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本編 燦聖教編
青色の塔 ①
しおりを挟む残り二つの貴族邸はジャスター侯爵同様、獣人達を奴隷としてではなく、召使いとして人族と変わらぬ仕事をさせ大事にしていた。
獣人達は皆、貴族邸で残ると言ったので隷属の首輪を外し貴族邸を後にした。
良かった……貴族全てが屑ではなくて。
クズス・ギルー伯爵以外の貴族は皆、獣人達が少しでも助かればと獣人奴隷を購入していた。
ギルー伯爵の処罰はこの街の人達に任せよう。
とりあえずは中央の塔で燦聖教の奴等と一緒に纏めて縛ってある。
「さてと……青色の塔に向かうか」
青色の塔の周りを囲むように貴族の屋敷が建っている。
青色の塔が聳え立つこの場所は、元々は広大な美しい森が広がっていたそうだ。
「森には良い薬草が沢山生えていて、貴族達の収入にもなっていた」とジャスター侯爵が教えてくれた。
今は森などなく頑丈な外壁でぐるりと囲われた燦聖教の本拠地、青色の塔が建っている。
『あの塔にどうやって行く?俺の背に乗って空から行くか?』
『あの塔全て壊しちゃうのはどう?』
三号が何やらまた物騒な事を言い出した。
「とりあえず門から正面突破してみんか?彼奴らがどんな仕掛けをしとるのか気になるしのう……」
パールは燦聖教の魔道具が気になる見たいだな。
「よし!パールの案で行こうか」
『正面突破ジャイ』
『我らについてくるコブ』
ジャイジャイ♪ジャイコブ♪ジャイジャイジャイコブ♪
青色の塔に入る入り口は一つ、正門から入るしかない。
正門は魔道具を使い自動で開閉出来る仕組みになっているみたいだ。
「中々面白い魔道具の使い方をしておるのう……じゃがまだまだ」
パールはそう言うと門につけられている魔道具を外し、門を切り裂いた。
大きな分厚い鉄で出来た正門が細かく砕かれて行く。
「この魔道具はまた後で何かに使わせて貰うのじゃ」
パールは魔道具を回収し中に入って行った。
『中に入るジャイ』
皆パールに続き中に入って行く。
門から敷地内に入ると、真っ白なタイルが敷き詰められただけの何もない広い庭があるだけだった。
「何もないな」
「そんな事ないぞ?ワシらを歓迎してゴーレムが出迎えてくれておる」
ゴーレム?石像など何処にも無いぞ?
ゴゴゴゴゴゴッ……
異音と共に地面が激しく揺れ……土の中から三メートルはあるゴーレムが十体現れた。
「ゴーレムはワシに任せるのじゃ!」
『カスパール様!私も手伝う』
『主、俺の背中に乗って!』
スバルがパールと三号を背中に乗せゴーレムに向かって飛んで行く。
次の瞬間、青色の塔入り口ドアが開き、中からジャイコブウルフの群れが百匹程走り出て来た。
皆額に魔石を埋め込まれている。
『ほう……我らに仲間を仕向けるジャイか』
『我らに数で勝てると思うコブか?』
いつも陽気なハクとロウが仲間の異変に気付き怒っている。
ジャイコブ達の悲痛な心の声が聞こえて来る。皆痛い苦しいと声を上げている。
ハクとロウがジャイコブウルフの群れに走って行く。
「ハク、ロウ!何をする気だ?」
『主様ここは我らに任せてくれジャイ!久々に許せんジャイ』
『そんな魔石如きで!我ら誇り高きジャイコブウルフを操れると思うなコブ!』
ハクとロウが同時に桁魂声で遠吠えをした。
その声に反応する様にジャイコブ達の動きがピタッ!っと止まる。
『ここからジャイ!』
『仕上げるコブよ!』
ジャイジャイ♪ジャイコブ♪ジャイジャイジャイコブ♪ジャイジャイ♪ジャイコブ♪ジャイジャイジャイコブ♪
ハクとロウによる渾身のジャイコブダンスが始まる。
何だこれ……ジャイコブウルフ達は、ハクとロウのダンスを身動きもせず必死に見つめている。
一体のジャイコブウルフがハクとロウのダンスに混ざるとそれを機にジャイコブウルフ達が一斉にハクとロウのダンスにシンクロする……。
ジャイコブウルフによる壮大なダンスが始まった。
ジャイジャイ♪ジャイコブ♪ジャイジャイジャイコブ♪ジャイジャイ♪ジャイコブ♪ジャイジャイ♪ジャイコブ♪
ジャジャーイ♪
初めて会ったとは思えない程ピッタリ息のあった壮大なダンスが終わった。
気がつくと聞こえていた悲痛の声は聞こえなくなっていた。
『主様!コイツらはもう我らの仲間ジャイ!』
『もう悪さはしないコブ』
ハクとロウはダンスで百匹以上いるジャイコブウルフ達を、仲間にしてしまった。
何これ……ダンスで魔石を浄化して魔獣兵器を仲間にするとか……そんな事出来るの?
ジャイコブウルフ……訳わかんないよ!
ジャイコブウルフ達の額に埋まっていた禍々しい魔石は浄化されキラキラ光輝いていた。
異空間の仲間に新たにジャイコブウルフが百体が加わった。
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