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本編 燦聖教編
貴族の屋敷
しおりを挟む「ほっ……ほほっ本当に家を直してくれるのかい?」
壊れた家を直すと言ったら目をまん丸にして驚く街の人達。
「ああ。ここに居る一号と二号に順番に頼んでくれ。すぐに建て直してくれるよ」
「ああっ……ありがとうございます!イチゴーさんニゴーさん宜しくお願いします!」
街の人達は俺達に深々と頭を下げた。
『では行くか!』
『やるっすか』
一号と二号は街の人達を引き連れ歩いて行った。
「ちょっちょっと待ってくれ!俺も一緒に行くから」
大勢いる街の人の話をまとめたり、要望を聞いたりする人が必要なので、アレクが一緒に行く事になった。
「さてと……俺達は貴族の屋敷に向かうか!」
⭐︎★⭐︎★⭐︎★⭐︎
『むっ……?あの屋敷に獣人達が三十人以上いるジャイ!』
『そうコブね……他の屋敷は四~五人くらいコブ。多くて十人コブ』
なっ……獣人族が三十人以上⁉︎
「ヤバそうな貴族じゃのう……」
「ああ……三十人以上も獣人奴隷を買うだなんて……よっぽどだな何のために……」
そんなに獣人奴隷を集めて何してるんだよ。
急いで貴族の屋敷に走って行く。
『この屋敷ジャイ!』
ジャイコブ達に案内された貴族の屋敷は、五メートルはある高い塀でぐるりと囲い、入り口の門も頑丈な鉄で出来ていて屋敷と言うより……まるで要塞みたいだ。
「何か今まで行った貴族の屋敷と雰囲気が違うなぁ……」
「そうじゃのう……なんじゃ⁉︎この屋敷武装しておるぞ!」
「えっ?武装だって⁉︎」
「よく見るんじゃ」
よく見ろって……あっ!魔道具が至る所に埋め込まれてる。
神眼でみたら……
【雷の魔道具】
前を通ると雷が落ちる。
威力は魔法サンダーと同等
【弓矢の魔道具】
前を通ると数百本の矢が飛んでくる。
貴族の屋敷にこんなの必要か?ここは本当に貴族の屋敷なのか?
武装集団の要塞なんじゃ……
「なぁパール?ここは本当に貴族の屋敷なのか?怪しくないか?」
「入ってみん事には分からんのう」
「それもそうか……どうやって入る?」
「正面突破じゃ!結界を張って入れば何も問題ない」
パールは鉄の門を風魔法で切り裂いて中に入って行く。
中に入った途端カミナリや矢が飛んで来たが結界のおかげで何も当たらない。
屋敷までの道のりを歩くがどの貴族も綺麗な花を植えてたりするんだが……ただタイルが敷き詰められただけの歩道た。
横には大きな木々が鬱蒼と繁り日が余り当たらず暗い。
『何か怪しい屋敷だなぁ……俺こう言う雰囲気苦手』
そう言ってスバルが俺の肩に乗って来た。
『本当よね……屋敷の入り口には変な石像も……って?
ーーあれゴーレムじゃん!』
「えっ⁉︎ゴーレムだって?」
屋敷の入り口に飾られていた二メートルはある石像四体が動きだした。
「ほう……?ゴーレムか」
パールはゴーレム達に飛び乗のると、次の瞬間ゴーレムの核に魔力を次々に放って行く。
ゴーレムが耳を劈くような雄叫びを上げたかと思うと、ゴーレム達はパールに向かって跪いた。
「ぱっパール?これは一体?」
「ああ?これはのう強力な魔力をゴーレムの核に流し、主を変更したんじゃよ。此奴らはもうワシの言う事しか聞かぬ」
「すっすげー!そんな事が出来るのかパール天才だよ」
『主カッコいいーさすが俺の主だっ』
『カスパール様さすがですわ』
『カッコ良いジャイ』
「当たり前じゃ!ゲフンッ…ワシを誰じゃと思うておる。さっ皆中に入るのじゃ!」
皆に褒められて少し照れ臭いのか、パールは慌てて屋敷に入って行った。
嬉しい時に耳をぴこぴこする癖出てるよパール。クスッ。
「パール待ってくれよー」
屋敷に入るとジャイコブ達が誘導してくれる。
屋敷の中は外とはガラリと変わり至って普通だ。
よく見る豪華な貴族様のお屋敷って感じだ。
何で外はあんなに武装してたんだろ?
