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本編 燦聖教編
幸せの宝石箱スープ
しおりを挟む教会にある調理場を借り、俺は皆に食べてもらう美味しいスープを作っている。
沢山の野菜を風魔法で細かく刻み、ワイバーンの肉も同じ様に細かく切る。
それを大きな鍋に入れ慈愛の水を入れて煮込む。肉がほろほろになるまでじっくり煮込めばスープの完成だ。
味付けは軽く塩胡椒するだけで良いよな。野菜と肉の出汁が美味いから。
教会には人化したティアがすっぽり入るくらいの大きな寸胴鍋が、三つもあったので三つ全て使ってスープを作った。
「こんなに大きな鍋何に使ってたんだ?」ってシスターメイに聞いたら、教会で炊き出しをして街の人達に配っていたらしい。
それをアレクとシファさんが手伝ってくれていたと。
何と「二人はね?そのお手伝いで知り合い付き合いだしたのよ」ってシスターメイがコッソリ教えてくれた。
⭐︎★⭐︎★⭐︎★⭐︎
「さぁ皆食べようぜ」
お鍋を教会にある食堂に運ぶと、鍋の前に子供達がお皿を持ち嬉しそうに並びだす。
シスターメイと俺は子供達の皿にスープを注いで行く。
「わぁ!おいししょー」「具がいっぱいのスープ」「肉も入ってるぞー」「こんなキラキラしたスープ見た事ない」「宝石箱みたい」「綺麗だね」
席に着いた子供達は口々に話し出す。
「はい!皆静かに。先ずはこのティーゴさん達に感謝を!」
「「「「「ありがとうございます」」」」」
「そして、創造神デミウルゴス様に」
「「「「「デミウルゴス様この世界を作って頂きありがとうございます。今日もご飯が食べれて幸せです」」」」」
そう言うと子供達は一斉にスープにがっついた。
「美味しいっすんっ」「……ううっ」「……ふぐっ…おいし…」「幸せっ」「胸があたたかい……ふぐっ」「いきて……よかった。ううっ」
「あらあら……皆泣きながら食べてるわ」
そう言うシスターアンも泣いている。
その姿を見たアレクまでもらい泣きしている。
悲しい涙じゃなくて幸せの涙だ。皆泣いてるけどニコニコ笑ってる。皆に料理作って良かった。
そうだ……!外に植えてる野菜達に慈愛の水で水やりしとこう。
そしたら直ぐに野菜が収穫出来る大きさになるもんな。
よし中庭に行くか。
中庭に植えてある野菜も栄養が足りてないのか今にも枯れそうだ……
この教会の子供達の為に美味しい野菜に育ってくれよー。
野菜に慈愛の水をやっていく。
すると枯れそうだった野菜はひと回り大きく成長し、美味しそうに輝く野菜を沢山実らせてた。
よしっ!これで当分野菜に困らないだろ!
俺が一人野菜を見ながら満足していると、シスターメイが息急き切って走って来た。
「はっはぁっ……ティーゴさん!ここに居た。
あのスープを飲んだら胸が幸せでいっぱいになって……気が付いたらガサガサだった肌が綺麗になったんです!あのスープは一体何ですか?」
シスターメイが興奮気味に早口で捲し立てる。
「まぁ落ち着いてくれ」
確かにシスターメイは体は痩せてはいるが明らかに肌艶が凄く良くなっている。
スープの水を慈愛の水にした所為とかじゃないよな?
「わぁっ!野菜が!何でこんな事に!」
全ての野菜が豊かにみのっている事に気付き、シスターメイは軽いパニック状態だ。
「シスターメイ!落ち着いてくれ。これは俺の魔法なんだよ。
俺が魔法で水をやると植物が急成長するんだよ」
「……そんな魔法聞いた事ない……そうか」
シスターメイは何かブツブツ独り言を呟いている。
「あの……シスターメイ?」
「分かりましたわ!ティーゴさんいえっティーゴ様!貴方は創造神デミウルゴス様がこの街を幸せにする為に使わせた天使様ですね?」
ブッッ!
「なっ何言い出すんだよ!違うよ」
また天使ってもう勘弁してくれ。
「あっでは使徒様?」
「どっちも違うから!俺は人族ティーゴな?」
「まぁ……神の御使いだとそう易々あかせませんよね。そう言う事にしときましょう」
「はぁ……皆の所に戻ろうか」
これ以上何を言っても無駄だなと悟り諦めた。
食堂に戻ると三つあったうちの二つの鍋が空っぽになっていた。
子供達は満足気にお腹を撫でている。良く食べるなぁ。
子供達の顔色も良くなり艶々している。
初めて会った時とは大違いだな。
満足気に笑う子供達を見ていたらパールが瞳をキラキラさせて走って来た。そうか……その顔は何か発見したんだな。
「ティーゴよジャイコブ達とアレクでこの街について話していたんじゃがの?それで街の事が大体分かって来たんじゃ」
「分かった?」
「そうじゃ、この街にいる獣人の残りは【街の中央にある塔】
街の一番奥に建てられてある【五つの屋敷】これは貴族達が住む家だとアレクが言うておった。
さらにその奥にたつ【青色の塔】そこが燦聖教の本拠地じゃ。
その何処かにさっき会った兵士の家族や獣人達が多く閉じ込められておる」
「貴族達の所には……また奴隷がいるのか?」
「たぶんのう……」
パールは少し悲しそうに俯くと
「早く皆を助けてやらなの!」
そう言ってやる気を漲らせた。
「そうだな!先ずは中央にある塔か?」
「そうじゃ!」
俺はシスターメイに肉を大量に渡した後、子供達に別れを告げた。
「こんなに豪華な肉……」っとシスターメイと子供達にまた泣きながら感謝されたので急ぎ気味に教会を後にした。
燦聖教め待ってろよー!
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