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本編 浮島編
浮島
しおりを挟む「すげーなぁ……島が浮かんでいるなんて」
俺がマジマジと浮島を見ていたら、ロックが「もうすぐその姿が見えなくなりますよ」と言った。
「えっ? 見えなくなる?」
するとジワジワと雲が浮島の周りに集合して来たかと思うと、本当に雲に包まれ浮島は姿を消した。
「これは……!?」
浮島の姿が消えた事に驚いていると
「ほう……これは中々よく出来た結界魔法じゃのう。これを作った奴は天才じゃ!」
珍しくパールが褒めた。
「えっ分かりますか?」
「あれは雲に似せた結界であろ?」
「そうなんです! 過去に大賢者様が、魔道具を使って魔法を付与して結界を作ってくれたのです」
ロックが興奮気味にパールに話している。
「見れば分かるからのう。じゃって作ったのワシっ」
「えっ? 今なんて?」
「なっそうじゃ。見たら分かるって言ったんじゃよ」
おいおいパールさんよ。まさかあの浮島も大賢者カスパール様が作ったとか言うんじゃないよな?
さっきそんな風に俺には聞こえたぞ。
パールをチラリと見ると明らかに少し様子がおかしい。
「所であの結界は、あんな風に消えたり現れたりしないと思うんじゃが?」
「そうなんです! どうしてそれを?」
「そりゃ作ったんっ……じゃから見たら分かるんじゃ。ワシは天才じゃから」
「猫の姿をされているので、見誤っていました。大変失礼いたしました。貴方様も高名な大賢者様なのですね」
「んん? 違うがまぁ……似たようなもんかの」
ロックに高名な大賢者様と言われ、満更でも無い様子のパール。おいおいパールよ? 話に色々とボロが出てるぞ。
俺が少しジト目でパールを見ていたら。ロックが俺達の前に頭を下げた。
「えっ!? 急にどうしたんだよ」
「助けて頂いた上に図々しいお願いは重々承知なのですが、聞いて頂けませんか?」
「願い?」
「はいっ! 高名なる大賢者様でないと叶えられない願いです」
「ほっほう……」
パールのしっぽが嬉しそうにゆらめいている。パールよさっきから感情がダダ漏れだぞ。高名な大賢者様がそんなんで良いのか?
「我ら浮島の結界ですが、かなり力が弱まっており……結界に何かが衝突すると、数十分程結界が消失しまうのです。時間が経つとまた結界が先程の様に再び現れるんですが……」
そんな簡単に結界がとけたら、せっかく隠蔽してたの意味ないんじゃ……。
「何かが衝突って……空を飛ぶ鳥でもか?」
「……そうなのです。その所為である国に浮島の存在が見つかり、攻め込まれまして、現在二つの浮島が奪われました。悲しいですが、今浮島では戦争が起きているのです」
「だからロックは空から落ちてきたのか」
「はい。もう自分は助からないと思っていました。それを助けるどころか……全回復して頂き本当にありがとうございます」
ロックは甲板の床に、頭を擦り付ける程に頭を下げた。
「ちょっ!? 礼はもう貰ったなら大丈夫だ。頭を上げてくれないか」
「大賢者様……」
「大賢者様じゃなくてティーゴだ。そう呼んでくれ」
「ティーゴ様……」
ロックが崇拝した目で俺を見る。困ったなそんな目で見ないでくれ。
パールは結界が弱っていると言われ、黙り込んでしまった。何やら難しい顔をして考え込んでいる。
「やはり……弱るなんておかしいのじゃ。おいロックとやら」
突然パールがロックの前に身を乗り出して来た。
「はっはい」
「お主ら鳥人族は、ちゃんと結界の魔石に魔力を送っておったか?」
「えっ……魔力ですか? そんな話は聞いた事が……」
「なっなんじゃと!? もしや魔力を一度も送っとらん?」
「はい……あのっその……私は浮島フロッティの現国王の息子なのですが……初めて聞きました」
「なっなっなっ……初代国王にワシがちゃんと言うたっ……はず……じゃが? えっワシ言うた? ありゃ? もしや……言い忘れ??」
「あっあのう……?」
パールが一人でブツブツ何か言い出した。ロックはどうしたらいいのか困惑してる。
きっとそれは、ろくな話じゃないよな?
「んんっ! ティーゴよワシは決めた。こ奴を助けてやる事にした! これは決定じゃ」
「ええー!」
「あっありがとうございます! 大賢者様」
いやっ助けてあげるのは良いんだけど……なんでそんな急にノリ気になったんだ?
「さぁ! 忙しくなるのじゃ。今から浮島フロッティに行く準備じゃー! むっ? いっそ船のまま飛んで行くのもありか……」
「えっパール? ちょっと待ってくれよ! 今なんて言った?」
船のまま飛んで行くって聞こえたぞ? そんな事出来るのか?
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