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本編 燦聖教編
中央の塔 ①
しおりを挟む中央の塔には着いたが……入り口の大きな扉が閉まっている。
周りに人の気配もない。
「どーやって中に入る?」
「扉から正々堂々と入れば良い」
「本気?」
「どうせ皆捕まえるんじゃから」
『任せるジャイ』
ジャイジャイジャイコブ♪ジャイジャイジャイコブ♪
ジャイコブ達が扉に向かって突っ込んで行く。大きな扉は粉々に砕けた。
ブッッ
扉開けないのかよ!
めちゃくちゃするなぁ……。
塔の中に入るとすぐに大きな広間があり、机に少し食べ物が置いてある。
そういや港にいた兵士がここで食べ物を配っているって言ってたな。
今は昼過ぎてるから誰も居ないんだな。
突然現れたジャイコブ達にビックリし、奥で震えながら座り込んでいる人族の女性を数人見つけた。
俺と同い年くらいか……?
誤解を解くために急いで女性の所へ走って行く。
「ひゃっこっ殺さないで!」
女性達は恐怖の余り頭を手で覆い平伏した。
完璧に誤解されてるよー。
俺は座り平伏して居る女性達の体を起こした。
「落ち着いて聞いてね?俺達は燦聖教に捕まった人達を助けに来たんだよ」
「ーー私達を……?」
「……助けに……?」
「……本当……?」
「そう!今日からは燦聖教に怯える事はないから。安心してくれ」
「ほっ本当に?……家に帰れるの?」
「おっお父さんっと……おがあさんにっ会える……」
「そうだよ。皆家に帰ろうな」
「「「ああああああっ」」」
女性達は何とも言えない声を出し泣き崩れた。
そりゃそうだよな。家族と離れてこんな所に閉じ込められてたら辛いよな。
獣人族だけじゃなくこの街は、人族も助けないと。
「ティーゴ!向こうにおるみたいじゃ。行くぞ」
パールが奥の部屋に行こうと呼びに来た。
困ったな……泣いてる女性を置いて行けないし。そうだ!こんな時は甘い物が一番だよな。
「はいどうぞ。落ち着いたら食べてね」
俺はトウカパイを女性に渡しパールの後を追いかける。
「「「ありがとうございます」」」
異変に気付いた数人の燦聖教の奴等が奥の通路から走って来た。
『悪人見つけたジャイ』
『邪魔だコブ』
ハクとロウが目の前にいた燦聖教の男を爪で引き裂いた。
一瞬で男の体は真っ二つに引き裂かれる。
わーーーっ!一瞬で……!
いつもジャイジャイ♪言って楽しいそうに踊ってるから忘れてたけど、アイツらもSランクなんだよな……。
「ハクとロウよ!一人は生かしておくんじゃよ?」
『『分かったジャイ』コブ』
走って来た五人の内四人はジャイコブ達に引き裂かれた。
残された一人はガダガタと震え気絶寸前だ。
「さぁて?お主には色々と話して貰うとするかのう?ああ……自決しようとしても無駄じゃよ?まぁ死んでも生き返らせるがのう?こうやって」
《リザレクション》
真っ二つにされた男が生き返る
「ヒィャァァァァァ!」
燦聖教の男二人はパニックだ。
「静かにせい!」
パールが燦聖教の男達を魔法で動けなくする。
「さて?ここに囚われておる人族や獣人族の所に案内せえ」
「ここにはいない……ペラペラ…アイツらは地下にある部屋にいる…ペラペラ…何で⁉︎」
「地下へはどうやって行くんじゃ」
「ペラペラ…この通路の突き当たりに隠し扉があってそこから行ける…ペラペラ」
「なるほどのう。お主ら以外に燦聖教の奴はまだこの塔ににおるか?」
「ペラペラ…はい居ます。今は塔の二階に全員集まっています…ペラペラ」
「そうか……もうお主らに用はない。ハクとロウよ!此奴ら好きにせい」
『任せるジャイ』
ジャイジャイジャイコブ♪ジャイジャイジャイコブ♪
ハクとロウは踊りながら燦聖教の男達を軽く切り裂いて行く。
その姿はネコがネズミを悪戯に弄んでる様だ。
うん。ジャイコブウルフが凶悪で怖いっての分かったよ。
『次は我がお仕置きするのだ!』
銀太が何故か張り切り出す。そんな張り切らなくても大丈夫だぞ?
