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本編 燦聖教編
カリンとリィモ ②
しおりを挟む邪気? 初めて聞く言葉だな。
ふとパールの方を見ると、邪気を知っているのか眉間に皺が入り難しい表情をしている。
「邪気って……」
俺が呟くと……パールが反応する。
「邪気とはの? 人の負の感情。悪意のことじゃ」
「負の感情……?」
負とは何だ? 意味が分からないなと首を傾げ考えていると。
カリンが真面目な顔をして俺をみる。
「……そうです。兄が抜いた剣は負の悪意。その塊を封印していました。そして……その塊に兄の負の感情が引き寄せられて、剣を抜いた時、私達は負の塊に取り込まれました」
負の塊⁉︎
「じゃあ……あの黒い塊がグリモワールを操ってたのか?」
「操ってと言うかよりは、兄の負の感情を増幅し悪しき事しか考えられなくなってしまいました」
「じゃあ……グリモワールは今までして来た事は全て自分で……」
「はい。正しい事が分からなくされていたとはいえ、全て兄が考え起こした行為です……それを私は側でずっと見ていました。止めることも……叱ることも……何も出来ずに。ただ見るだけ。私も同罪です……兄のした事によってどれだけの人が亡くなり悲しい思いをしたのかと思うと……ううっ」
「カリン……お主はずっとグリモワールの側で見て来たのか。それなのに……良く心が壊れずにいてくれた。苦しかったじゃろうて」
「ふうっ……カスパールさ…ま」
カリンはまた泣き出してしまった。その横でパールは優しく見守り黙って頭を撫でていた。
兄の悪事を止めることも出来ずに……何百年もって……どんなに苦しかったんだろう。
グリモワールのした事は許せない。
でもそれが奴の本当にしたかった事じゃ無かった。
そんな事が分かった今。
俺はどうしたらいいんだ?
眠らされているグリモワールの目が覚めた時、その時の奴は俺が見てきた悪、グリモワールではないよなきっと。
もしかしたら、パールの弟子の普通の少年として目が覚めるのだろうか?
その後に自分がして来た悪事を聞いて、グリモワールは受け止める事が出来るんだろうか……心が壊れてしまうんじゃ。
せっかく妹のカリンが生き返ったんだ。
……なのに喜びよりも悲しみを背負うのか……? 俺はどうしたらいいのか何が正解なのか分からなくなってしまった。
「ティーゴまでそんな顔をして……」
俺が困惑してる事に気付いたパールが心配そうに見てくる。
「……パール……この後グリモワールが目を覚ましたら……」
「目を覚ましたら?」
「悪じゃない、パールの弟子グリモワールに何て言うんだ? 俺はどうしたらいいのか、何が正解なのか分からなくなってしまった」
「……ティーゴよ……リィモの為に泣いてくれるのか?」
「……えっ。俺……」
俺はいつのまにか、泣いていたみたいだ。
「……人の事で泣くなんて……バカじゃのう」
パールはそう言って俺を抱きしめた。
俺がバカだって? そんな事言ってパールだって…………泣いてるじゃないか。
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