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本編 燦聖教編
謎
しおりを挟む「パール……やっぱりここに居たのか!」
「……ふむ?ティーゴか、ちぃと気になってのう」
あの後はいつもの如く、異空間の仲間達が集まってケーキ祭りになった。
みんなでワイワイ大騒ぎしながらケーキをしこたま食べた後、満足したのか聖獣達は好きな場所で気持ち良さそうに昼寝している。
ふと周りを見渡すと、パールの姿が見えない事に気付いた俺は、新しく作られた図書室にいないか探しに来てみたのだ。
「その手に持っているのは……禁忌の書物だよな?」
パールは禁忌の書を手に持ち何か考え事をしていたようだ。
「そうじゃ。森の研究所で見つけた書物。燦聖教の奴がどうやって封印を解いたのかが、ワシはどう考えても分からんのじゃ」
パールは眉を八の字に下げ困った顔をする。
魔王様の美しい姿でそんな顔しないでほしい。困った顔まで綺麗で対応に困る。
とりあえず場を和ませようと茶化して見る。
「パールにも分からない事があるなんて珍しいな」
「ふふっワシにじゃって分からん事はある。じゃが分からんから楽しい!」
パールは困り顔から一変し、ニヤリと含み笑いをする。
「その顔はやる気だな?」
俺はパールに向かって悪戯に笑いかける。
「ああそうじゃ!封印を解いた本人に直接会ってこの謎を聞くまでじゃ!」
パールは手に持っていた禁忌の書を机に置いた。
とうとう燦聖教の偉い奴らと対面だな。
少し緊張するが、長かった燦聖教の問題をやっと終わらせる事が出来るんだと思うと、心が奮い立ち自ずと武者震いで体が揺れた。
「ティーゴ!今から作戦を考えるぞ!」
「了解だ!」
作戦ったっていつもの正面突破だろ?俺もさすがに慣れてきたぞ。
★ ★ ★
ティーゴ達が作戦を立てようとする中、既にジーク司祭達は窮地に立たされていた。
王城に入る為の城門に人々が続々と集まっていた。中には武器を持った男達も複数いた。
このままだと無理矢理扉を開けられそうな勢いだ。
「なんたる事!王都に武器を持って押しかけるなんて!」
それを見たジーク司祭は声を荒げる。
「ジーク司祭様!このままでは門扉が開かれ中に街人が入ってきます」
門にいた兵士たちが狼狽えている。
「私に任せて下さい。すぐに一掃します」
ジーク司祭は右手を高く上げた。
「さぁ!魔獣兵器達よ。この者達を追い払うのです」
すると奥から魔獣兵器にされた多数の魔獣達が歩いて来た。
先頭はバイコーンに乗ったオーガやオーク達。
その後をドラゴンやキングウルフなどの魔獣達が後を歩く。
その数は優に百を超える。
いきなり王城の中に魔獣が現れたと勘違いした待人たちは驚き慌てふためく。
「あっあわっ!」
「やべえぞっ!王城に突然魔物が沸いた!」
「逃げろっAランク魔獣ばかりだっ!」
「何でいきなり?」
「いやだっ死にたくないっ」
いきなり現れた魔獣兵器に街人達は慌てて逃げて行く。
これが燦聖教が作った兵器だとは知らずに。
それを見たジーク司祭はニヤリと笑うと
「さあ!次の段階に移りますよ」
ジーク司祭は魔獣兵器を引き連れ奥へと戻っていく。
王城の外では魔獣兵器を見た者達が慌て逃げ惑うので、王都の街は一瞬でパニックと化した。
街の中心である王城に突如として魔獣達が現れたのだから……。
それは全て燦聖教が作り囲っていた兵器などとは、街の人達は思いもよらないだろう。
王都から逃げようと準備する者達で溢れかえり、この街から出る事の出来る唯一の跳ね橋に街人が集まっていた。
そこに白馬に乗った勇者ヒイロ達が、王都をゆっくりと歩き魔獣達は全て自分達が倒したと触れてまわった。
始めは疑心暗鬼になっていた街の人達も、いなくなった魔獣達。そして街の中央に無造作に置かれた魔獣達の死骸。
もちろんこの死骸となった魔獣は、勇者達が倒したと知らしめる為に一部の魔獣兵器達を殺め街の人たちにわかる様に置いた。
「勇者様が本当に?」
「我らを魔獣から守ってくれたのか?」
街の人たちは勇者達が守ってくれたと信じかけたその時、口から泡を噴いたミノタウロスが三匹突如現れ襲ってきた。
「ヒイロ様!今です」
ジーク司祭が声をかける。
「分かった!任せて」
「やってやるよ!」
「魔族に比べたら余裕だ!」
ミノタウロスを勇者ヒイロと聖剣タケシが剣で一刀両断し、背後から賢者レントが魔法で残りの一匹を倒した。
それを見た街の人たちから大歓声が巻き起こった。
ーワァァー!!勇者様ー
全てジーク司祭の考えた喜劇なのだが上手くいってしまった。
「よしっこっこれで!勇者たちの事も上手くいった!良かった……はぁ」
とりあえず一難は去った、この後大きな難がやって来るのだが、ジーク司祭はそんな先の事を考える余裕など残っていなかった。
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