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本編 浮島編
ジャイコブ無双
しおりを挟む船の甲板に立ち、空の上から敵に奪われた浮島を見下ろすと、ゴーレムの様な人型の魔道兵器がうじゃうじゃと集まっているのが見える。
こんなにも集まってたのか。んん? 目視ではどれだけの数なのか全く分からないぞ。
神眼で見たら数とか分かるのかな?
ピコン!
【魔導兵士】
ランクB
中に人が乗って操縦出来る兵器。中の人が魔力を送り動かす事が可能。一旦契約すると、自ら解除しない限りその人以外は動かす事が出来ない。
総数二百五十二体
うわ! 神眼で分かっちゃったよ。何でも分かるんだな神眼って。本当に凄い!
ジャイ♪ジャイ♪ジャイ♪ジャイ♪ジャイ♪ジャイ♪ジャイ♪ジャイ♪
俺が神眼に驚いている間も、ジャイコブウルフ達がどんどん飛び降りていく。
空から飛び降りてくるジャイコブウルフ達に、浮島にいた侵略者達は、パニックになっているのが良く分かる。
その状態をパールは止めずに見ている。今回はどんな作戦を考えているんだ?
天才の考える事は分からないな。
「パール? 今回はどんな作戦なんだ?」
「んん? 簡単にやっつけるだけじゃつまらんじゃろう? じゃって奴らは弱いんじゃから直ぐに終わってしもうたらお仕置きにならんからのう」
パールはまたニヤリと悪巧みしている顔で笑う。猫の姿なのに表情が汲み取れるって、中々だぞ?
「お仕置き……確かにな」
「あ奴らはワシが作った浮島を汚した。それは許せんからのう」
なるほどな、確かに浮島はもともとカスパールであった時に、鳥人達の為に作ったものだもんな。
パールなりに色んな思いがあるんだろうな。
「それでな? あんなにも沢山のジャイコブ達をどうするつもりだ? もうすでに戦わずして終わりそうだけど?」
「ふふっもっと恐怖に陥れてやるんじゃ」
「どんな恐怖だよ」
「その名もジャイコブ無双じゃ!」
「ブッ! なんだよそれっ」
また面白い名前を……それはまんまじゃないか!
「さぁティーゴよ? あの魔導兵器を無効化するのじゃ」
パールが簡単に言ってきたが俺がするの? てっきりパールがするもんだと思っていた。
「ええ!? 俺にそんな事出来るかな?」
「これも魔法の練習じゃ。まぁぶっつけ本番ってやつじゃよ」
いやいやパール? ぶっつけ本番も何も俺そんな魔法習ってないよな? 教えて貰ったか?
「パール? 俺そんな魔法使えないけど?」
「んん? 魔力をあの魔導兵器に送るだけで良いんじゃよ。ティーゴの方が魔力が高いからそれだけで無効化出来る」
ならそう言ってくれよ。天才の良くない所だぞ。説明を省きたがる。
だが魔力を送るだけなら簡単だ。練習しなくても出来る。
「そうなのか! 分かったやってみるよ」
ジャイコブウルフ達に、どうにか応戦しようと動いている魔導兵器達に対して、俺は魔力を送った。
すると先程まで激しく動いていた魔導兵器が、固まったようにピタリと全く動かなくなった。
「おお! ティーゴ完璧じゃ。あれであの魔導兵器はガラクタになった」
パールが尻尾を揺らし褒めてくれる。
すると……何やら魔導兵器の上に乗っているジャイコブウルフが目に止まる。
あれはハクとロウか? 何やってるんだ?
ああっ! 魔導兵器を無理矢理こじ開け、中に乗っていた人を放り出した。
「えっ……ハク? ロウ? 何する気?」
するとハクとロウは魔導兵器に乗り込み……兵器を自在に動かしだした。
ちょっと待ってくれ! お前らそんな事まで出来るのかよ?
気付けば、ハクとロウの真似をして、他のジャイコブウルフ達も中の人を放り出して、次々に乗り込んで行く。
魔導兵器を乗っ取ったハクとロウは、陽気なジャイコブダンスを踊っている。
おいおい……これって戦いじゃないよな?
魔導兵器を乗っ取られ、怪しい踊りを見せられているのは、恐怖でしかないが。
「さてティーゴ? ワシらも下に降りるぞ」
俺達の乗船していた船が浮島に上陸した。
ほおり出された侵略者達は、戦意喪失しブルブルと震えている。
そんな中、魔導兵器に乗ったジャイコブ達の陽気なダンスの輪は、どんどん膨れ上がって行く。
ジャイ♪ジャイ♪ジャイコブ♪ジャイジャイジャイコブ♪
これって……俺達のする事あるのか? もう終わってないか?
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