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本編 燦聖教編
ローデンブルグの兵士
しおりを挟むローデンブルグの街に、皆を連れては行けないので、今回はジャンケンではなく相談してメンバーを決める事にした。
ベヒィとキラは目立つのでダメ。
オウは良い思い出がないからと行かない。
スバルと一号、二号、三号は強い魔獣を倒しに何処かに転移していなかった。
おいおい!どんな魔獣と戦ってくるんだよ。
ティアとユパ、パティ達はクモ嫌いを克服する為に、スパイダーの森に行くらしい。『仲間になったなら仲良くしないとダメなの!』だって……優しい奴らだ。
と言う事でメンバーはパール、銀太、ハク、ロウ、アレクだ。
何故アレクが一緒かと言うと獣人達を見つけた時に獣人達のリーダーアレクがいたら話が早いからだ。
ハクとロウは匂いで獣人達が何処に居るか分かるらしい。頼りになります。
「さぁ……着港するぞ。皆船から降りる準備をするのじゃ」
船が着港したと同時に入り口にある大きな門から鎧を着た二十人くらいの人が走って来た。
人化したパールと俺が先に兵士?の人達と話をする為に先に船から降りた。
「貴方達は他国の人ですね?」
「そうじゃ、隣国ヴァンシュタイン王国の者じゃ」
「この国は今、他国の者を受け入れておりません。申し訳ありませんが他国の方達は、この街に入れないんです」
「そんなっ折角来たのにダメなのか?」
「悪い事は言いません。この街に入っても何も楽しくありませんよ?大人しく帰った方が貴方達の為です」
兵士の人達は、悪い人ではないみたいだ。俺達の事を心配してくれている。
ヒソッ
「なぁパール?どうする?悪い人じゃないみたい」
「ふぅむ……少し眠ってもらうか」
「何をしておる!さっさと追い出さんか」
パールと相談していたら、黒いマントを羽織った男が門から出て来た。
あの服装は燦聖教の奴だな。
俺達の船を何故かジロジロ見ている。
「この船は奴隷を運ぶのに使えそうだな……よし、その男達を殺してしまえ!」
「えっは?でも彼等は何もしてませんが?」
兵士の人が俺達を庇ってくれる。やはり良い人だ。
「ワシに逆らうのか?お前達の家族など我らにかかれば、どうにでもなるんだぞ?奴隷は獣人以外がなっても良いんだからな?」
なんて事を良いだすんだ。正気かコイツ……。
「分かったらさっさと殺せ!」
兵士の人達は悲しそうな表情をし「本当にすまない」っと一言言うと切りかかって来た。
パールの魔法で皆すぐに眠ってしまったけどね。
「なっ……なっ何が?」
燦聖教の男は兵士達が、倒れるように一斉に眠りについたので、何が起こったのか理解出来ないみたいだな。
次の瞬間、燦聖教の男も眠りについた。
「腹が立つが彼奴のお仕置きは後じゃ」
そう言うとパールは一人の兵士を目覚めさせる。
「はっ?なっ?何が……」
兵士の男は自分に何が起こっているのか理解出来ずに、周りをキョロキョロと何度も見ている。
「此奴らはワシの魔法で眠らせておる。眠っておるだけじゃ、安心するがよい」
パールの言葉に頭を何度も上下に振る兵士、驚きすぎて声が出ないのか?
「よいか?ワシらは燦聖教からこの街を……いやこの国を救いに来た。
じゃからの?今この街で何が起こってるか教えて欲しいんじゃ」
「おっおっ……おっ」
驚きの余り兵士は喋る事が出来ない。
「落ち着くまで待ってやるから、慌てんでええ」
こう言う時って慈愛の手で落ち着かせる効果とかあるかな?
俺は兵士の背中を撫でた。
「俺達は燦聖教が許せないんだ。もうこの街は大丈夫だから」
「ほっ…本当にアイツらから助けてくれるのか?俺達を?ううっ」
兵士の人は泣き出してしまった。それくらいこの街は過酷な状況何だろう。
落ち着くと兵士はポツリポツリと街の状況を話してくれた。
「俺達だって本当は獣人達を捕まえたりしたくない。アイツらがこの街にくるまで仲良くやってたんだ。獣人の友達だって沢山いた」
「では何で言う事を聞くんじゃ?」
「俺らは皆、子供を人質に取られている。
燦聖教の奴等は、この街に魔獣兵器を連れてやって来た。
そして人族、獣人族の子供達を攫って行った。
その後、獣人族は隷属の首輪をつけられ奴隷にされた。
人族の子供達は街の何処かに集められ囚われた。俺達大人は言う事を聞かなければ子供を殺すと脅されたんだ」
酷すぎる……燦聖教の奴等は人の心がない奴の集団だな。
狂ってるよ。
「俺達……大人は言う事を聞くしか無かった。次に若い女は子供の世話係と言う名目で、どんどん攫われていった。もうこの街には年配の女か男しかいない」
「じゃあ食べ物とかはどうしてるんだ?」
「食事は街の中央にある燦聖教の塔の前で、時間がくれば配られる。冷えた何も味気ない飯だがな……食えないよりはマシさ」
「そうか……良く分かったのじゃお主らはこの場所で待機してくれ、今から燦聖教をチャチャッと潰してくるからの?」
「あのこれ……皆で食べてください」
俺は余分に作ってあったカラアゲをアイテムボックスから出した。
「ああっ……温かい料理!何て美味そうなんだ!何にも無い所から急に飯が現れた!神様……ふうっすんっ…ありがとうございます」
「今寝ておる奴等は後十分もしたら起きるから安心せい」
「はいっ!ありがとうございます」
兵士の男は泣きながらカラアゲを必死に頬張っていた。
「さぁ行くかの」
異空間の扉を出し皆を呼ぶ。
「なぁ……あの兵士は何で泣きながらカラアゲ食べてるんだ?」
扉から出てきたアレクが不思議そうに兵士を見ている。
「それは……お前もそうだっただろ?」
「ははっそうだったな!今が幸せ過ぎて忘れてたぜ」
「では街に行くとするかの?」
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