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本編 燦聖教編
お酒
しおりを挟むさてと……今から何しようかな?
今日はもう皆飲めや歌えやでどうにもならないだろうし、次の目的地に行くにも明日になるだろうしな。
まだ昼過ぎなのに気持ち良さそうにあちこちで昼寝している。
これも異空間が平和って証だな。
俺はあてもなく異空間をプラプラと歩いていると面白い集まりを見付けた。
キノ小人達とスパイダー達が森に帰らず獣人達と何やら楽しそうに集まって話をしているのだ。
あの尻尾は……キューとキュウタもいるな。
何やらワイワイと楽しそうだ。
何をしてるんだ?
気になり俺は思わずその集まりに近寄る。
「何やってんだ?」
いきなり話しかけると全員がビックリした様に振り向いた。
「ティーゴ!あー……見つかっちゃったか」
アレクが頭に手を置き「あちゃー」って頭を振る。
いやいや見つかったも何も、隠したいならあんな目立つ所で集まってたら気になるだろ?
「俺達な?皆で新しいお酒を開発してたんだよ。キノ小人の長マッタケさんが言うにはさ?米や小麦でもお酒が作れるらしいんだ」
「米や麦?」
麦は……エールの事か?エールまで異空間で作れたら最高だよな。米は知らないなぁ。
「ああ!と言うか何でも作れるんだ!」
何でも?どんな物を使っても酒が作れるって言うのか?
そんな話聞いたことないけど……キノ小人の伝統の技術とかあるのか?
「それでな?米でお酒を作ってみたんだよ。今はそれの試飲会をしてたんだ。美味かったら後でティーゴには飲んでもらおうと思ってたんだけどな?一緒に試飲だな」
「そうだったのか、それじゃあ俺も仲間に入れてくれ」
「おうっ!」
「はいどーぞ」
アレクの恋人シファさんが、俺に米のお酒が入ったグラスを渡してくれた。
米酒……見た目は水みたいに透き通ってるな……どんな味がするんだ?
俺はドキドキしながら一口呑んだ。
「…………これはっ!なんともアッサリした味だ。それでいて深みがある。美味いよこの米のお酒」
余りの美味しさに勢いよくゴクッと飲み干した。
「ああ本当に!飲み易くてレインボーマスカッシュほど甘くは無いが、この米の甘味がほんのりある。俺は米酒気に入った」
アレクは早速米酒をおかわりしていた。
『妾はレインボーマスカッシュの方が好きかのう……甘味がもっと欲しい』
『うむ……主様の言うとうりレインボーマスカッシュが良いな』
エンシェントスパイダーのニジやキングスパイダーのエンは甘いお酒が好きみたいだな。
好みが分かれて面白い。
『ふふふっ!まだまだあるっキュよ?ティーゴしゃま?ビックリしまキュよ?』
『そーでキュ!僕達いっぱい作ったんでキュ』
キューとキュウタが大きな尻尾をぷりぷりさせながら自分達よりも大きな酒樽を運んで来た。
キューとキュウタは酒樽をティーゴの前に二つ並べた。
『これはドラゴンフルーツで作ったお酒でキュ』
『これはキューの大好きなトゥマトで作ったお酒でキュ』
えっ?ドラゴンフルーツにトゥマトだって?トゥマトは野菜だろ野菜でもお酒が作れるのか?
『ふふふ……ティーゴしゃま不思議そうでキュね?それはでキュね?』
『なんと!ここにいるキノ小人の金色の胞子をかけると、何でもお酒が作れるんでキュ!』
キュウタがマッタケさんを抱き上げた。
「わっ!?」
急に抱き上げられ驚くマッタケさん。
「マッタケさんの胞子?」
「はい……私の金色の胞子を成長した食べ物にかけると何でもお酒になります」
マッタケさんは頭をぽりぽりと人差し指で掻きながら、少し気恥ずかしそうに話す。
「すごいよ!何からでもお酒が作れるとか楽しいな」
これは皆喜ぶぞ!
それにどの作物で作ったお酒が一番美味しいのか?とか色々試したくなる。
『これはキューが作ってみたいと思って作った、トゥマト酒でキュ!呑んでみて下しゃい』
キューの一押しか……どれ?
樽からお酒を出しグラスに注ぐと、真っ赤な色をしたお酒が樽から流れ出る。
「うわっこれは美しいな」
俺はグラスに注がれたトゥマト酒を一口呑んだ。
「んんっこれは何とも! サッパリしてて、酸味もあって何杯でも飲めそうだな」
『ふふ……嬉しいでキュ!』
キューは自分より大きな尻尾をぷりぷりと振り嬉しそうだ。
「本当だな。これも美味いが俺は米酒が好きだな」
「私はこのトゥマト酒が一番好き。この爽快感はたまらないわ!」
アレクは米酒、シファさんはトゥマト酒を気に入ったみたいだ。
トゥマト酒を呑んでいると……キュウタが樽を叩きアピールする。
『僕の作ったドラゴンフルーツのお酒を忘れてもらったら困るっキュよ? さぁ呑んでみてっキュ!』
キュウタがドラゴン酒を注ぐ、何とも美しい橙色だ。グラスの中で宝石みたいに輝いている。
「うわっ! 今までで一番濃厚な甘さだ! レインボーマスカッシュより甘い」
『妾はこれが一番気に入った! 美味い。はぁ美味い』
『うむ……なんと言う濃厚で深い味わい……アレク殿次からはこのお酒と糸を交換しようではないか!』
ニジとエンはウットリとしながらドラゴン酒を味わっていた。
皆……其々好みがあるなぁ。俺はどれかなぁ?もう少し呑み比べたいな。ふふふ。
なんて考えてたら……むにゃ。
グラスを持ったままティーゴは、ニマニマと笑い眠っていた。
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