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本編 燦聖教編
楽園
しおりを挟む「こっここは……!?」
メフィストは余りの驚きに目を丸め異空間の入り口で固まっている。
「ボサッと立っておらんでさっさと進まんか」
パールに早く行けと急かされ慌てて異空間に歩み寄るメフィストだったが、動揺が隠せない。
中に入ってもキョロキョロと周りを見回し、挙動不審な動きをしている。
それは一緒に入った獣人の子供達も同じで中を見て驚き固まっていた。
そんな三人の姿を、ティーゴはどこか少し遠い目をし見ていた。
もう自分は慣れたけど、確かにこの異空間の世界は異常だよな。扉を開けると違う世界が広がってるんだもんな。
「魔王様……ここは桃源郷か楽園と言われる場所でしょうか?」
驚きを隠せないメフィストに、パールは子供の様に無邪気な顔で笑いながら答える。
「ははっ……この場所に名前は無いんじゃ、まぁ名付けるならティーゴの楽園って所か?」
パールは少しニヤけた顔をし、勝手に名付ける。ティーゴがすぐに反応するのを面白がって。
「あっこらっ!また悪ふざけして変な名前付けて」
「変じゃなかろう?ぷぷっティーゴのっ……らくっ」
パールは笑い肩を震わせている。
「ほらっ笑ってるじゃんか!……ったく」
そんな二人のやり取りをメフィストは微笑ましく見ていた。
「おっ?その子供達が新しく入った獣人の子供か?」
アレクが獣人の子供を連れにやって来た。
これが異空間にメフィスト達を連れて来た一番の目的だ。
獣人の子供達の両親が、今までに助けた獣人の中に居るかも知れないからだ。
アレクは今から集落に子供達を連れて行き、両親探しを手伝ってくれる。
「もうな?子供と逸れた大人獣人達を集めてるんだ。その中にお前達の父ちゃん母ちゃんが居たら良いな」
「父ちゃ…と母……ちゃん」
アレクの言葉に声を詰まらせるリュカ……尻尾が上下に激しくブンブンと動き嬉しいのが分かる。
アレクはリュカとルイを抱き上げ歩いて行った。
「じゃっちょっとコイツら預かるよ」
「ああっ頼んだよ!」
メフィストは安心したのか、その様子を優しい瞳をして見つめていた。
その姿は魔族には見えなく、メフィストの方が天使じゃないかと思えるほどに美しかった。
「さてと……じゃ?メフィストよワシはお主に人族についてよーく話をせんといかん。もっと詳しくの?」
「人族についてですか?」
「長くなるからのあの椅子に座って話をしようかの。ついて来るのじゃ」
「はい」
家の外にある、皆でご飯を食べる場所の椅子に座り話し始めるパール。
「ワシは人族に手を出してはいかんと言うたが、それは悪事も何もして無い者の事を指していた。分かるか?」
「はい……私は悪事を働く人族に出会いました」
メフィストは何かを思い出したのだろう。言った後に俯き唇をギュッと噛み締めた。
パールはそんなメフィストに色々な話をした。
燦聖教と言う悪の集団がこの国の民を苦しめている事、人族がする色々な悪事の種類などだ。
パールの話は二時間ほどかかったのではないだろうか……
「まだ教え足りないが、今日はこれくらいじゃろうかの」
パールの話がひと段落すると……。
メフィストは立ち上がり、パールの目を見て熱く語る。
「魔王様!おしおきとやらを、是非とも私めにさせて頂きたいのです!私をこんな目に合わせた奴らに……ええとぎゃふんと言わせてやりたいのです」
それを聞いたティーゴは慌ててパールを見る。
パールは口笛を吹きながらよそ見をする。
パール!一体どんな説明したんだよ、何だよギャフンって?
それにお仕置きの意味ちゃんと本当に理解してるか?本当にメフィストにお仕置き任せて大丈夫なのか?
メラメラと闘志を燃やすメフィストを横目に、不安が拭えないティーゴであった。
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