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本編 燦聖教編
禁忌の書
しおりを挟むパールは本を手に取り固まっていた。その本の事をまるで知っているかの様にじっと表紙を見つめている。
「パールどうしたんだ?急に固まって」
ティーゴは、本を持ち固まるパールの姿を不思議に思い近寄って来た。
「この書物じゃが……」
パールは手に持っていた書物をティーゴに見せる。
「これ?」
パールが持っている書物は、この本の中身を知らない俺でも重要な本だと分かるくらい、高貴な見た目をしていた。
金糸で細やかな刺繍を施された、黒いベルベット生地で作られた表紙。
金糸で書かれた文字は、何て書いてあるのか全く分からない文字。
「コレはの?ワシがカスパールであった時代に禁忌の書とされ封印されし書物なのじゃよ」
「こっコレがか!?パールが前に話してくれた、世界中の王が集まり全ての禁忌の書物を封印し、二度と誰も見れない様にしたって言ってた本だよな?」
ティーゴの話にパールは大きく頷いた。
「そうじゃ。各国の王とその国一番の大賢者が一名ずつ集まり、ワシらしか知らぬ場所に封印した。そしてもし、その場所の封印を誰かが解いたらすぐに全員に連絡が行く様に作った。この本はその時に封印したワシが昔持っていた本じゃ」
「えっ!?何でそれがこの場所にあるんだよ?」
「分からぬ……が、燦聖教の奴らが何故禁忌の魔道具を作れたのかは分かった。ほれみろ?」
パールは別の本を取り出し俺に見せた。
「コレが禁忌の魔導書なんじゃ、この中に隷属の首輪の魔道具、魅了の魔道具などの作り方が書いてあるのじゃ!」
「これに!?だから燦聖教は隷属の魔道具やら魅了の魔道具やらを作れたのか」
「そう言う事じゃ」
「すごい魔導書があるんだな」
「この魔導書はどこの国よりも優れた魔道具の技術を持ち得た国【オルヴィエート】これはその国が作った本じゃ」
「オルヴィエート?そんな国知らないぞ?俺が生まれる前に滅びたのか?」
「滅びてなどおらん、オルヴィエートは禁忌の魔導書を封印すると、魔道の力を使い国ごと空に消えたんじゃ。今は天空の国オルヴィエートと言われておるが、知らんのか?」
「天空の国だって?!知らないよ。って事はオルヴィエートって国は今も空に浮かんでいるのか?」
「そうじゃ、ワシは天空の国となってから一度だけ遊びに行った事があるが、中々良かったのうって!ああっそれは三百年前の記憶じゃった」
「って事はもう浮かんでないかも知れないって事?」
「それは分からんが、ワシはまだ存在と思うとる」
今まで生きてきて、まだ知らない国があったなんて!
しかも天空の国だって?!何だよその楽しそうな不思議な国は行ってみたいに決まってる!………おっと今はそれどころじゃないな。
魔導書の話だよな。
「じゃあここにある書物は、各国から集められた、禁忌とされ封印されし書物って事か?」
「そうじゃ厳重に封印し、一人ではその封印も解けぬ様になったいた筈じゃのに……もう既に封印されし書物をニ冊も見つけてしもうた」
「じゃあ他にもあるかも知れないな?」
「そうじゃ!この書庫にある禁忌の書物を全て探すのじゃ」
「分かった!俺は何が禁忌の書物か分からないから高そうで読めない字の本を探してパールの所に持って来るよ!」
「頼んだのじゃ」
★ ★ ★
小一時間後……
「あーーっ!もう見つからないよっ!」
ティーゴは書庫に座り込む。久々に大量の本をみて頭が疲れた様だ。
「ふうむ……全部で四冊か。もうないと思うが、まだあったら困るからのう。この書庫丸ごと異空間に移動させよう」
「なんだよそれっ!じゃあ最初からそうすりゃ良かったじゃんか」
ティーゴは口を尖らせパールに文句を言う。
「まぁまぁ。ワシも久しぶりこんなに多くの古代書を見たのじゃ、少し興奮しての?すぐに思いつかなんだ」
パールはそう言って片目を閉じ、悪戯っ子の様な顔で笑う。
何故封印されし本を燦聖教の奴らが持っていたのか?
ティーゴ達はこの謎をこれから解き明かさないといけない。
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