『この奥の部屋に獣人達が集まってるジャイ』
『そうコブ!ここの何処かに隠し扉があるコブ!』
ジャイコブ達が何も無い壁の奥に部屋があると言う。試しに壁を押して見るが何も起こらない。
「ククッこれはじゃの?大体足元に魔道具があってじゃのう……」
パールが床をチラリと見る。
「おおっあった」
パールが床の一部を剥がすと……ボタンが出て来た。それを押すと壁が上に上がって行く。
「何だこれ!凄い」
壁が上に上がりきると奥の広い部屋が露になった。
部屋には三十人以上の獣人が固まり震えていた。
アレッ?俺達に怯えてない?何か絶対誤解してるよね?
俺達が部屋に入り獣人達の誤解を解こうと話し掛けようとした時、初老の男性が獣人達の前に立った。
「すみません!この子達を連れて行かないで下さい!お願いします。私は何でもしますから!」
初老の男性はそう言って俺達に平伏した。
獣人達も男性に続きひれ伏す。
何だこれは……俺達悪役じゃん
「ちょっちょっ⁈何か誤解してないか?俺達は獣人を助けにこの屋敷にやって来たんだ」
「ホへっ?」
初老の男性は訳が分からないって顔をしている。
「俺らは獣人奴隷達が酷い目に遭ってたらと思って……助けに来たんだよ」
「そんな事お爺様はしません!」「お爺様は私達を助けてくれたのです」「いつも僕の事を孫の様に可愛がってくれるんだ」「私達は大事にされています」「お願いです!このままお爺様と一緒に居させて下さい」
獣人達が口々に初老の男性を庇う。ここの獣人達は大切にされていたんだな……良かった。
「お主達が幸せならワシらは何もせんよ」
「ありがとうございます」
獣人達はパールの言葉にホッとしたのか皆涙ぐんでいた。
「そこの男性よ?ちょっと話をせんか?」
「はいっ」
俺達は屋敷にある広いサロンに案内されそこで話を聞く事にした。
「ご紹介が遅れて申し訳ございません。私はこの屋敷の主、ロナウン・ジャスターと申します。一応侯爵です」
「俺はティーゴです。横に居るのは仲間の使い獣達だ」
「それでじゃ?何じゃあの屋敷周りの武装は?」
「燦聖教が来る前から私は獣人達と家族の様な付き合いをしておりました。
私にも家族が居たんですが燦聖教がこの街に来た時に獣人達を奴隷にする事を猛反対し、燦聖教に殺されました……」
そんな酷い事を許せない。
「この屋敷の武装は獣人達を守るためです。実は隷属の首輪を付けていない獣人も多数居るのです。元々この屋敷に住んでいた獣人達です」
「首輪を付けていない⁈」
「はい。それを知っている貴族がいまして、その男が手練れを使い獣人達を奪いに、我が屋敷に忍び込んで来たのです。その時は先程の隠し部屋でどうにか助かったのですが……また来た時の為に屋敷周りの警備を強化したのです」
「じゃあもしかして俺達はその貴族が雇った手練れと思われたのか?」
「はい……申し訳ございません」
「その嫌な貴族の名前はなんじゃ?」
「クズス・ギルー伯爵です。我が屋敷の隣りにある青い屋根のお屋敷がそうです」
「ギルー伯爵か……そいつはそんなに酷いのか?」
「最悪ですよ!燦聖教が来て喜んでいる貴族はアイツだけです。アイツの趣味は拷問……人の悲鳴が聞きたいのです」
「何だそいつ!最悪だな」
そう言えば……獣人が十人位いる屋敷もあるってジャイコブ達言ってなかったか?
「ハク!さっき言ってた獣人が十人位いる屋敷ってこの近くか?」
『そうジャイあの方向ジャイ!』
ハクが指した方を見て……ジャスター侯爵は「ギルー伯爵邸の方角です」と項垂れながら教えてくれた。
「十人もの獣人がアイツの屋敷に⁉︎ああ……何て事だ!」
「パールこれは急がないとヤバい!」
「そうじゃな」
「ジャスター侯爵!俺達が今からギルー伯爵邸に行って獣人達を助けて来ます。
助けたら直ぐに戻ってくるのでちょっと待ってて下さいね」
「ふぇ?獣人達を助けに……⁈」
ジャスター侯爵は俺達の言葉に驚き呆然としている。
『ようしっ!皆俺の背中に乗れ』
「スバル!外に出てから大きくなってくれよ?」
『分かってるって!この屋敷を壊したりしねーって!』
俺達はクズス・ギルー伯爵邸に向かった。
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