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本編 燦聖教編
ズルすぎる!
しおりを挟む勇者side
勇者達はティーゴの強さに驚きを隠せない。
弱そうな男を虐めようと考えていたのに、そうはいかなかった。
賢者のレントが油断していたとはいえ、一瞬で勝負がついてしまった。
これには勇者達の付き添いである、燦聖教ジークも納得がいかない。
闘技場にて勇者達の圧倒的な強さを知らしめる為の余興だと考えていたのに、逆に弱さを拡めてしまうのではと額から嫌な汗が流れるのだった。
勇者ヒイロ達が待つ待機室にレントが、燦聖教のローブを羽織り戻って来た。
流石に裸ではウロウロ出来ないからと、ジークが自分のローブを羽織らせ連れて来た。
「レントお前なにやってんだよ!あんなつまらない負け方してよ」
「うっさいなタケシ! ちょっと油断しただけだよ。まさか魔法を弾き返されるなんて思わなかったから!」
「あー……確かにアレはビビったな」
タケシが大きく頷いた。
「だろー? 次はタケシの番だぜ? しくじるなよ」
「勿論そのつもりだ!」
「でも彼はどうやらかなりの魔法の使い手と思われます。次の闘いで魔法を使われると厄介ですねぇ……」
「ーーぐっ……確かに」
ジークの言葉に少し弱気になるタケシ。
ジークは何か良い手はないかと、顎に手をやり少し考え込む。
「そうだ! コレを付けたら良いんですよ」
ジークはティーゴが受付に預けたはずの高貴なるオソロが入っている箱を机の上に出した。
「コレはティーゴとかいう少年が身に付けていた沢山の付与が付いたアクセサリー。これをつけたら何かされても、さっきの魔法みたいに弾き返してくれます! さぁタケシ様付けて下さい」
「お前っ! 悪い奴だなぁ? 預かるって言いながら奪ってんじゃねーか! ククッどれ?」
タケシは悪びれる様子もなく、箱の中にある数々のアクセサリーを掴もうとするも、触れる事すら出来なかった。
「あれ? 何でだ? 箱の中に手が入らない」
「何やってるんだ? タケシ」
代わりに勇者ヒイロが取ろうとするも同じ様に触れる事さえ出来なかった。
「なっ?!」
それを見たジークはある事に気付いた。
「こんな高価な魔道具を簡単に預けるなんて不思議に思いましたが……そう言う事ですか」
「何だよジーク? そう言う事って!」
ジークの言葉にタケシが驚き反応する。
「この魔道具達は、持ち主以外は触れる事さえ出来ない様に作られています」
「そんなっ! 折角あとで貰おうと思ってたのに! 付けれないんじゃゴミと一緒だな」
タケシは箱ごと壁に投げ付けようとしたが、手が思う様に動かない。
「あっ……なっ…?!」
「これはどうやら、壊そうとする事さえ出来ないようですね」
そんな凄い付与が出来る者がいるのか!? とジークは慄いたが、すぐにニヤリと笑い「後でティーゴを痛め付けて凄腕の錬金術師の事を吐かせれば良いだけだ」
ジークは先の未来を見据えて不敵に笑った。
だが勇者達は少し勘違いしていた。持ち主以外誰も触れられ無いのではない。
高貴なるオソロは、持ち主に悪意のある者達は触れたり壊したりする事が出来なくなっているのだ。
さらに凄腕の錬金術師は二人いた。
ティーゴのアクセサリーは全てデボラが作った物に、オーちゃんが追加で付与を重ねているのだ。
ティーゴが錬金術師を教えた所で、異空間にいるオーちゃんと合う事など到底無理な話しなのだ。
「じゃあ次の闘いはどーするんだよ? 奴が魔法を使ってきたら厄介だ!」
次の対戦相手タケシが、弱気な発言をする。
「そんな! タケシ様は聖剣です。魔法を使おうが相手になりません」
ジークの言葉に納得したのか勝ち気になるタケシ。
「そうかぁ……だよな!? 俺様があんな弱そうな奴に負ける訳ねーよな! レントと違って」
「なっ!? 俺は油断しただけだ」
そんな二人の会話を横目にジークは別の事を考えていた。
「聖剣が負ける訳はないが、念の為何か策を考慮した方がが良いかもですね……」
★ ★ ★
「はぁーっ」
俺は大きな溜息を吐くと、闘うためにまた四角い舞台の上に立った。
今度の相手も、ニヤニヤと嫌な笑い方してやがる。ええと聖剣タケシだったか?
何なんだこの異世界人って奴らは、みんな性格が悪いのか?
それとも性格悪い奴を選んで召喚してるのか?
俺がそんな事を考えていたら、審判の男がボロい剣を俺に投げてきた。
「あっぶな?いきなり投げるなよ!」
俺が少し怒り気味に言うも、審判の男はそんな事お構いなしに話し出した。
「次の勝負は、剣で闘ってもらう!剣以外、魔法の攻撃は禁止とする!」
「はぁぁ? 何だよそれ。そんな事聞いてないぞ! それに俺に渡された剣は今にも折れそうじゃないか!」
猛抗議するも審判の男は嘲笑うように俺に言った。
「その剣以外に今すぐ自分で用意出来るならどうぞ? ククッまぁ何も用意出来ないでしょうがね?」
ハイ聞いたぞ?自分で用意出来るならって言ったな?
「自分で用意出来るなら良いんだな? 後でそれはなしとかダメだからな」
「はははっ? 用意出来るんですか? この舞台から降りたら試合の負けになりますよ?」
審判はこの場に用意出来るのか?とバカにする様に笑う。その横で聖剣タケシもニタニタと口の端を上げ俺を見ている。
いま言った事後悔しやがれ!俺はアイテムボックスから【名工ドランが作った魔法剣】を取り出した。
「はっはぁぁぁー!?」
聖剣タケシと審判は、いきなり現れた強そうな剣に驚き後ろに後退すると、そのまま転けて尻餅をついた。
「ブッッ」
そのマヌケな姿に俺は思わず吹き出してしまった。
何でこんなかっこいい剣を持ってるか知りたいか?
これはな?
銀太と出会ったダンジョンをクリアした時に貰った、思い出のSランクの剣なんだよ!
使う事も無くて、ずっとアイテムボックスの中で眠っていたがな?
尻餅をついたまま、聖剣タケシがマヌケな顔して文句を言う。
「ずっずるだ!」
「ずるじゃねーよ! 審判が言ってただろ? 出せるもんなら出して見ろって! だから出したんだよ。アイテムボックスから!」
「なっ!そっそんな……お前アイテムボックス持ちなのか?」
「それが何か?で…どーするんだよ? 闘わないのか?」
「くそっ! いくら剣が良くても使う奴が弱くちゃ意味ねーからな? コテンパンにのしてやらぁ!」
タケシの殺気に気付いたのか、ポカンと口を開け座り込んでいた審判が、慌て立ち笛を咥えた。
ピィィーーーーーーーーーッ!
試合開始の笛の音が鳴った。
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