「上に全員集合しておるなら丁度良い、先に燦聖教の奴らを一網打尽じゃ」
俺達は階段を駆け上がった先にある、扉を開ける。
中では燦聖教の男達が獣人女性を横に座らせ宴会をしていた。
机の上には豪華な料理が並んでいる。
良い身分だな?街の皆は飢えで苦しんでるって言うのに。
呑気に宴会なんかしやがって……。
「ななっ何じゃお前達!勝手に入って来て!」
『五月蝿いのだ!我らはお主らを懲らしめに来たのだ。フンスッ』
「懲らしめにって……フハハ何をバカな事を。ワシらに逆らって生きていけるとでも?」
「おお……お前銀髪で美しいじゃないか。俺が飼ってやろう」
「おいっ!そいつは部屋に入って来た時から俺が目を付けてたんだ。俺が飼う」
『五月蝿い!我の主はティーゴだけだ。気持ち悪い事を言うな!』
銀太は話しかけて来た男達を消し炭にした。
「ヒィャァァァァァ!」
「何が⁉︎何が起こったんだ⁈」
燦聖教の男達は突然消し炭になった仲間を見てパニックだ。
『五月蝿い!黙っておらぬと消し炭にするのだ』
銀太はまた雷を落とし燦聖教の男達を消し炭にした。
二十人程の居た燦聖教の男達はあっと言う間に残り五人となった。五人の男達は体中からあらゆる水を垂れ流す。
何か話すと消し炭になるので口は真一文字に閉じている。
「皆、大丈夫か?助けに来たからな」
「アレク!生きて居たのね」
「捕まって兵器にされたってコイツらが言ってたから……」
「良かった……」
アレクが獣人女性の所に近寄るとホッとしたのか口々に話しだした。
「俺はこのティーゴが助けてくれたんだ。他国に奴隷として売られた獣人達も皆助けてくれた」
「そうなの……良かった。私達は奴隷として売られる前にコイツらの食事の世話やああやって相手をさせられてたの」
「胸やお尻を触って来て本当に気持ち悪い」
「そうか……もう大丈夫だからな」
アレクが必死に獣人女性を宥めている。
俺とパールは獣人女性に付けられた隷属の首輪を外していった。
燦聖教の男達はその間に銀太とジャイコブ達にお仕置きされていた。
ジャイジャイジャイコブ♪ジャイジャイジャイコブ♪
一度消し炭にした男達を生き返らせジャイコブ達が弄ぶ。怖すぎる。
燦聖教の男達は裸でジャイコブ達から逃げ惑っていた。
「銀太……もういいんじゃ?」
『ダメなのだ!特に彼奴らは我を飼うと言うた!あんな低俗な者が我を……許せぬ!』
ジャイジャイジャイコブ♪ジャイジャイジャイコブ♪見たかこの華麗なるステップジャイを♪
ジャイコブ達から必死で逃げ惑う裸の男達……裸踊りしてる様だ……そんなつもりないんだろうけど……。
まだ銀太が納得していないのでアッチは置いといて。
「アレク……この獣人女性達はどうする?シファさん達の所に連れて行く?」
「そうだな。シファの所に連れて行って来るよ」
俺は異世界の扉を出した。
獣人女性達は驚いていたがアレクが説明し納得していた。
何故か獣人女性達が皆、俺を拝んでいるんだけど……どんな説明したんだよ?
三十分程待つと、アレクが戻って来た。銀太達のお仕置きも納得したみたいだな。
「よし、次は地下にいる子供達を助けに行くぞ」
燦聖教の奴等は魔法で縛り、とりあえず放置する事にした。
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