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本編 燦聖教編
メフィストの思い
しおりを挟む「さぁ中に入りましょう」
ニコニコとメフィストは中に入ろうと促すが、ティーゴとパールは足が地面にくっ付いたかの様に動こうとしない。
「行かないのですか?」
メフィストは不思議そうにティーゴ見る。
あの中に入って大丈夫なのか?真っ黒だぞ?呻き声も聴こえてくるし……パールを見ると同じ様に固まって居る。俺はパールに話しかける。
「……パール中に入るか?」
「へっ?あっ……ああっそうじゃの」
流石のパールも少し驚いたのか動揺していた。
ティーゴとパールは重い足取りでメフィストのいる所に向かった。
「扉も瘴気まみれですので、魔法で開けますね」
メフィストが魔法で扉を開け中にスタスタと入って行く。
その後をティーゴとパールが続く。
「うわっ!何だ」
中に入り思わず声が出るティーゴ。中の部屋は広く天井の高いホールになっているのだが、瘴気により広い空間全て真っ暗だ。
だがティーゴが驚いたのはそこじゃない。
ホールに倒れている人達を見て驚いたのだ。
その姿は皆口から泡を吐きピクピクと痙攣している者や、ずっと発狂し叫び声をあげている者、皆死んではいないが苦しんでいるのは一目瞭然。
「メフィストこの状況を説明してくれないか?」
「ああ……この人達は夢を見ているのですよ」
「……夢?」
夢ならあんなに叫び苦しむ前に目が覚めそうなもんだけど……
「彼等はね、自分達が今までにしていた事を夢で同じ様に体験しているのです。この夢は自分達がした悪意ある行動全てを、同じだけ味わうまで目が覚める事はありません。これの怖い所は夢だが痛みもちゃんと感じるんです。ふふ」
そっそんな怖い魔法あるの?!夢を操るって……。
「これは夢魔である私の特殊スキルです」
「ああっそうじゃった、メフィスト夢魔じゃったな!夢を操る事が出来るんじゃよな」
これは魔族の中でメフィストだけが使う事が出来るスキル、この力のおかげで四天王に選ばれたのだ。
「それでこの人達はどうなるんだ?」
「自分の悪事を全て体験し終えるまでは目覚めません」
「ほう……なんとも怖い能力じゃのう。じゃが自業自得じゃの」
「さぁ屋敷にいる獣人達を見て周りましょう」
「そうじゃな。じゃがこの黒いままはちときみが悪い」
パールは壁や天井を見回しながらそう言うと、浄化魔法をかけた。
「わっ眩しっ……」
室内が光り輝き目が開けられない。
「ふう……ちょっと綺麗になりすぎたがまぁ良いじゃろ」
「なんだこれっピカピカじゃないか!メフィストといいパールといい……やる事が桁違いだな」
ティーゴは少し呆れた様にパール達に言うが、パールはティーゴの方が色々と桁違いと思うんじゃけど?と言うような表情で見返した。
ホールで倒れもがいている人達や一階にいる全ての夢魔に犯された人達を奥の部屋に集めた。
そして獣人達や正常な人達をホールで待っている様に促した。
中には真っ青に少し震える者や何も喋れない者も居た。
そりゃそうなるよな突然真っ黒の瘴気に覆われたのだ、怖いよな。
悪人達は倒れ苦しみ出すしなぁ……
「その者達には悪い事をしたな……そうだ」
メフィストが手をかざすと白い煙りの様な膜が獣人達や人族の頭を覆う。
膜が消えると獣人達から恐怖や震えなどの表情が消えた。
「何をしたんだ?」
ティーゴは不思議そうにメフィスト見る。
「恐怖の記憶を食べたんだ」
「そっそんな事できるのか?」
「ああ、そして食べた記憶を与える事も出来る。この様にな」
メフィストはニヤリと笑うと再び手をかざす、すると白い煙りの様な物が出て来て奥の部屋へと飛んで行った。
「おまけだ」
すると奥の部屋から再び悲鳴が聞こえた。
うわぁ……おまけ貰った人達お気の毒に。
「さぁ二階に行きましょう。この館の主【ルウナ侯爵】は三階にある一番大きな部屋にいる筈です」
メフィストは館の主ルウナ侯爵と言った時に少し険しい顔をした。ソイツに何かされたんだろうか。まだ今は憶測でしかないので何も聞けないが、まずは二階だな。
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