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本編 燦聖教編
研究所
しおりを挟むティーゴとパールはミナトゥーク街西の門を出て、研究所がある森に向け街道を西に歩いて居た。
「研究所はどこらにあるのかな?」
「森に入り気配探知すればすぐに分かるじゃろう。今回はティーゴが探知してはどうじゃ?」
「俺が?やった事ないけど出来るかな?」
「初めは皆やった事などない、使ってみてこそ訓練になるんじゃ!」
「そーですね。パール先生」
ティーゴは少しからかう様に返事を返す。
「こりゃふざけるでない!ワシは真剣にじゃな?」
「ぷぷっ分かってるって!直ぐ怒るんだから」
二人は仲良く戯れ合いながら三十分程歩くと、森の入り口に到着した。
「さぁ?ティーゴ探索魔法を使って人が集まってる場所を探すのじゃ!魔物の気配と人族の気配を間違えるでないぞ?」
また簡単に言って……パールには簡単でも俺には難しいんだからな?
「まずはうすーく自分の魔力を周りに広げて行くのじゃ、分かるか?」
「うすーく?」
こうかな?じわじわと……
「おおっ!そうじゃ。でも魔力が強い、それじゃと魔物達に感付かれるぞ!もっと弱くじゃ」
「もっと?!」
難しい事簡単に言うなぁ……あっ!分かったかも!?
「パールこうか?」
「おおっそうじゃ。後はそれを意識せずとも常に発動出来たら完璧じゃの」
常に!?また無理難題を……ん?この集団っおおっ凄い建物の形状まで分かる!
「パール!研究所の場所が分かったぞ」
ティーゴは嬉しくて堪らない。探索で捉えた人族や建物は、ティーゴにとって初めての感覚だった。
魔力を通じて遠くまで見える不思議な感じ。
そこに何人の人族が居て、建物が何棟あるのか?全て感覚で分かるのだ。
「ふふっ北西の方向に五十人ほどの人族の気配と、建物がニ棟立ってるのが分かる!パール俺の後から付いて来て」
「はいはい」
ニコニコと嬉しそうなティーゴの後ろを、少し眉尻を下げ優しい表情をして付いて行くパールだった。
十五分も歩くと研究所に到着する。其処には大きな倉庫の様な建物が二棟並んで建っていた。
その建物を頑丈な塀がぐるりと囲っていた。
まるで要塞の様な強固な塀、門からしか出入り出来ない様になっている。
外を歩いている人の気配は全くない、皆建物の中に居るみたいだ。
「パールどうするんだ?」
「面倒じゃからの?とりあえず皆に眠って貰う、その間にこの研究所を見てまわろう」
「こんな所から眠らせる事出来るのか?」
「それも出来るが、ちぃと手間じゃから中に入ってから睡眠魔法を発動する。よし門を開けるぞ」
「おうっ!」
パールが魔法で門を……壊した!
「ちょっ!?パール?それって開けるって言わないんじゃ?」
「良いんじゃっ!さぁ中に入るのじゃ」
パールが足を一歩踏み入れると……!
ビーーッ!ビーーッ!ビーーッ!
耳を劈く様なうるさい警報音が鳴り響く。
「なっ!?」
「これは侵入者が入って来たら鳴る仕組みじゃ。五月蝿い!」
パールが五月蝿いと言うとあちこちで爆発が起きる!どうやら警報装置を爆破している様だ。
建物内からも、外の様子に気付いた黒マントを着た者が、走り出て来るが片っ端から次々に倒れていく。皆パールに睡眠魔法をかけられ、瞬殺で眠っていた。
「ようしっ!全員眠らせるのじゃっ!」
パールがそう言うと、白い霧の様な物が建物内に入って行った。
「よし、これで全員眠ったのじゃ」
「すげえ……そんな一瞬で」
それはティーゴ達が敷地内入り二分足らずの出来事だった。
「まずは、左にある建物の奥に行こう!」
「何でだ?」
「その場所は探索すると、何重もの結界が魔力や魔道具で張られておる。如何にもって感じの場所じゃろ?」
「確かにな?」
だがなパール?普通はな?そんな何重にも重なった結界がかけられた場所は、そう簡単には入れないんだぜ?
問題ないって顔してるけどな?
眠っている人達を避けながら建物内を歩いて行く、一つ目に入った建物は中で四構造に分けられ、部屋を通らないと次の部屋へは行けない仕組みになっていた。
次の部屋に入るにも扉に頑丈な鍵がかけられ、それをパールは壊しながら進んで行く。
「ここじゃ……!」
部屋の最奥にあった部屋の扉は俺が見ても分かるくらい、仰々しい扉明らかに他の部屋とは違う扉だった。
「パールどうやって入るんだ?」
「もちろんこうしてじゃっ!」
バチバチバチバチバチバチバチバチッ!
轟音と共に扉の上を雷が生きているかの様に走り回る。次の瞬間、扉は消し炭となった。
「すげえ……」
「ワシを誰じゃと思うておる!」
「大賢者カスパール様です」
「分かれば良いんじゃ、さぁ中に入るのじゃ」
中に入るとその部屋は沢山の書物で埋め尽くされていた。
そんな沢山の書物をティーゴとパールは片っ端から見て行く。
そしてある書物を手にとり固まるパール。
「何で……禁忌の書がここにあるんじゃ?」
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