お人好し底辺テイマーがSSSランク聖獣たちともふもふ無双する

大福金

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本編 燦聖教編

渡り人

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「なっ……? 渡り人わたりびとってなんだ?」

 初めて聞いたな。渡り人って言葉は学校でだって習わなかった。  
 それを知っているなんてさすがパールだな。

「ティーゴは知らんか……まぁ渡り人自体に出会う事が珍しいからのう……ふむ」

 パールはそう呟くと、少し目を細めて手で顔を触る。猫の姿なんでその仕草がまた可愛いんだが、それを言うと怒られそうなので言わない。

「渡り人とはの? この世界とは別の次元から何かのきっかけで移動して来た人の事。簡単に言うとこの世界の者ではない、異世界の者と言う事」

「この世界の人じゃない? 異世界の者?」

 またパールが訳の分からない事を言いだした。異世界だって? バカな俺の頭じゃ理解に苦しむ。

「そうじゃ。この世界にも少しじゃが、渡り人は来ておる。有名な話では倭の国を作ったのも渡り人じゃと言われておるし……」

「倭の国を!?」

 倭の国は独自の文化で急成長した島国で、倭の国産のオリジナル商品はヴァンシュタイン王国でも人気だ。
 セロデバスコに作った湯屋でもイルさん考案、倭の国産の浴衣かんないぎが大人気だったりする。

「そうじゃ。渡り人ではないが、燦聖教が召喚した勇者と言う奴等も、この世界とは違う異世界の者達じゃ」

「そうだった。禁忌の魔法で勇者達を召喚したって言ってたな」

そうか……召喚って言うのは、違う世界から勇者を連れて来てたのか。

 って事はソフィアは倭の国の創始者や勇者達と同じって事なのか、だからジョブとかテイマーとか言っても話が通じなかったんだな。

「あの……ティーゴ様?」

 俺がパールと話し込んでると、ソフィアが少し困惑した顔をして恐る恐る話しかけてきた。

「そのう……こちらの猫ちゃんは……」

「ワシは猫ちゃんではない! 今はパールと言う名があるのじゃ」

「はわわっ! やっぱり! 喋る猫ちゃん! ティーゴ様が猫ちゃんと話をしている様に見えて……!」

 ソフィアはパールの顎を撫でる。

「こりゃ! やめんか」
パールがシッポをふりソフィアの顔を撫でる。

「わっぷ!……ごめんなさい」

「お主は渡り人であろ? 何処から来たんじゃ」

「……渡り人? えっ? 私が?」

 ソフィアも俺と同じで渡り人﹅﹅﹅について理解不能らしく、頭にハテナが浮かんでいる。
 パールはそんなソフィアの様子を見て察したらしく質問を言いかえる。

「…………ふむ。お主の住んでいる国の名は何と言う」

「私の住んで居る国ですか? 【リストリア王国】です」

「……リストリア? やはりの」

 ソフィアが教えてくれた国は、全く聞いた事がない国名だった。 
 パールが言う違う世界から来たってのが、この時俺の頭中でカチッとハマった。
 念のため、地図をリュックから出しリストリア王国を確認する。

…………ない。

「落ち着いて聞いて欲しいんじゃが、リストリア王国と言うのはこの世界にはない存在しない国じゃ」

「えっ? この世界には……ない?」

「……これを見て」

 俺はソフィアに世界地図を見せる。

 ソフィアは真摯に地図を見ている。

「……………文字が……何を書いているのか分からない! なんで?」

 文字が分からないと、少し困惑しているソフィア。文字が分からない? 言葉は分かるのに?

「ソフィア? 大丈夫?」
「ごっごめんなさい……ビックリして……」

 ソフィアをが落ち着いたのを確認し、パールは話を続けた。

「お主は何かのきっかけで、こちらの世界に渡って来たみたいじゃの」

「こちらの世界?」
「そうじゃ! お主がいた世界とは全く別の世界に飛ばされたと言う事じゃ」

「ええっ!? そっ……そんな! 困ります! 私……元いた世界でやらなくちゃいけない事が沢山あって! そんなっ……どうしたら……」

 ソフィアはパニックになり、泣きそうな顔で座り込んでしまう。

「慌てるでない! 元いた世界に帰れるかも知れん」

「えっ……帰れるかも知れない?」

パールの言葉に顔を上げ、こっちを見る。

「その理由は、お主の周りを飛んでおる奴らが、知っとるんじゃないかのう」

「私のまわり……? 飛んでる?」

 ソフィアはパールにそう言われて、自分の周りをキョロキョロと見ている。
 ソフィアの周りに何が飛んでるんだ? 俺には全く見えないが。

「パール……俺には何も見えないんだけど……」

「魔王じゃから分かるのかも知れんが、十匹くらいの光る何かがあの娘を守る様に飛んでるのが見えるんじゃ」

 するとソフィアは何かに気付いた様な表情をする。

「……もしかして妖精さん?……ええと……妖精さんの声が聞こえる様に……」

 ソフィアは何かぶつぶつと呟いている。

「わっ! 見えた!」

 そう言うと何かと話しをしてる様に表情をコロコロ変える。

「……ええ?! そうなの? そんなっ……私が? 見つけるの?……出来る? あわわ」

 俺とパールは何かと話すソフィアの様子をただ呆然と見つめている。何と話しをしてるんだ?

「ええと……ソフィア? 俺達にも分かるように説明してくれないか?」

「あっ……すっすみません! ええとですね。ネコちゃんが言っていた私の周りを飛んでいる光、それは妖精さん達で、その妖精さんが言うには、この世界に飛ばされた妖精王が私を呼んで……」

 妖精? 妖精ってエルフの里にいた子達だよな……だったら何で俺に姿が見えないんだ?

「妖精?」

「はい。妖精さんが言うにはこの世界の妖精とは、自分達は異なるらしく……この世界では魔力を食べる事が出来なくて……妖精王は弱っていると……」

「なるほど! お主はその妖精王に引き寄せられてこの世界に来たと言う訳か……でも何で? お主なんじゃ?」

 パールにそう言われると、何故かソフィアは少し恥ずかしそうに目を逸らす。

「…………ええとですね、私の魔力は妖精さんからしたら……その……ご馳走様らしくて……」

「魔力がご馳走?」

「……はい」

 そんな事あるのか? いろんな世界があるんだな。とりあえずその妖精王を見つけ出すのが鍵って事だな。

「……って事は、その妖精王を見つけ出したら、ソフィアは元いた世界に帰れるかもしれないな!」

「ですよね!」

 ソフィアは両手を握りしめ、少し嬉しそうに応える。

「で……その妖精王のいる場所は分かるのか? 妖精達は何か言ってる?」

 すると鼻をぽりぽりと掻いて、少し困った顔をする。

「………です」

「「えっ……?」」

「全く分からないです……えへへ」

 そう言ってソフィアは凄く気不味そうに笑った。

 ちょっと待って……これってとんでもない事に巻き込まれてない? まだグリモワールの事だってあるのに……












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