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本編 燦聖教編
獣人達のその後
しおりを挟む「わっ!おっお帰りなさい」
突然目の前に俺達が現れたので、ジャスター侯爵はビックリして腰を抜かしてしまった。
「ああっ!ロン!ルウ!無事だったのね」
一人の獣人女性が、一番酷い拷問を受け心が壊れてしまった子供達二人に駆け寄り、ギュウッと愛おしそうに抱きしめる。
「ロン?ルウ?どうしたの?何で何も……ねぇ?いつも見たいに笑って?」
獣人女性は涙ながらに話しかけるが、子供達の反応はない。
「あの……この子達と貴方の関係は?」
俺は獣人に話しかけた。
「私はこの子達の姉です。ロンとルウは双子の兄妹なんです。
私達の両親はこの子達が生まれてすぐ事故で死にました。
歳が離れているので、私がこの子達を母親代わりに育てていました」
この獣人女性だって俺と同い年くらいにしか見えない、若いのにしっかりしているなぁ。
しかし……この子達に何があったか正直に話して良いんだろうか……。かなり酷い内容だ。
「私達は一緒に燦聖教に捕まり奴隷にされたんですが、この子達が先に買われて行ったのです。
私はジャスター侯爵が購入してくださり、このお屋敷で平穏に暮らしておりました。
先に買われたこの子達の事が心配で、ずっと気になっていたのです。
ロンとルウに一体何があったんですか?」
俺は何て答えれば良いのか分からずパールに助けを求める。
「パール……」
「ふうむ。お主は今からワシが言う話をちゃんと聞けるか?
この子らの話は過酷な内容じゃ……それでも知りたいか?」
パールから過酷と言われ獣人女性は思わずたじろぐが、真っ直ぐにパールを見る。
「知りたいです!」
獣人女性の決意を確認し、パールはギルー伯爵邸で見た事を、ありのまま伝えた。
獣人女性は震えながらも話を必死に話を聞いていたが、我慢が出来ず泣き崩れてしまった。
「私だけっ……のうのうと幸せに暮らしてる間っ……ごのご達は……どれほどの恐怖と痛みを……ふううっ。
ごのごだちをっ!ロンとルウを助けてくれてっ……ほんっ本当にありがとうございます!
わだっ私がきっとこの子達の心を取り戻して見せます!」
獣人女性は泣きながらも必死に立ち上がると、俺達に礼を言い深く深くお辞儀をした。
「それでじゃ?この子達の体や心を、奴隷にされる前に戻す事も出来るぞ?どうする?」
「えっ?はっ?戻す?」
獣人女性はパールの言ってる意味が理解出来ない。
その気持ちは分かる。普通ならあり得ない事を、パールは話してるからな。
「じゃから……この子達は今何歳じゃ?」
「拐われたのが五歳だから……今は七歳くらいだと」
七歳だって⁉︎どう見たって四、五歳くらいにしか見えない。
この子達は二年間の時が、止まっていたのかも知れないな。
「この子達の体と心を五歳の時に戻すと言う事じゃ。さすればまだ何もされておらん。
心も体も壊れる事などない」
「そっそんな……事が……可能なの⁈……時を遡るなど……神の領域!貴方様はいったい……⁉︎」
「どうするんじゃ?するのか?せんのか?」
獣人女性は真剣な眼差しでパールを見つめ
「お願いします!この子達の時を戻して下さい!」
パールはニヤリと微笑むと魔法を発動した。
《リ・ウインド》
子供達の体が光輝く……眩い光が収まると。
子供達の体は先程よりもふっくらし、頬はほんのり桃色の肌艶も良い姿で現れた。
「ああっ……神様!ありがとうございます」
獣人女性は泣きながら子供達を抱きしめる。
「……んっ……んん?」
「……ふぁあ……?」
子供達が目を覚ます。
「ねえちゃ?何で泣いてるの」
「どこか痛いの?」
「ああっ!ロンっルウ!良かった……ああっ」
「どしたの?ねえちゃ?」
「何かされたの?」
ロンとルウは泣きじゃくる姉が不思議で、意味が分からず困っている。
「ーーふふっゴメンね?姉ちゃんは嬉しくて泣いてるだけだから」
「ねえちゃ嬉しいの?ならボクもうれしっ」
「ルウもっ!うれしっふふっ」
先程まで無表情だったとは思えない程に、ロンとルウは無邪気に笑う。
「良かった……笑ってる……すんっ」
俺は太陽の様に眩しく笑うロンとルウを見て、貰い泣きしてしまった。
ふとパールを見ると同じ様に貰い泣きしていた。
⭐︎★⭐︎★⭐︎★⭐︎
「あのっ貴方様達は、神様だったのですね。この子達を助けて頂きありがとうございます」
「「「「「神様!ありがとうございます」」」」」
ジャスター侯爵と獣人達が俺達に頭を深々と下げた。
「ちょっ神って⁉︎」
「分かっております。猫の姿や獣人、人族と、その姿は世を忍ぶ仮の姿でありましょう。
我々はこれ以上何も言いません。神様を困らす事はしたくありませんから」
いやいやっ困らせてますよ?俺は神様じゃないからな!
たが……もう何を言っても無駄だから何も言わないけどな?
これも全てパールの魔法が神懸かってるからだ。
俺だって同じ立場なら神様って思っただろう。
いつも一緒にいるから当たり前になってるけど、それ程パールは凄いんだ。
仕方ないよな。
グウウーーッ!
銀太の腹の音が鳴り響く。
『主~我は腹が減ったのだ』
スープを飲んだだけだもんな。そりゃお腹空くよな?
「よっし!今から肉祭りだー!」
『やったのだっ肉祭り!』
「おおー!ワシは米も一緒に食べたいのじゃ」
パールは最近米にハマっている。どんな料理も米と合わせて食べている。
「了解!米も炊くな」
ジャスター侯爵や獣人達は肉祭り?っと不思議そうな顔をして居たが、焼き台を出し肉を焼いて行くと……余りにも美味しそうな肉の焼ける匂いと音の攻撃に、堪らず皆焼き台に群がり必死に肉を笑顔で食べていた。
肉祭りは大好評で終わった。
後で何の肉が知りジャスター侯爵は腰抜かし、また皆から拝まれたのは言うまでもない。
だって聖獣達がうまい肉しか食べたくないと、最近はワイバーンしか狩ってこないんだもん。
あれっ?所で三号やスバルそれにジャイコブ達が、まだ帰って来てないな。
ーーまさかまだギルー伯爵にお仕置きしてる……とか?
イヤイヤ流石にそれはないよな?
もう二時間以上経ってるし……。
予感は的中するもので。
アイツらはパールが呼びに行くまで、ずっとお仕置きをしていた。
怖くてどんな事してたのかは聞けないけど。
さぁ!残すは青色の塔のみ。
燦聖教の本拠地に乗り込みだ!
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