたもう……妾を……撫でて笑って……』

『主様!ううっ嫌だ!ふうっ……私はまだ一緒にしたい事が!ううっ』

寂しかった。
エンと一緒に……何日も泣いた。
エンが側に居てくれて良かった。

そんな妾達を周りはそっとしてはくれず……。

たまに主様の所に来ていた貴族が、大軍を引き連れ我が家にやって来た。
エンシェントスパイダーに進化した妾に目を付けていたのじゃ。

妾はそのまま貴族に捕まり……

その時の事は思い出しとう無い……道具の様に扱われ糸を作らされた。
嫌じゃと言うと傷をつけられる。鎖に繋がれ……このまま終わるなら、進化などしたくなかった!
主様と幸せな思い出のまま死にたかった。

「ニジ様ー!何処にいるの?」

なぜエンの声が聞こえてくるんだ?

「ニジ様!ここに居たのか!良かった生きていて!」

キングスパイダーに進化したエンが仲間を引き連れ妾を助けに来てくれた!

「エンありがとう……」

妾を捕まえた貴族邸は燃やし、妾達は人族が居ない場所を探し移り住み……やっとこの場所を見つけたのじゃ。



⭐︎★⭐︎★⭐︎★⭐︎



「そんな事が……いつの時代にもろくな事しない貴族ってのはいるんだな」

『妾が何故この場所を選んだか分かるか?』

「魔獣達は強いが人族は近寄らないからか?」

『それもあるが、一番はこれじゃよ!』

エンシェントスパイダーは奥に植えてある苗を見せてくれた。

「ほう……レインボーフラワーの苗か!まだ小さいから花が咲くのは大分先じゃのう」

パールが苗を見てレインボーフラワーだと気付いたみたいだ。

「これが?レインボーフラワー」

『この花を見つけたから!この場所を選んだのじゃ。妾はレインボーフラワーを育て花を咲かせたい』

パールは耳をピクリと動かせエンシェントスパイダーを見る。

「もしや?エンシェントスパイダーの進化の鍵は……この花じゃな?」

『そうなのじゃ!エンシェントスパイダーに進化するにはレインボーフラワーの蜜を舐め五百年生きたスパイダーがエンシェントスパイダーに進化するのじゃ』

「謎であったエンシェントスパイダーの進化の秘密が……ふうむ」

パールは新しい情報を知り嬉しいのか、瞳をキラキラと輝かせている。

『妾の夢はこのスパイダー達を、エンシェントスパイダーに進化させたいのだ。
絶滅したとされるエンシェントスパイダーを増やしたいのじゃ』

「ほう……面白い!分かったのじゃこの場所全てを異空間に移動する」

パールはそう言うと魔法でこの場所を消した。

「ちょっ?何したんだ?」

「場所まるごとアイテムボックスにしまったんじゃ!さぁ異空間に行くぞ!」

突然自分達の住処が消え、スパイダー達は呆然としている。

『あっあわ……妾は夢を見ておるのか?突然住処が消えた……』
『私達の住処が!』

「スパイダー達!何ぼーっとしておる!早く付いてくるのじゃ!」

『『はいっ!』』

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