238 / 314
本編 燦聖教編
グテ村
しおりを挟む俺達はパールの転移魔法でグテ村があった場所に転移した。
「…………綺麗だな。コレがグーテの花か」
目の前には、太陽の光に照らされ金色色に輝くグーテの花が咲き乱れていた……そしてその中心には。
「…………なんで?!」
グリモワールが目を見開いて驚き、グーテの花の奥に見える……何かを凝視している。
それもそのはず、俺達の目の前にはグリモワールが消滅させたはずの村があった。
沢山のグーテの花に囲まれたグテ村の姿が。
その外観は村と言うより……街の様にも見える、それ程に栄えていた。
「カスパール様……僕の目の前に見える村は……その……グテ村のように見えるんだけど……これは」
グリモワールは自分が消滅させたはずの場所に村があり、意味が分からないと言った感じだ。
「この村はの? グテ村じゃ」
「えっ? 何で? だってグテ村は僕が跡形もなく魔法で消した……」
「そうじゃ。じゃが目の前にある村もグテ村なんじゃよ」
「っ…………」
グリモワールはパールの言っている意味が理解出来ないのか言葉に詰まってしまった。
その気持ち分かる、パールよ?
もう少し詳しい説明が必要だと思うぞ?
「パール? 意味が分からないんだが?」
「まぁ……この村は再復興したグテ村と言ったほうが分かり易いかのう?」
「再復興?」
固まっているグリモワールの代わりに質問する。
「リィモが村を消滅させた時、実は村には少ししか村人が残っておらんかった。あの時は隣街のエジンベルに村人は怪我を治しに行っておったんじゃ。村は魔獣達に壊滅的に壊されておったから、みなエジンベルの教会に傷を治しに行ったり、元気な者達は壊れた村を直す為に道具や材料を探しに来ておった」
「えっ……じゃあ。あの時僕が壊した村には」
「ワシが聞いたのは十二人じゃ。十二人村に残っておったと……」
「…………十二人」
「そうじゃ。それも幸か不幸かその十二人は一番近くでカリンを見ていて何もしなかった奴らじゃと……助かった村人達が後で教えてくれた。もちろん自分達も同罪じゃと残された村人達は自分の事を皆責めておった」
「そんな……」
「リィモよ……お主がした事は間違っておった。じゃが村人達も間違がっておった。何が正解で正しいのかは、ワシは神ではないから分からんがの? 村人達は過去から前に向かって進んでおるんじゃよ」
「…………そんな……生きていた……村人達が……生き……いた」
グリモワールは、パールの言葉を聞き、ぶつぶつと何か独り言を言っている。
「ワシもグテ村の復興を手伝ったからのう。魔獣達に攻め込まれん様に、前の何倍も強固な防壁を作ってやった。あれは三百年以上前に、ワシが作ってやった防壁じゃが今も健在じゃ。ワシ……凄いじゃろう?」
パールが得意げに自分が作った防壁を自慢しだした。せっかく良い話をしていたのに……残念な感じになるのはさすがパールだな。
だが村が街の様に見えた理由が分かったよ。パールが作った強固で高さ十メートルはある防壁のせいだな。
村にあの要塞の様な防壁はありえない……あんな凄いのを作れる予算など、村には到底無理だ。
ふと横を見ると……カリンが静かに涙をながしていた。
「カリン? 大丈夫か?」
俺は何か嫌なことを思い出したのかと思い、慌て近寄る。
「ふふ……ティーゴ様ありがとうございます。大丈夫です、私……嬉しいんです」
「嬉しい?」
「はい。村があって……ふふ」
カリンは村を見て、泣きながら幸せそうに笑っていた。
その姿をパールは目を細め優しく見守っていた。
なんだかそんな二人を見て胸がキュウっと苦しくなり、俺まで泣きそうになってしまう。
そんな俺の姿を直ぐに銀太が気付き『主? どうしたんじゃ?』と心配そうに俺の頬を舐めた。
「わっぷ! 大丈夫だよ! ありがとう銀太」
そう言って銀太の鼻先を撫でる。それを見ていたコンちゃんが、ピョコンとやって来て脚に擦り寄る。
『むう! 妾だって気になっておった』
「はいはいコンちゃんもありがとう」
コンちゃんの頭も目一杯もふもふと撫でてやる。相変わらず聖獣達が可愛い。
ふとスバルを見ると、パールの頭の上で幸せそうに座っていた。カスパール様姿のパールが嬉しいみたいだな。クスクス。
「さてと……村に入ってみるかの」
「そうだな!」
「はい」
パールが村に行こうと言うので直ぐに返事を返すが、グリモワールだけはまだ黙ったままだ。
「ふうむ。この姿じゃと……ちぃと不便じゃから……」
ボンッ!
『あーっ! 主っ! 何で……もうちょっとあのままで居てくれよ!』
パールがいつもの猫パールの姿に戻った。スバルはブーブー文句を言ってるけど、俺はこの姿の方が落ち着くな。
「えっ?……猫?」
その姿を見てカリンがビックリしている。
「死んだカスパールの姿で村に行ったら色々とおかしいじゃろ?」
「死ん? えっあっ!……そうか! カスパール様は亡くなって……んっ? あれ? 何でじゃあ今生きて? ええっ?」
カリンは今更、なぜパールが今世にいるのかの不思議に気付いたらしく、プチパニック状態に。
やっと周りが見えだしたんだな。それだけ……心が落ち着いた証拠だ。
俺は慌てカリンにパールの説明をした。なかなか直ぐに理解してもらえなかったけど。
257
あなたにおすすめの小説
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
お前は家から追放する?構いませんが、この家の全権力を持っているのは私ですよ?
水垣するめ
恋愛
「アリス、お前をこのアトキンソン伯爵家から追放する」
「はぁ?」
静かな食堂の間。
主人公アリス・アトキンソンの父アランはアリスに向かって突然追放すると告げた。
同じく席に座っている母や兄、そして妹も父に同意したように頷いている。
いきなり食堂に集められたかと思えば、思いも寄らない追放宣言にアリスは戸惑いよりも心底呆れた。
「はぁ、何を言っているんですか、この領地を経営しているのは私ですよ?」
「ああ、その経営も最近軌道に乗ってきたのでな、お前はもう用済みになったから追放する」
父のあまりに無茶苦茶な言い分にアリスは辟易する。
「いいでしょう。そんなに出ていって欲しいなら出ていってあげます」
アリスは家から一度出る決心をする。
それを聞いて両親や兄弟は大喜びした。
アリスはそれを哀れみの目で見ながら家を出る。
彼らがこれから地獄を見ることを知っていたからだ。
「大方、私が今まで稼いだお金や開発した資源を全て自分のものにしたかったんでしょうね。……でもそんなことがまかり通るわけないじゃないですか」
アリスはため息をつく。
「──だって、この家の全権力を持っているのは私なのに」
後悔したところでもう遅い。
【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。
私に姉など居ませんが?
山葵
恋愛
「ごめんよ、クリス。僕は君よりお姉さんの方が好きになってしまったんだ。だから婚約を解消して欲しい」
「婚約破棄という事で宜しいですか?では、構いませんよ」
「ありがとう」
私は婚約者スティーブと結婚破棄した。
書類にサインをし、慰謝料も請求した。
「ところでスティーブ様、私には姉はおりませんが、一体誰と婚約をするのですか?」
婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました
kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」
王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。