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本編 燦聖教編
ここはやっぱり肉祭り
しおりを挟む「どんどん焼いて行くからなー! みんな沢山食べてくれよ」
『主~美味いのだー! タレ多めでおかわり!』
『俺はウナァギイの串焼きにしようかな』
『ぬっ……ウナァギイも悩むのだ』
食いしん坊の銀太とスバルが、大きな焼き台の前であれこれ楽しそうに話している。
二匹の前にある大きな焼き台の上には、分厚く切ったワイバーンの肉が並び、その横には異空間の海で取れた新鮮な魚介類、さらにはウナァギイの串焼きが焼かれている。
香ばしく焼けたタレの匂いが食欲をそそる。
異空間にいる仲間達がこぞって、焼きあがった肉を旨そうに食べている。
そんな仲間達と張り合う様に。
「ティーゴ様このお肉……今まで生きてきて食べた中で一番美味しいです! はぁぁ……口の中が幸せ」
『旨いやろー? 肉とティーゴのタレも相性抜群やろ』
「はい!最高です」
「ふふっそれは良かった」
ソフィアがニコニコと頬を緩ませワイバーンの肉を頬張っている。あれからベヒィとすっかり意気投合したようで、二人仲良くベンチに座っている。
貴族令嬢とベヒィーモス、不思議な組み合わせだが、何故か気が合っている様だ。
まぁベヒィはいい奴だから、ソフィアが気にいるのも納得だけどな。
『ティーゴ様。今日はこんな素敵な祭りに呼んで頂きありがとうございます。ワシは幸せですじゃ』
『妾はやはりお酒が旨いのじゃ』
『祭りの酒は最高だな』
キノ小人の長老マッタケさんと、エンシェントスパイダーのニジとエンがお酒を片手に楽しそうに食べている。
楽しんでくれて良かったよ。
「わっぷっ!」
突然顔に何かが飛んできた。
『ティーゴ! あの連れて来た子は何なの? ティアはすごーく気になるの!』
「ティア……いきなり顔に飛びつかないでって、いつも言ってるだろ? ビックリするからな」
『ゴメンなさいなの。でもティアは凄く気になって……』
ティアは尻尾をしょぼんと下げて俺を見る。
そんな顔しないでくれよ。怒ってるわけじゃないからな。
「はい。ティアこれどうぞ」
俺はティアの大好きなフルーツジュースをアイテムボックスから出して渡す。
『これはティアの好きなイチゴジュース♪』
ティアのしっぽがご機嫌に揺れる。
「ええとなティア? あの子は迷子になって困ってたんだよ。でも明日には自分の家に帰る様になったんだ。それまでの間、仲良くしてくれるか?」
ティアはイチゴジュースを美味そうに飲みながら、話を聞き終えると
『そうなの? ティアはてっきり……帰るなら良いの。仲良くするの』
と。ご機嫌で飛んで行った。
なんだったんだ? ティアのやつ。
ふとソフィアを見ると、三号とシファさんまでがベンチの横に座って、楽しそうに何やら話をしている。
ーーんんっ? 三号が手に持っているのはレインボーマスカッシュか? よく見たらシファさんも頬を赤らめ……飲んでいる?
ベヒィは……真っ赤じゃないか! 絶対レインボーマスカッシュじゃないか!
それを……ソフィアにも渡し……!
「ちょーっ! ストップ。三号その子にお酒はだめ」
俺は慌てソフィアの手に持っているグラスを取り上げる。
「ソフィアは確か十三歳だよな?」
「はい。もうすぐで十四歳になりますが… …」
「飲んでないよね?」
「……はい」
「良かった!」
『何なのよティーゴ。何でダメなの?』
急にソフィアから酒を取り上げた俺を、三号は怪訝そうに見る。
「あのな。人族で十三歳はお酒飲んじゃダメなんだ。だからソフィアに飲ませたらダメだぞ。分かったか?」
『そうなの? 知らなかったわ』
「ですね。獣人なら十三歳はもう大人扱いですから、お酒も飲めるのに……人族はダメなんですね」
一緒に飲めないのが残念なのか、三号達は肩を落とす。
「こっこれ、お酒でしたか! 興味はありますが……ゴクッ。未成年はダメですよね……はぁ」
ソフィアはレインボーマスカッシュが飲めなくて少し残念そうだ。このお酒は香りも良いからな。飲みたくなる気持ちは分かるが……。
『ねぇティーゴ。私この子気に入ったわ。ずっとココに居たら良いのに……』
「私もです。ソフィア様は可愛いくってとっても良い子で……」
三号とシファがソフィアをギュッとだきしめる。
「ひゃわっ」
三号とシファに突然抱きしめられて、ソフィアの顔は紅潮する。
『ちょっ何してるんよ? ソフィアの一番はワイやで?』
ソフィアを奪い返す様にベヒィが抱きしめる。
「ひゃわっ……筋肉美がっ」
「ブッッ何やってんだよ。ソフィアが困ってるだろ」
この二人に気にいられるなんて……ベヒィもだし。ソフィアには不思議な魅力があるんだな。
『あっ! そうそうソフィア。この後露天風呂に行かない? すっごく気持ち良いのよ』
「わぁ! 私もご一緒して良いですか?」
『もちろんシファも一緒よ』
「露天風呂ですか……楽しそうですね! 行きます」
『何か楽しそうな話をしてるっすねー。あっしも行くっすよ』
話を聞きつけた一号が混ざる。
一号、三号、シファに連れられて、ソフィアは異空間自慢の露天風呂へと向かっていった。
「なんだか俺より仲良くなってるし……ふふ」
みんなが仲良くなるのは自分の事みたいに嬉しいな。などと思っていたら……。
犬の姿に戻った一号と三号を見たソフィアの驚きの声が露天風呂から響き渡るのだった。
いやいや何で露天風呂で犬の姿になるんだよ!
何が起こったかと心配でスバルに見に様子を行ってもらったんだからな?
……俺近寄れないだろ。
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