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本編 燦聖教編
異空間に招待
しおりを挟む『何だ~? 精霊王ってのは変なやつだな』
『うむ。我は何がしたかったのか、よく分からないのだ』
スバルと銀太が、突然現れ忽然と消えた精霊王に対して何やら話し合っている。
『妾は心配じゃ。あんな変な奴を信用して良いのか? 本当に彼奴の事を元の世界に帰すことができるのか?』
『『同感だな』』
そこにコンちゃんも加わったけど、どうやら良いように言っている感じでは無いな。
俺はさっきの出来事を思い出し……笑っちゃいけないのに口元がニマニマと緩む。
精霊王様とやらは、明日には元の世界に戻れると言っていた。
でも明日となると、ソフィアの今日寝る場所なんかも必要だよな……。
うーん……どうしようかな? なんて考えていたら豪快な音が響く。
ぐぅぅ~~~。
「えっ?」
思わず音のなる方を見ると、ソフィアが真っ赤な顔でワタワタと困っていた。この音の主は……ソフィア?
「ぷぷっ……腹が減ったのか?」
「あっ……いやっこれはっそのっ…………はい」
恥ずかしいのか、頬を赤らめ下を向いたまま固まってしまった。
スバルも飯飯と五月蝿かったしな。
「よし。ご飯にしよっか」
『メシー! ティーゴの旦那そうこなくっちゃ! 俺ずっと待ってたんだぜ? 賢いだろ?』
『我は肉バーグが良いのだ!』
『妾はカラアゲが良いんじゃ』
ご飯と言うと、ソフィアより先に銀太達が、我先にとアピールしてくる。
相変わらず食いしん坊な聖獣達だ。
グテ村にいるカリン達に合流して、異空間に帰るとするか。
★ ★ ★
「あっ……あのっ。こっここは……一体」
異空間に連れて来たらソフィアが、目を白黒させて驚いている。異空間に初めて入ると、みんな同じ反応するんだよな。
それをいかに上手く説明すると言うのが目下の課題だ。
「これは偶然手に入れる事が出来た、異空間の世界なんだ。この鍵を持つ者がこの場所に入れる扉を出せるんだ」
鍵を取り出しソフィアに見せる。
「異空間の世界を持つ? ティーゴ様はもしかしてこの世界の神とか……」
ソフィアがとんでもない事良いだした。何で俺が神って発想になるんだよ。
「違うから!神じゃないからたまたまなんだ本当に!」
「ではこの中にいる人達は……?」
ソフィアが畑で働く獣人や魔獣達をキョロキョロと見る。
「ああ……旅をしている内に仲間になった奴らさ。色んな種族がいるけどみんな良い奴ばかりだから安心してくれ」
「……はい。……仲間? こんな大人数が? 絶対に普通じゃないと思うんだけど……」
「えっ? 何かいった?」
「んんっ。なっ何でも」
ふと横を見ると遠くからこちらに向かって、赤く熟れたトゥマトを持ちアレクとシファが歩いてきている。
その後ろを大きな尻尾をプリプリとさせ、キューが付いて来ているのが見える。
「ティーゴ! 帰って来てたのか」
「お帰りなさい」
『ティーゴしゃま!』
「ただいま! アレクにシファ。それにキュー」
俺はキューの頬のふわふわをもふもふと撫でる。
『キュッフ……』
気持ち良いのかキューは目をとろんとさせじっとしている。
アレクはソフィアに目を向けると「何だぁ? 可愛い子連れて来て」などと言いながら俺をニヤけた目で見てきた。
「ブッッ……変な言い方をするな! この子はソフィア、訳あって今日一日ここで暮らす事になったんだ。仲良くしてくれ」
アレクが変な事言うもんだから、失礼じゃないかとソフィアの方をチラッと見ると……
「なっ何て素晴らしい上腕二頭筋なの……それにあの美しいシックスパック……なんて事なの! 美の彫刻が……」
何やらぶつぶつと訳の分からない単語を呟いている。困惑してるのか? シックスパック? なんだ?
