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本編 燦聖教編
ローデンブルグの獣人
しおりを挟む大きな門をくぐり街に入ると……
『主様!向こうに複数の獣人達がいるジャイ』
『本当コブ』
「もう見つけたのか⁉︎案内してくれ」
早速ジャイコブ達が複数人で集まっている獣人達の居場所を見つけてくれた。まだ燦聖教に捕まって居ない獣人達の集落かも知れない。
「パール向こうに獣人達が居るって!」
「よしっ急ぐのじゃ」
ジャイコブ達の後を追い、走ってついて行くと……壊れた家が現れ出す。
ローデンブルグ街のまともな建物は街の中心部のみ、外れたら壊れた建物ばかりだ。燦聖教に壊されたんだろう……なんて酷い事をするんだ。
ジャイコブ達は中心部からどんどん外れた所に走って行く。
もう建物も何もないぞ?目の前にあるのは瓦礫の山だ。
ジャイコブ達は五メートルはある瓦礫の山の前で立ち止まった。
『ここジャイ!』
「ここって?目の前にあるのは瓦礫の山だぞ」
『ふうむ?主~これは隠蔽魔法だ』
「そうじゃ銀太。良く気付いたのう賢いぞ」
『フンスッ我はすごいのだ!』
銀太はパールに褒められ嬉しいのか耳をぴこぴこと動かし満面の笑顔で笑う。獣人姿の銀太は表情豊かで可愛い。
「隠蔽を解くかの」
バリバリッ
パールが隠蔽魔法を解くと白亜の建物が現れた。
「何と……ここは教会か!」
周りには壊れた建物しか建ってない中で、白く美しい教会のその姿は何故か異様に感じる。
隠蔽されていたから建物が壊されずに無事だったんだな。
『中に入るジャイ』
ジャイジャイジャイコブ♪ジャイジャイジャイコブ♪
俺達が建物に気を取られていたら、ジャイコブ達が陽気なダンスを踊りながら先に中に入って行った。
「ちょっ待ってくれ!お前達が先に入ったら中の人がビックリするだろー!」
俺は慌ててジャイコブ達の後を追う。
中に入ると獣人と人の子供達が部屋の端に集まってプルプル震えていた。
二十人くらい居るか?いやっ……もっとか?
突然現れたジャイコブ達を見て怖がり震える子供達。
俺は子供達を安心させたくて、近寄ろうとしたその時。
「貴方達はどうやって隠蔽魔法を見破ったのです⁉︎
ここに何の用が?この子供達は何をされても絶対に渡しませんからね!」
シスターらしき服をきた女性は震えながらも子供達の前に立ち、両手を広げ必死に子供達を守ろうとしている。
「いやっ……俺達は」
「シスターメイ!無事だったんだな」
俺が対応に困っていたらアレクが女性に駆け寄り話しかける。知り合いか……?
「アレク……貴方生きて……燦聖教に捕まり魔獣兵器にされたと聞いて心配で……」
「この横にいるティーゴが俺を助けてくれたんだ!」
「そうなんですね……良かった……本当に良かった」
シスターは泣き崩れてしまった。
「シスター泣かないでくれ俺は今幸せなんだ」
泣いているシスターに、アレクはどうしたら良いのか分からず、デカイ図体がオロオロとシスターの横で困っている。
その姿が何だか可笑しくってつい俺は笑ってしまった。
「あっ⁉︎ティーゴ⁈何笑ってんだよ」
「あははっいやっだってお前のそんな姿……ぶっ初めて見たからさっ」
「おっ俺はこんな時どうしたら良いとかっ分かんねーんだよ」
「ふふっ……本当だわっアレクは幸せになったのね」
俺達のやり取りを見たシスターが笑い出した。正確には泣き笑いしている。
「なっシスターまで笑って……なんだよっ俺は心配してだな……まっ良いか」
アレクは照れ臭そうにニカっと笑った。
⭐︎★⭐︎★⭐︎★⭐︎
「俺とシファはな?良く教会に手伝いに来てたんだよ。この教会の仕事や孤児たちのお世話など全て、シスターが一人でしてたからな」
「そうなんです。アレクとシファはいつも教会の仕事を手伝ってくれて、本当助かりました」
「だけど……燦聖教の奴らが街にやって来た後、教会が瓦礫の山になってたから……俺はてっきり奴らに教会が壊されたとばっかり思ってたよ」
「私は隠蔽魔法が使えますので、子供達を守る為すぐ教会に隠蔽魔法をかけたのです。
この魔法のおかげで今まで燦聖教に見つからず過ごせ子供達を守る事が出来ました」
「でも食べ物とかはどうしてたんだ?」
アレクが不思議そうに質問する。
本当だよな。どうやってこの人数食い繋いでたんだ?
「それは……話すより見て貰う方が早いかと。
こちらについて来て下さい」
シスターの後をついて行くと教会の中庭は畑になっていた。
「この場所は子供達の遊び場だったんですが、ここを畑にしどうにか今まで生きてこれました」
シスターはそう言ってニコリと笑うが、その姿はガリガリに痩せ細って居た。
その姿は子供達も同じだ。
こんな時は肉祭りだー!と言いたいが……二年以上野菜しか食べてないのに急に肉をいっぱい食べたら胃がビックリしちゃうよな。
ここは栄養満点スープの出番だな。
「なぁパール、ここに居る子供達にスープ作ってあげたいんだけど良いか?燦聖教を成敗するの遅くなってしまうけど……」
パールに話しかけるが返事がない
「パール?」
「すんっ……あんなに小さな子までガリガリじゃ……なんでそんな不憫な思いをせにゃならんのじゃ……すんっ奴隷と言い……燦聖教……絶対に許さんのじゃっ……すんっ」
猫の姿で分からなかったが、パールは泣いていた。今までの色々な事が積もりに積もってだろう……
「泣くなよパール……すんっ俺まで……泣いちゃうだろっ」
もらい泣きして俺まで泣いてしまった……。
『主~どうしたのだ?何処か痛いのか?我がリザレクションしようか?』
銀太が心配して俺に抱きついて来た。
「大丈夫っ何処も痛くないからな!燦聖教が許せなくて泣いてただけだから」
『ふぬっ……我の主を泣かせるとは!燦聖教めっ許さんのだ!さぁやっつけに行くのだ!』
銀太が、俺の為に燦聖教をやっつけるとプリプリ怒ってくれる。
その姿を見てたら可愛くって笑ってしまった。
「ありがとうな?銀太」
俺は嬉しくて銀太の頭を撫でまくった。銀太の耳がぴこぴこと動く。
『ふふっ主の手気持ち良いのだ』
「さぁ!美味しいスープを作るか」
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