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本編 浮島編
悩むパール
しおりを挟むふむ……宰相オルクスと言ったか。彼奴からは微かにじゃが、リィモが邪神の分離体右手のひらに取り憑かれておった時と、同じ気配がした。
これは……むぅこんな事ならティーゴも一緒連れて来たら良かった。彼奴ならば邪神の靄が見えるからの。
まぁ今更悔やんでも仕方ない。
『カスパール様? どうしたのそんなに難しい顔して』
三号がカスパールの顔を覗き混んで見つめている。急に険しい顔をし押し黙ってしまったので、気になったんだろう。
「んん……ちと色々気になる事が多くてのう……考えておったんじゃ」
そう言うもカスパールは、自慢の顎髭を触りまた黙ってしまった。
そもそも邪神を封印した場所は、まだちゃんと結界が張られているんじゃろうか? 邪神の事はワシが産まれる前の話じゃから、封印された場所に行った事はない。と言うか、知らなかったから行く事が不可能じゃったが正解か。
じゃが今ワシは魔族の王として転生し、魔族の情報が色々と入って来た。邪神の封印された場所は魔界と言われる場所の入口。それはすなわち魔族達が住んで居る場所と人族が住んでいる場所のちょうど狭間。
「じゃが……その様な場所に封印なんてなかったような、ふむ」
これは四天王に邪神の封印場所を案内させるか。あ奴らは先代の魔王の時から生きておるからのう。知っとるじゃろ。
「よし、ワシちょっと行ってくるから、この愚王の後始末は任せたのじゃ。直ぐに帰って来るでのう」
『えっ!? 主、行くなら俺も一緒に行くぜっ』
スバルは急いでカスパールの頭に飛び乗った。次の瞬間、転移魔法で何処かに行ってしまった。
『ちょっ!? 私も一緒にっ』
『あっしもっ』
『『あああああっ!?』』
一号と三号も一緒に行こうとカスパールの所に駆け寄るが、既の所で間に合わず、目の前で姿を消してしまった。
スバルだけカスパールと一緒に行った事が悔しい一号と三号。
『はぁぁ。なんでこんな愚王の相手を私がするの?』
三号はため息混じりに国王に魔法を放つ。次の瞬間、国王の姿は消し炭となる。
『あっしまった。殺しちゃ行けないんだった。ティーゴに怒られちゃう』
三号は慌ててリザレクションを使って国王を蘇らせる。
『まぁ。苛立ちをぶつけるには丁度いいっすね』
一号はニヤリと笑うと雷を落とす。すかさず三号がリザレクションを使って蘇らせる。もはや王は自分に何が起こっているのか理解出来ていない。だが、恐ろしい恐怖だけが脳裏に刻み込まれて行く。
「あっあわわわっ」
二人の所業を近くで見ていたワッキヤクは下半身から温かいものを垂れ流し、白目を向いて失神してしまった。
『ねぇねぇ一号?』
『んんっ何すか?』
『この後さぁどうするの? この愚王を縛り上げて、ここに放置?』
『放置っすかぁ。でも後でカスパール様が愚王に用事があるかも知れないっすよ?』
『あっそうかぁ。じゃあ取り敢えず、この愚王と横で気絶してる男を船に連れて行こうか』
『そっすね』
一号は国王とワッキヤクを魔法のロープ縛り上げると、宙にふわりと浮かせ、三号と話を続ける。
『ティーゴ戻って来てるかな? パイが食べたくなっちゃった』
『それは良いっすねぇ。あっしはリコリパイが食べたいっすね』
『ふふっじゃ帰ろっか』
悪魔の所業とも言える、恐ろしいお仕置きをした一号達だが、当の本人達は虫を潰したくらいの様子。
ティーゴの特製パイを腹いっぱい食べる事を想像し、一号達は船へと飛んで行った。
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