お人好し底辺テイマーがSSSランク聖獣たちともふもふ無双する

大福金

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本編 燦聖教編

カリンとリィモ ①

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数分もすると……落ち着いたのかパールは少女を椅子に座らせた。
そして自分の顎髭をゆっくり触り俺の方をチラリと見みると。

「ティーゴよ? 何でカリンの魂がまだ昇天してない事が分かったんじゃ?」

光について質問してきた。さっきまであんなに泣いてたのにな?
もう別の事で頭がいっぱいって顔してるや。
そこがまぁパールらしいんだけど。

「その前にだ、俺が先に質問しても良いか?」

「む? ティーゴが?」

何で質問? とパールが少し驚いているが、これには理由がある。先に少女から話を聞いとかないと、何も前に進まないと思ったんだ。

「えっと……カリン? だよな? 質問していい?」

「えっ!はっはい!」

急に名前を呼ばれ、カリンはピンっと背筋を伸ばす。

「君は亡くなってからもずっと、グリモワールと一緒と言うか……同化って言ったら良いのか? うーん上手く言えないけど、とにかく君の魂がグリモワールの体にくっ付いてたよね? 黒い靄みたいなのが接着剤みたいな感じでさ? ごめん言ってることが分かりにくいよな。でも俺にはそう見えたんだ。俺の言いたい事分かる?」

もっと上手く黒い靄や光について説明したいのに、言葉が出てこない。

そんな俺の拙い話を、カリンは一生懸命に聞いてくれた。

「言いたい事は分かります……ええと」
「俺の名前はティーゴだ」

「ティーゴ様の知りたい事を、今からお話します。この話は少し長くなりますが、カスパール様も聞いてくれますか?」

「「もちろん」じゃ」

俺とパールは同時に大きく返事した。


★  ★   ★

カリンは大きく深呼吸すると、ポツリポツリと過去にあった出来事を話し出した。





私は死んでからも少しの間、魂の姿でカスパール様やお兄ちゃんを見ていました。
二人が悲しむ姿は見ていて本当に辛かった。
せめて一言だけでも良いから、話をしてから死にたかったと、何度も何度も思いました。

私は魂となったのに、すぐに天に召される事はありませんでした。
理由は分かります。
兄グリモワールの事が心配で心残りだったからでしょう。
私が死んでからのお兄ちゃんの姿は、見てられなかった。
あんなにも兄を悲しませてしまった自分を、悔やみました。

兄はカスパール様がいない時にフラッと外に出て行き、魔獣がいる森を徘徊する様になりました。
魔獣に出会ってもされるがままで、このままお兄ちゃんは死んでしまうのではと、側にいて何度も不安になりました。

「そんなっ……ワシ……知らんかった。部屋で泣き崩れておるとばかり……」

「兄も無意識だったと思います」

パールが今にも泣きそうな顔をする。お願いだからそんなに自分を責めないでくれ!
パールは何も悪くないんだから。

カリンも同じ気持ちの様で、パールの様子を見ながら過去にあった話を進める。






兄があてもなく徘徊を続けていたある日、見た事の無い祠を偶然みつけました。
まるでその祠は、絶望していた兄を待っていたかの様に、何も無かった土壁から突然現れたのです。

その祠の中は、禍々しいオーラで包まれていました。
いつもの兄ならそんな場所に絶対に近寄りもしないし、ましてや入る事などしなかったでしょう。

でも兄は吸い込まれるように中に入って行きました。

祠の奥に大きな剣が刺さっている塊がありました。よく見るとその剣はその塊を封印しているようでした。
それを兄は抜こうとしました。
私は絶対に抜いてはダメだと思ったので、兄に近寄り『剣を抜かないで』と必死に声をかけました。
もちろんその声が兄に届くわけもなく……。

兄は剣を抜いてしまいました。

次の瞬間、黒い塊が飛び出て来て兄の身体を覆いました。
その時側にいた私まで、一緒に黒い塊に覆われてしまい。
私は兄と一体化してしまったのです。

次の瞬間でした、兄は狂ったように叫びました。

「やったーやっと封印が解けた! あはははっ。今から好きに生きてやる! 邪気をいっぱい集めるためになっ」

そう叫んだのです。



カリンはそう言うと黙り込んでしまった。



「邪気……?」

邪気ってなんなんだ? 

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