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本編 浮島編
大賢者
しおりを挟む「そう謙遜するでない。ティーゴよ? お主は賢者と名乗ったところで、間違いでは無いからのう」
パールは少し顔を上げて面白そうに話すが、俺が賢者だって?
そもそも賢者って言うのは、攻撃魔法も回復魔法もどっちも使えてだな?……ん? あれっ? そう言えば俺、銀太達をテイムしたおかげで色んな魔法が使える様になって……!? それって世間的には賢者って言われているジョブに……!?
「んん?!」
「くくっ……ちょっとは自覚したかの? お主は詠唱するとは言え、AやSランク魔法を使えるようになっとるんじゃ。もうそれは賢者じゃろうて? のう大賢者ティーゴ」
「ちょっ? からかうなよっ」
「くくっ」
そんな俺達のやりとりを、鳥人達は平伏しながらも、少し恍惚とした表情で見ている。なんだそのウットリとした顔は!
それにだパールと話に夢中になっていたけど、鳥人達が俺達の前でずっと平伏したままだった。早くこの状況から普通にしてもらわないと!
「あのな? 確かに俺は賢者っぽい何かではあるんだけど、今からは普通にしてくれないか?」
なんかこの言い方だと言い訳っぽいが、こんな言葉しか俺の頭からは出てこないんだよな。もっと気の利いた事が言えたら良いんだが。学力がないからさ。
「ですが……大賢者様の御前で」
一人の鳥人が代表して前に出てくると、申し訳無さそうに俺を見る。
確かに俺は、結果的に賢者の力も得たみたいだけれど、そんな偉い人物じゃないんだ。
出来れば普通に接して貰いたい。どうしたらいい?
あっそうか! ジャイコブ達もいる事だし、こんな時はいつものあれだよな? 肉祭りで仲良くなるか!
「あのさ? 俺が良いって言ってるんだ。頼むから普通に接してくれないか?」
俺も鳥人達に向かって深々とお辞儀をした。その姿を見て焦ったのか、鳥人達が狼狽えだし、一斉に平伏すのをやめてくれた。
「あわっ大賢者様! 恐れ多いです! 分かりました。我らは普通にしますから! お願いします頭を上げて下さい」
「分かってくれたなら良いんだ」
そんなやりとりを見ていたパールが、少しため息まじりに話す。
「で……ティーゴよ? このバカ達をどうする気じゃ?」
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「パール……どうせお前は分かってるんだろ?」
「んん? 何が言いたいんじゃティーゴよ」
パールは尻尾をふわりと揺らしおとぼけ顔で俺を見る。はいはい何でもお見通しの訳だ。
「コイツらをとっとと魔導国家だかなんだかの国に送り返してだな? 悪事を働けないようにするって俺に言って欲しいんだろ?」
「くくっ……言って欲しいは余計じゃが及第点をやろう。そうじゃ! こ奴らの腐った国を正さんとのう」
そう言ってパールは猫の姿で顎をさわる。顎髭なんてないのに、その仕草はまるでそれだ。
分かったよパール様! こいつらの事とっとと終わらせて浮島で肉祭りの開催だ!
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