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本編 燦聖教編
シガーの森 ②
しおりを挟む俺達は今、燦聖教が作った村の前で潜んでいる。
今、村はパニック状態だ。突然轟音と共に蠱毒が忽然と姿を消したのだ。
燦聖教の者達は何が起こったのか理解出来ず、村の周りや蠱毒があった場所を走り回っている。
俺達はその様子をひっそりと見ていた。
「どーする?燦聖教の奴等今は点々と散らばっていて、このままじゃ全員を捕まえるのは手間だぞ」
「そうじゃのう……とりあえず司祭を捕まえるか?」
「何処にいるか、分かるのか?」
「分からんが偉そうにしとるやつは、大概一番綺麗な建物におるはずじゃ」
「ぷっ……確かにな!」
村の中は、大きな倉庫の様な建物が三つ、四角い三階建ての大きな住居が一つ、ここでこの村の燦聖教の奴らは寝起きしているみたいだな。
最後に青色の綺麗な塔が一つ。
ローデンブルグにあった、青色の塔と同じ作りだ。
司祭は十中八九この塔に居るだろうな。
「じゃあ、目指すはあの青色の塔だな?」
「そうじゃの行くか」
今回は正面突破だ、皆で村の入り口から堂々と入って行く。
銀太とキラそれにベヒィと、迫力満点のメンバーなのに、スバルまでグリフォンの姿に戻り……はっきり言って、怖すぎる!
あっモスも一緒に行くって聞かないからついて来たけど、何もする事ないと思うぞ?
案の定村の中に入ると、銀太達に気付いた燦聖教の奴らは、逃げ惑い次々に震え上がり失神して行く。
阿鼻叫喚地獄絵図とは、まさにこの事だ。
皆でただ村を歩いてるだけなんだけどな。
大きな倉庫に近づいた。どうする?って聞こうとしたら……
キラが突然咆哮を上げたと同時にドラゴンブレスをはいた。
「ちょーーー!キラ何してんのっ」
『大丈夫…中に…魔獣は…いない…燦聖教だけ…バッチリ』
バッチリじゃないよっ!
目の前にあった大きな倉庫は、消え去ってしまった。
真っ黒に焦げた焼け跡を残して……。
うわぁ魔獣達はいないけど、燦聖教の奴等は居たんだろ?
黒い地面しかないから良く分からないけど……。
キラよお前むちゃくちゃするな。
銀太達にちょっと似て来たぞ?
「三十人前後燦聖教の奴等がおったみたいじゃの。
まぁ雑魚じゃしええじゃろ。
この倉庫は魔道具を使い、穢れた魔石を作っておったんじゃろうの。
じゃがキラのドラゴンブレスで、穢れた魔石も魔道具も無くなったみたいじゃの」
「そうか。じゃあまあ……良かったのか?」
『おっ!コッチの倉庫は魔獣達が沢山集まってるぞ?変な匂いもかなり強い』
『もう一つの倉庫は、強そうな魔獣達の気配がするのだ』
スバルと銀太が、残り二つの倉庫には魔獣が沢山居ると教えてくれた。
あれだよな?
前の村にもあった弱い魔獣達を集めて、魔石を作り出していた倉庫と同じだな。
もう一つはきっと、魔獣兵器にされた強い魔獣達が集まった倉庫。
「銀太よまずはコッチの倉庫を浄化してくれ」
パールが魔獣達が多数いる倉庫を浄化してと銀太に指示する。
『分かったのだ』
《セイグリットキュア》
銀太が浄化魔法を発動し、靄ががっていた空気がスッキリし妙な匂いもしなくなった。
「凄いな銀太!」
『これくらい余裕なのだ』
その時だった!大きな倉庫から魔獣達が扉をぶち壊して、中から溢れ出て来た。
正気に戻った魔獣達は、近くにいる銀太達の強さに気付き、慌てふためき必死に逃げているのだ。
あっという間に倉庫の中は、魔道具を残して空っぽになった。
「ふふっ本当凄いよ、お前達!
燦聖教が捕まえてた魔獣達を、怖くて逃げたとはいえ、何もせず一瞬で助けちまったな」
「じゃっこの倉庫はもういらねーな?」
《エクスプロージョン》
ドゴォォォォォォォォォォンッ!
爆音と共に倉庫は消えて無くなった。
『この前三号が使ってて俺もちょっと使って見たくなったんだよな』
スバルよ?使って見たかったって軽く言うな。
お前達、建物全部壊して行くつもり?
「次は最後の倉庫に行くか」
建物の中に入ると案の定、沢山の檻の中に魔獣達が入れられていた。
手前の部屋にある檻は、まだ兵器にされてない魔獣達だな。
モスが話かけている。知ってる魔獣がいたのか?
「モスの知り合いか?」
「このキングラビットは、ワテの代わりに捕まってしもたんや。
まぁ結局ワテも捕まり、あんな訳分からん所に入れられてしもうたんやけど……」
「そっかじゃあ皆を早く檻から出してあげないとな?」
檻の中で魔獣達が銀太達を怖がって震えてるので、大丈夫だ味方だとモスが説明して行く。
魔獣達は檻から出ると、俺達にありがとうと言う様に頭を下げ去って行った。
奥の部屋に行くか……。
中に入ると……魔獣達の辛そうな声が聞こえて来る。
一番奥に、両手両足を鎖で繋がれ、頭から血を流し死にそうなアウルベアが居た。
何て事するんだよ。
俺はシシカ村近くの森で出会ったアウルベア達を思い出す。
「助けてやるからな?」
ーー痛い……お願い……殺して
アウルベアの悲痛な声が頭の中に直接聞こえてくる
「大丈夫だからな?俺が助けてやるから」
ーームリ……痛い……助からない……お願い……殺して。
《リザレクト》
魔法でアウルベアの体を治し、魔石を浄化する為に、アウルベアに埋め込まれた魔石を撫でる。
ーー何で?痛くない……頭も……お前の手気持ち良い……
「もう大丈夫だからな?」
俺はアウルベアを繋いでいた鎖を全て壊した。
「さっこれで好きに動けるはず」
ーーお前……好き……
「ふふっそうか?ありがとうな」
俺はアウルベアの頭を撫でてやる。
丸いしっぽがぴこぴこと動く。
「ティーゴこっちにいる奴らの浄化も頼むのじゃ」
「任せて!」
俺は部屋中の、魔獣兵器にされた魔獣を浄化して回った。
部屋に居た、三十匹以上いる魔獣達の浄化が終わった。
「ふう……」
次は本拠地に乗り込みだ!
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