お人好し底辺テイマーがSSSランク聖獣たちともふもふ無双する

大福金

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本編 燦聖教編

中央の塔 ②

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一階に再び降りて来ると、先程泣いて居た女性達が俺に向かって走って来た。

「とても美味しいパイをありがとうございます。あんなに美味しいパイ初めて食べました」

「本当美味しかった……」

「幸せなひと時でした。ありがとうございます」

女性達がトウカパイの感想を口々に伝えてくれる。
トウカパイは口が肥えてる聖獣達にも人気だからな。気に入って貰えて良かったよ。

ちょっと前は震え泣いて……
でも今はニコニコと幸せそうに微笑む女性達を見て、俺はなんだかホッとした。

「この塔にいる燦聖教さんせいきょうの奴等は成敗したからね!もう安心して」

「「「ありがとうございます」」」

女性達は何度も何度もティーゴに向かってお辞儀をした。

さぁ次は地下にいる子供達を助けに行くぞー!



⭐︎★⭐︎★⭐︎★⭐︎



確か通路の突き当たりに隠し扉があるって言ってたな。

「パール隠し扉の場所分かるか?」

「余裕じゃっ!これはよくあるタイプじや」

パールが横の壁を押すと、壁がずれ地下への階段が現れた。

「さすがパール。天才だ!」

「ふふん?もっと誉めてもええんじゃよ?」

階段を降り地下室への扉を開けると……。中は湿気でジメッとしていて異臭がする。

『ぎゃっ……臭いジャイ』
『鼻が曲がるコブ』
『むうっ臭いのだ!これは浄化じゃ』

銀太達は匂いに敏感だからな。俺でもちょっと苦しい……。

銀太が浄化魔法をかけてくれたおかげで、異臭や湿気は無くなり部屋が明るくなった。

長い通路を歩いて行くと……広い部屋に出た。
そこには牢屋が並んでいた。
牢屋の中には子供が二十人位に分かれ入れられていた。
その数ざっと見ただけで子供達が入った牢屋は三十以上あるだろう……

牢屋の中は剥き出しのトイレがあるだけ、ベッドもなく下に薄っぺらい布が敷いてあるだけだった……。
その布の上で子供達が犇めき合って寝ている。

なんて酷い事するんだ!こんな状況なら元気な奴も病気になる!
囚人でももっとマシな部屋に入れられてるぞ。

俺は牢屋を開けて子供達に回復魔法をかけていく。

「体が痛くない……」「どこも……」「苦しくない……」
「何をしたの……?」「もう私達死ぬの?」「お兄さんが天に連れて行ってくれる天使様?」

子供達はボロボロで傷付いた体が元に戻り、不思議そうにキョロキョロしている。

「もう大丈夫だからな?安心してくれ。お父さんやお母さんの所に帰れるからな」

ティーゴのその言葉に子供達は一瞬目を見開き……そのまま泣き出してしまった。

「本当にっ……ふうっ」「お父さんと……ううっお母さんに会えるの……すん」「おとうしゃ……」

「そうだ。会えるからな。良く今まで我慢したな」

俺は子供達の心が少しでも癒されるならと皆の頭を優しく撫でて行った。

それを後ろで見て居たパールがまたコッソリ泣いていた。


⭐︎★⭐︎★⭐︎★⭐︎


「じゃ、さっき相談した通り分担して子供達を回復させよう」

余りにも牢屋に入って居る子供達が多く皆がケガや病気で弱っているため、回復係と移動係に手分けする事に。

俺とパールと銀太は子供達の怪我を治す回復係、アレクとジャイコブ達が元気になった子供達を一階の広間に連れて行く移動係だ。

『さっコッチに来るジャイ!』

『楽しいダンスで歩いて行くコブ』

ジャイコブ達がダンスを踊りながら子供達を誘導する。

ジャイジャイジャイコブ♪ジャイジャイジャイコブ♪

初めは困惑して居た子供達も慣れたのか、ジャイコブ達と楽しそうに踊りながら地下室を出て行った。
子供達の心が壊れて無くて良かった……壊れかけの子達も居ただろうが助けられて本当良かった。

「さぁ!どんどん助けて行くぞー!」

『任せるのだー!』

部屋の一番奥にある牢屋に近寄ると……!なっ燦聖教の奴が牢屋の中に入って何がしている。

慌てて牢屋の鍵を壊して中に入る。
「おいっ!お前達何してるんだよ」

燦聖教奴らの黒いマントを引っ張る。

フードが捲れ中からプラチナブロンドの長い髪をした女性が顔を出す。

「なっ……女性……⁉︎」

女性の燦聖教なんて初めて見たぞ?

「やめてっセイラに意地悪しないで」
「セイラは私達の味方なの!」

子供達が両手を広げて、俺と燦聖教の間に入る。

「なっ……味方⁉︎」

「そうよ!セイラはね。今日燦聖教の人にいっぱい蹴られて起きなくなったカイを……魔法で助けてくれてるの!」

「回復魔法をかけているのですが……内臓破裂しているみたいで私には……グスッ」

「セイラ!泣かないで!カイは助からないの⁉︎」

「俺に任せてくれ」

俺は怪我している男の子の前に立ち魔法を放った。

    《リザレクト》

寝そべり今にも死にそうだった男の子は回復し目を覚ました。

「……ううん……?」

「カイー!良かったよー!死んじゃうかと……ううっ」

「俺……⁈燦聖教のおっさんに蹴られて……そんで⁈」

「バカカイ!無茶するから!死にかけてたんだから!」

「良かったよーカイー生きてたーううっ」

子供達は抱き合って喜んでいる。

「ありがとうございます!こんな凄い魔法初めて見ました。貴方様はもしや大賢者様ですか?」

「いやいや……俺はテイマーだよ」

「テイマー⁉︎そんなっ……あんな高ランク魔法を使うなんて……聞いた事ないですよ⁉︎」

「……って言うか何で燦聖教のお前が子供達を助けてるんだ?
それに女性の燦聖教の奴も初めて見たぞ?」

「それは……私はこの街でギルドマスターをして生活していました。今はもうありませんが燦聖教が来る前は、この街にも大きな冒険者ギルドがあったんですよ」

「ギルマス⁉︎」

「はいっ。ふふっ見えませんか?
私は監禁された子供達が心配で燦聖教の服を調達してなりすまし、こっそり侵入して食料などを届けていました」

「そうだったのか……俺はティーゴだ。燦聖教全てをぶっ壊しに来たんだ」

「はっなっ……燦聖教を⁉︎そんなっ無理ですよ!危険です!無茶しないで下さい!」

「大丈夫だよ。俺には強い味方がいっぱい居るんだ。セイラさんだったかな?」

「……はい」

「今まで頑張って子供達を守ってくれてありがとうな?もう安心してくれ。後は俺達に任せてくれ」

「……本当に⁉︎本当に……私達……助かる……の?」

「本当だ!もうこの塔にいる燦聖塔の奴等は皆捕まえ拘束している」


「ーーああっ……神様!ありがとうございますっふうっ」


セイラさんは泣き崩れてしまった。
女性一人で今までずっと無理して、気を張って頑張ってたんだろう……。後は安心してゆっくりしてほしい。

他にもセイラさんみたいな人がいるのかも知れない。

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