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本編 燦聖教編
召喚された勇者達
しおりを挟む召喚された異世界人達は今、燦聖教の者達を五人引き連れダンジョンにレベル上げに来ていた。
「このダンジョンは中級クラスBランクダンジョンになります。階層も二十階層までしかなく、勇者様達であれば攻略も可能かと」
五人いる燦聖教の中で、一番位の高いマントを羽織る男ジークが興奮気味に話す。
この男は勇者達の補佐役を任せられている。勇者様の補佐役と言う大役に張り切っているのだ。
「ふうん?僕がいるから任せてよ、何てったって僕は勇者だからね」
「はいっ!ヒイロ様期待してます」
ジークは熱い眼差しでヒイロを見つめる。
ジョブが勇者だった少年宇治田緋色は召喚された時とは別人の様に流暢に話す。
異世界から召喚された少年達はこの世界に来て二週間がたった。
その二週間で全く性格が変わってしまったのがこの少年、ヒイロだ。
この三人の関係性はいじめっ子といじめられっ子。転移してからも二人はヒイロにちょっかいをかけようとするも、「勇者様に何をするのです!」っと周りの燦聖教に止められる。特に今一緒にいる男ジークがヒイロを甘やかし贔屓にするので手が出せない。
その所為で自分は特別だと勘違いしたヒイロ。
もとは言葉も少なくオドオドしている所為で、友達もいなくいつも誰かにウジ虫といじられる様な少年だった。
だが今は、自分が勇者であると言う自信、周りの自分を崇める態度に調子に乗り性格が百八十度激変した。
それが気に食わない葛井剛士(聖剣)と滝沢蓮斗(賢者)だが、勇者のジョブは特別らしく何も出来ないでいた。
「けっ……ウジ虫勇者様の実力見せて貰おうじゃねーか」
「何?レント今何か言った?」
「何も言ってねーよっ!さっさとダンジョンとやらをクリアしちまおうぜ!早く勇者様の実力を見せてくれよ」
レントが煽る様に叫ぶと、少し眉をピクリと動かし怪訝そうな顔をするヒイロだったが、何も言い返さず前に進んだ。
「そうだな?んで帰って綺麗な女達と美味い飯を食べてーなっ」
タケシは何も考えてない顔ではガハハと笑った。
この三人には緊張感が全くなかった。ダンジョンで命を落とす可能性だってあるのに……
「くそっ!」
(未だに偉そうにしやがって!今の僕は勇者なんだ、お前らなんかより偉いんだ!僕の凄さをダンジョンで分からせてやる)
勇者達がダンジョンを進むとゴブリンが八体現れた。
「ゴブリンですね、強い個体はいないので勇者様なら瞬殺ですよ」
ジークは簡単ですね。と背後に下がりヒイロ達だけで討伐させるようだ。
「何だこの気味悪い姿!紫色してんじゃんか。こんな奴をやるの?」
ゴブリンを初めて見て慌てるタケシ。
「ここは勇者様の実力を見せて貰おうじゃないか?」
そう言ってヒイロを前に出すレント。
「あっ……あわっ」
(実際のゴブリンってこんなに怖いの?ゲームだと雑魚キャラなのに!想像より大きいしっ僕より少し低いだけ、無理だよ!こんな怖そうなの倒せないよ!)
「あれぇ?勇者様ビビってんのか?」
「なっ……っ違っ!」
「じゃあ倒せよっ」
レントはヒイロをドンっと後ろから突きゴブリンの前に突き出した。
二体のゴブリンがヒイロに襲いかかる。
「あっ!うわっ?止めろよっコッチにくんなっ」
ヒイロは持っていた剣をむちゃくちゃに振り回した。
その剣先が偶然ゴブリンに触れると……ゴブリンの体が破裂した。
「へぁ?」
「さすが勇者様です。あんな無駄の多い剣捌きでゴブリンを破裂させる何て!私は感動しました」
ジークは興奮気味に話す。
「あっああっ」
(何が起こったんだ?)
ヒイロがジークの声に反応し後ろを向いたらその隙を狙って三体のゴブリンがヒイロを襲う。
「ヒイロ様!危ないっ」
ジークの声に反応し剣を後ろに振ると……!
三体のゴブリンが真っ二つに分かれぐちゃりと地面に倒れ消滅した。
「なっ何……」
(これが勇者の力!?剣を振っただけなのに……)
ヒイロは自分の手を見つめる。
「クソっ!ヒイロにばっかり良い所取られてたまるかよっ!」
タケシもゴブリンに向かって行く!
レントは魔法を使おうと杖をかまえる。
「えっと……魔法なんだっけ?雷のやつ……サン?サッ……そうだ!」
《サンダー》
強力な雷が二体のゴブリンに落ちそのまま消滅した。
その横でタケシの剣がゴブリンを細切りにしていた。
「何だこれっ!力入れて無いのに簡単に切れるっスゲエ!」
「見たか?遠距離から一撃だぞ?!魔法って凄えな!」
レントとタケシは興奮気味に話す。
勇者達の初めての討伐は成功したようだ。
このままダンジョンをクリアし、妙な自信をつけて行くのだった。
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