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本編 燦聖教編
サラマンダー
しおりを挟む「ええとさ? サラマンダーだっけ? お前は何でこの世界に飛ばされたんだ?」
ーーんん~?
サラマンダーはソフィアの頭にべったりとしがみ付いている。どうやら頭から魔力を貰うのが最高に美味いらしい。
その最中に話しかけられ、少し煩わしそうに俺の方へ頭を向けると、面倒げに話し出した。
ーーええとだな? 俺は火山火口で眠ってたんだよ。火口のエネルギーは気持ち良いからな。昼寝には丁度良いんだ。それがな? 突然凄い振動で目が覚めたと思ったら、見た事もないこの世界にいたんだよ!
「火山火口で昼寝?! 気持ちが良い? 炎の妖精王って変わって……ゲフッ。凄いんだな」
ーー凄い? そうさ! こんな訳の分からない世界に飛ばされてなきゃな、消えそうになる程に弱ったりしねーよ! まぁコイツのおかげで助かったから良かったけどな。はぁ……美味っ
そう言ってソフィアの頭に自分の頭を擦り寄せる。
「……そうだったのね」
それを聞いて安堵したのか、ソフィアの表情は緊張が少しほぐれ緩んでいる。
ーーええと……ソフィアだっけ? お前の魔力、俺は気に入ったぜ。だからな有り難く思え? お前と契約してやった! ふふんどうだ? 嬉しいだろう? サラマンダー様と契約した人族なんて今まで居ないんだぜ? お前が初だ。
サラマンダーが嬉しいだろう? と得意げに話す。
「くくっ……」
何だかその様子がスバルと似ていて、思わずほくそ笑む。
「……えっ?! ちょっ? 何て言ったたの? 契約!?」
それを聞いたソフィアは驚き、体を大きく揺らし座り込んだ。その所為でサラマンダーが頭から落っこちる。
流石に妖精王と契約なんて、嬉しくてビックリしたのかな?
ーーいててっ。何するんだよ!
「何するって? そ・れ・は、コッチのセリフよ! 何勝手に契約とかしてるの? これ以上妖精王と契約なんて……」
ソフィアがプルプルと身体を震わせ真っ赤な顔で訴える。
あれ? 嫌がってる?
ーーなっ……俺との契約が嫌だってのかよ?
「そうよ! 私はすでに風と水とそれに土の妖精王と契約してるし、精霊王にまで付きまとっ……とっとにかく! 困るのっ」
ーーかっ……風と水……土。そんな……。
ソフィアにコテンパンに拒否され、サラマンダーは背中を小さく丸め大きな瞳からポロポロと涙を流す。そんな姿を見たら可哀想になってきた。
「ちょっ……ソフィア。言い過ぎじゃ……」
「! ごめっ……サラマンダーが嫌って訳じゃなくてね? 動揺しちゃって言い方が悪かったわ。これ以上妖精王と契約は……困るってだけでね? ゴメンね? 泣かないで?」
ーーううっ俺が嫌って訳じゃないんだよな?
サラマンダーは瞳をウルウルさせながらソフィアを見る。
「もちろんよ! サラマンダーの事可愛いって思ってる!」
ソフィアはそう言うと、泣いているサラマンダーの頭を優しく撫でる。
ーーなっ……なんだよー! ビックリしたぜ。なら問題ねーな! これから宜しくなソフィア。
サラマンダーはケロッとした顔で再びソフィアの頭に飛び乗った。泣いたカラスが何とやらとは正にこの事。
「プハッ面白い妖精王だな」
「ティーゴ様? 笑い事じゃないですよ?」
「ごめんごめん……やり取りがさ余りにも楽しそうで……」
「もう!」
俺がソフィアと何気ない話しをしていたその時だった。パールが俺達の前に飛び出て来た。
「えっ?」
何だ?
銀太まで俺を守る様にべったりと体をくっ付けてきた。スバルは頭に飛んでくるし……みんな急にどうしたって言うんだよ。
ーーあっ!?
サラマンダーが何かに気付き何も無い場所をジッと見る。
「来るのじゃ!」
次の瞬間。
空間が歪み割れた。その隙間から、神々しい人なのか何なのか分からない者が現れた。
「なっ何だ……!?」
俺が目の前の人物に驚きを隠せないでいると……
「あーー!? 精霊王様!」
え?
なんて? 精霊王? ソフィアの知り合い?
ーーやっと繋がったのじゃ。はぁ良かった。
「精霊王様……どうやってこの世界に?!」
ーーそれはじゃ。このサラマンダーの魔力が満タンになった事で、我と繋がる事が出来たのじゃ。
ーー精霊王様! 俺を探しに来てくれたのか?
ーーそうじゃ。ソフィアもな。
「じゃあ……私達元の世界に帰れるの?!」
ーーそれは……今はまだ戻る事が出来ぬ。
「……そんな」
ーーそれにしても……はぁ。
精霊王とやらはジト目て俺達を見回すと、とんでもない事を言いだした。
ーーソフィアよ? お主は異世界に行って、いったい何をしとったんじゃ?……何じゃこの化け物の集まりは……どうやったらこんな恐ろしい奴らと知り合えるんじゃ……。
ちょっ? 化け物って俺達の事を言ってるのか?
ーー特にこの猫の姿をした何かは特別やばいのじゃ!
「なっ! ワシは何もヤバくなどないのじゃ! 至って普通。それが見抜けんとは精霊王とやらは、ポンコツじゃのう」
やばいと言われ、馬鹿にされたと思ったのか、パールは精霊王を煽る様に言い返す。
ーーなっ!? 我は偉大なる精霊王なのじゃ! ポンコツなどではないのじゃ!
「…………それで? 偉大なる精霊王が何のようじゃ?」
ーーあっ! そうじゃ。しまった五分しか無いのに余計な事で……むう!
精霊王は何やら一人わたわたと悶えている。恐ろしく美形だが……何だろう少し残念な匂いがプンプンするのは……。
ーーなっ! お主ら……我をそんな目で見て! もっと我を至尊の目で見るのじゃ。
意外と目敏いのか、残念だなと思って見ていた事に気付いたらしい。
「あのさ? そんな事より大事な話があるんじゃ……」
ーーああっ! そうじゃ。しまった! もう残り一分しかないではないか! よいか? ソフィアよ。我は今から精霊国に戻り力を溜める。明日の昼には満タンになるじゃろう。その時にそのサラマンダーと我を繋ぎ、お主らがこちらの世界に戻れるように空間を開くから! 待っておるのじゃぞっ!
そう言い終えると、チラチラと誉めて欲しそうにソフィアを見ている。精霊王様? 感情がダダ漏れですよ?
「さすが精霊王様! ありがとうございます」
ソフィアが頬を紅潮させ興奮気味に誉めると……
ーーそうじゃっ。もっと敬って……
更に調子に乗って何か言おうとしたみたいだが、空間が途切れ精霊王の姿は消えてしまった。
ブフォッ……面白すぎるなんて考えてたらソフィアと目が合った。
「んんっ。とっとりあえず、ソフィアは明日元の世界に戻れるって事だよな? 良かったな」
「はい!」
………凄い事なのに……なんだろう。このモヤっとする残念な気持ちは。
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