お人好し底辺テイマーがSSSランク聖獣たちともふもふ無双する

大福金

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本編 浮島編

大賢者カスパール様

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『ああっ主ぃ~! どうしたんだよっ』
『『カスパール様ー!』』

 声の聞こえる方を見ると。

 スバルと一号、三号が船から降ってきた。
 それも凄い勢いで飛び降りてきたぞ。弾丸の様な速さだ。

「わっぷっ! こりゃスバルっ顔に引っ付くでない!」

 スバルは勢い良くカスパール様の顔にしがみつくと、プルプルと震えている。……泣いてる? のか?

「ったく……」

 パールはやれやれといった表情をし、スバルをそのまま自分の頭上に乗せた。困っているようにも見えるが、優しく微笑んでいる。パールも嬉しいんだよな。ふふ。

「わっ! お前達までっ両手にしがみつかれたら、ワシ身動き取れんじゃろう」

『だってぇ……その姿のカスパール様は、久しぶりで、たまには変身してって言っても、ずっと猫の姿だったし……私嬉しくて』
『そうっすよ! 邪魔なら三号が離れたらいいんす!』
『なっ! やぁよっ一号が離れてよっ』

 人型姿の一号と三号が、カスパール様を取り合いしている。
 二人の美女が、大賢者様の腕に手を絡めて、文句を言い合っているその姿は、傍から見るとなんとも…………。
 あれだからな? 決して羨ましいとかじゃないからな。ゴホンッ。

「分かったんじゃ! 当分の間この姿で居てやるから、今はじゃ邪魔せんと折角来たんじゃ。お主らにも手伝って貰うぞ」

『本当に? 約束なんだから!』
『絶対っすよ? 後であっしと異空間のお散歩して欲しいっす』
『ちょっと! じゃあ私はカスパール様と一緒に料理したいっ』

 一号と三号が必死にオネダリしている。猫の姿の時は、そんな事言わないのに……姿が変わるだけで、こんなに態度が豹変するって、なんと言うか……まぁ見ていて和むけど。カスパール様も嬉しそうだしな。

『ぐすっ……おっ俺は釣りだ! 俺が一番だからなっ』

 スバルのやつ、カスパール様の頭で泣いてたのか、カッコイイ帽子がスバルの涙でグチョグチョだ。

「分かったんじゃ、ちぃと落ち着け。じゃがちゃんと役に立たんと約束はせんからな?」

『『『任せて』よ』っす』

 やっとカスパール様から一号達が離れた。そして俺を見る。わっ……なんだこれっいつものパールの時には感じ無い緊張感が。

「なんじゃティーゴ? 妙な顔してっ? くくっなんじゃ? この姿じゃと緊張するのか?」

 口角を上げ、ニマニマと俺を見て笑うカスパール様。くぅっその姿だとそんな顔されても、悪い気がしない。猫の姿ならポンポンと文句言って、会話出来るのにな。

「カッカスパール様っあの……」
「カスパール様って、くくっ。いつもみたいにパールと呼ばんのか?」
「だって……その姿はなんと言うか……カッコイイしさ。威厳に満ちてさ……そうだよ! 緊張してんの」

「ははっそれは光栄じゃの? じゃが緊張しても良いが、協力は頑張ってくれよ? ワシは今から古代魔法を使う。これにはかなりの魔力が必要になるからのう」

 古代魔法って、今の賢者達は使えない失われし伝説の魔法だよな。カスパール様は、どんな魔法を使うんだ?

「あのさっ? 俺はどうやって手伝ったら良いんだ?」
「ワシにティーゴの魔力を貸して欲しいんじゃよ」
「魔力を貸す?」

 俺が不思議そうな顔をしていると、パールが眉尻を下げ優しい表情をする。そして右手をスっと俺の前に差し出してきた。

「さぁワシの手を握ってくれ。そしてワシに魔力を送ってくれ」

「わっ分かった!」

 少し緊張しながらも、俺はパールの手握りしめ、必死に魔力を送った。

「おおお……こりゃ凄い量じゃっ。これがティーゴの魔力か。美しい魔力じゃのう。これならティーゴだけで十分じゃ」

 パールがそう言うと、スバル達が騒ぎだす。
 手伝わないと、ご褒美が無くなるとでも思ったんだろう。
 カスパール様が「約束は守ってやるから大人しくせい」って言ったらすぐ静かになったけど。現金なヤツらだよ。

「では……いくぞ」

《パーフェクトリザレクション》

 パールが詠唱するなんて珍しい。いつも殆ど無詠唱だからな。それにしても、パーフェクトリザレクションってなんだ? だが考える暇もなく次の瞬間、空が金色に光る。

「何だこれは……?!」

 空から金色に輝く、細やかな光の粒子がキラキラと降り注ぐ。光が反射して、虹の橋が何本もかかっている。なんて幻想的な景色なんだろう。

 この光が付着すると、全てがもと通りの姿に戻って行く。壊れた建物も、人も、全てが先程の攻撃など無かったかのように……戻って行く。

 うそだろ! こんな魔法があるのかよ。

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