「あっあの……ソフィア? 大丈夫?」
「ひゃわっ? なっ何でも無いんです! 余りの筋肉の美しさに……」
筋肉? あっ! もしかしてアレクの服装が貴族からしたらマズイんじゃっ。
アレクの姿はベストにワークパンツと上半身は裸に近い……
「ごめん……服装がラフ過ぎるよな」
「あっ! それは大丈夫です。気にしないで下さい。眼福です」
ソフィアは両手を握りしめ、食い気味に眼福だと言う。眼福? 一体何の事だ?
「そっそうか? なら良いんだが……コイツがヒョウの獣人アレクで、隣がライオン獣人のシファだ。ソフィアが今着てる服はアレク達獣人が作ってくれたんだよ」
「こっこの素敵な服をですか? 最高の肌触りでこれしか着たく無い程にお気に入りです」
「まぁ! ありがとうございます。ソフィア様。他にも色々ありますので後で獣人街に来て下さいね」
シファがソフィアに向かって微笑む。
「はうっ……絶対に行きます」
「ふふ」
シファとソフィアが仲良く話してる。
良かったシファがいてくれて、これなら異空間で楽しく過ごして貰えそうだ。
「今日はトゥマトを沢山収穫したんだ。ティーゴの家に届ける所だったんだよ」
「そうか、ありがとう」
「おう! じゃっまたな」
アレクとシファが去って行くと同時に、今度はオーちゃんが新しい魔道具を持ってやって来た。
「パール様。頼まれてたいた魔道具完成しました」
「何? それは楽しみなのじゃっ」
ふと横を見るとソフィアがオーちゃんを見てカチンと固まっている。
しまったー!!
オーちゃんはオーガキングと言う、恐ろしく凶悪な魔物。
その上見た目は上半身裸で、下のワークパンツしか履いてない……これはヤバイよね。
貴族のソフィアからしたらこの服装は変質者と思われても仕方ない。
「……なんなの……ここは筋肉の楽園ですか? 何この美しい筋肉美は……」
「あの……ソフィア? 大丈夫?」
「へっ? あっすみませんっちょっと興奮して……ゴニョこんな美しい筋肉見ちゃったら」
興奮して……そりゃ怖いよな。オーガキングだもんな。怖くないって説明しないと。
「アイツは見た目怖いかもだけど凄く優しくて良い奴だから安心してくれよ」
「へっ? 怖い? 怖くなんてないですよ! 綺麗だなって思ってました」
「そっそうか……なら良いんだ」
オーちゃんが綺麗? 確かに顔は整ってるけど……この巨躯が怖くないなんてさすがだな。
『あらーティーゴ? 帰ってきたん? どう? さっきシファから可愛い新作のエプロン貰ってん』
「ベヒィー!」
ベヒィが可愛い小鳥柄のエプロンを見てと、ポーズを取る
……はぁ何で、こんなイカツイ奴等ばっか集まってくるんだ。
「めちゃくちゃ似合ってます! 最高ですよ。ベヒィ様」
って……ええ? ソフィア?
ソフィアはべフィーの前に陣取り、ポーズを褒めている。心なしか頬を桃色に染めて……。
『あら? 何なんあんた……めっちゃええ子やん。特別にもういっちょポーズしたろか』
「はぁぁ! おかわりまで頂けるんですか! 美しすぎるあなたは筋肉の神様です」
『ちょっ……ワイが美しいって? もうあんた最高や。気にいった! ついてきい。最高のミルク飲ましたる』
「はい! ベヒィ様どこまでも付いて行きます」
ソフィアはベヒィの後をついて行った。
ええ……貴族令嬢って筋肉が好きなんだ。
……ふと自分の腕を見る。
「………っ」
…………俺だってこれから成長するさ。
この後ティーゴの鍛錬に密かに筋トレも加わったのは言うまでもない。
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