275 / 314
本編 浮島編
大賢者カスパール様
しおりを挟む『ああっ主ぃ~! どうしたんだよっ』
『『カスパール様ー!』』
声の聞こえる方を見ると。
スバルと一号、三号が船から降ってきた。
それも凄い勢いで飛び降りてきたぞ。弾丸の様な速さだ。
「わっぷっ! こりゃスバルっ顔に引っ付くでない!」
スバルは勢い良くカスパール様の顔にしがみつくと、プルプルと震えている。……泣いてる? のか?
「ったく……」
パールはやれやれといった表情をし、スバルをそのまま自分の頭上に乗せた。困っているようにも見えるが、優しく微笑んでいる。パールも嬉しいんだよな。ふふ。
「わっ! お前達までっ両手にしがみつかれたら、ワシ身動き取れんじゃろう」
『だってぇ……その姿のカスパール様は、久しぶりで、たまには変身してって言っても、ずっと猫の姿だったし……私嬉しくて』
『そうっすよ! 邪魔なら三号が離れたらいいんす!』
『なっ! やぁよっ一号が離れてよっ』
人型姿の一号と三号が、カスパール様を取り合いしている。
二人の美女が、大賢者様の腕に手を絡めて、文句を言い合っているその姿は、傍から見るとなんとも…………。
あれだからな? 決して羨ましいとかじゃないからな。ゴホンッ。
「分かったんじゃ! 当分の間この姿で居てやるから、今はじゃ邪魔せんと折角来たんじゃ。お主らにも手伝って貰うぞ」
『本当に? 約束なんだから!』
『絶対っすよ? 後であっしと異空間のお散歩して欲しいっす』
『ちょっと! じゃあ私はカスパール様と一緒に料理したいっ』
一号と三号が必死にオネダリしている。猫の姿の時は、そんな事言わないのに……姿が変わるだけで、こんなに態度が豹変するって、なんと言うか……まぁ見ていて和むけど。カスパール様も嬉しそうだしな。
『ぐすっ……おっ俺は釣りだ! 俺が一番だからなっ』
スバルのやつ、カスパール様の頭で泣いてたのか、カッコイイ帽子がスバルの涙でグチョグチョだ。
「分かったんじゃ、ちぃと落ち着け。じゃがちゃんと役に立たんと約束はせんからな?」
『『『任せて』よ』っす』
やっとカスパール様から一号達が離れた。そして俺を見る。わっ……なんだこれっいつものパールの時には感じ無い緊張感が。
「なんじゃティーゴ? 妙な顔してっ? くくっなんじゃ? この姿じゃと緊張するのか?」
口角を上げ、ニマニマと俺を見て笑うカスパール様。くぅっその姿だとそんな顔されても、悪い気がしない。猫の姿ならポンポンと文句言って、会話出来るのにな。
「カッカスパール様っあの……」
「カスパール様って、くくっ。いつもみたいにパールと呼ばんのか?」
「だって……その姿はなんと言うか……カッコイイしさ。威厳に満ちてさ……そうだよ! 緊張してんの」
「ははっそれは光栄じゃの? じゃが緊張しても良いが、協力は頑張ってくれよ? ワシは今から古代魔法を使う。これにはかなりの魔力が必要になるからのう」
古代魔法って、今の賢者達は使えない失われし伝説の魔法だよな。カスパール様は、どんな魔法を使うんだ?
「あのさっ? 俺はどうやって手伝ったら良いんだ?」
「ワシにティーゴの魔力を貸して欲しいんじゃよ」
「魔力を貸す?」
俺が不思議そうな顔をしていると、パールが眉尻を下げ優しい表情をする。そして右手をスっと俺の前に差し出してきた。
「さぁワシの手を握ってくれ。そしてワシに魔力を送ってくれ」
「わっ分かった!」
少し緊張しながらも、俺はパールの手握りしめ、必死に魔力を送った。
「おおお……こりゃ凄い量じゃっ。これがティーゴの魔力か。美しい魔力じゃのう。これならティーゴだけで十分じゃ」
パールがそう言うと、スバル達が騒ぎだす。
手伝わないと、ご褒美が無くなるとでも思ったんだろう。
カスパール様が「約束は守ってやるから大人しくせい」って言ったらすぐ静かになったけど。現金なヤツらだよ。
「では……いくぞ」
《パーフェクトリザレクション》
パールが詠唱するなんて珍しい。いつも殆ど無詠唱だからな。それにしても、パーフェクトリザレクションってなんだ? だが考える暇もなく次の瞬間、空が金色に光る。
「何だこれは……?!」
空から金色に輝く、細やかな光の粒子がキラキラと降り注ぐ。光が反射して、虹の橋が何本もかかっている。なんて幻想的な景色なんだろう。
この光が付着すると、全てがもと通りの姿に戻って行く。壊れた建物も、人も、全てが先程の攻撃など無かったかのように……戻って行く。
うそだろ! こんな魔法があるのかよ。
247
あなたにおすすめの小説
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。
私に姉など居ませんが?
山葵
恋愛
「ごめんよ、クリス。僕は君よりお姉さんの方が好きになってしまったんだ。だから婚約を解消して欲しい」
「婚約破棄という事で宜しいですか?では、構いませんよ」
「ありがとう」
私は婚約者スティーブと結婚破棄した。
書類にサインをし、慰謝料も請求した。
「ところでスティーブ様、私には姉はおりませんが、一体誰と婚約をするのですか?」
婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました
kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」
王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
卒業パーティでようやく分かった? 残念、もう手遅れです。
柊
ファンタジー
貴族の伝統が根づく由緒正しい学園、ヴァルクレスト学院。
そんな中、初の平民かつ特待生の身分で入学したフィナは卒業パーティの片隅で静かにグラスを傾けていた。
すると隣国クロニア帝国の王太子ノアディス・アウレストが会場へとやってきて……。
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。